中学卒業 2
そこにいたのは、美少女だった。
フェンスを背に立つ彼女は、両手を後ろに組み俺を待っていた。
栗色のロングヘアーが春の風に靡いて、幻想的で思わず見とれてしまう。
俺は彼女を知らない。
知らない? いや、どこかで…………
ただ、俺の疑問は彼女が発した言葉で解消された。
「……急に呼び出してしまいごめんなさい」
俯き加減に謝る彼女を俺は知っている。しかも、最近まで一緒だった。
「………倉林、さん…?」
コクンと小さく頷く彼女は、外見は違えどその面影は確かに倉林さんだった。
彼女は三つ編みを解き、眼鏡を外していた。
たったそれだけなのに、こうも変わってしまうのか。
「……何故、俺を?」
「あなたをここに呼んだのは、どうしてもあなたに伝えたいことがあって……」
「……え?」
俯いていた顔をちょっと上げて。
「私…あなたのことが好きです」
と告げた。
「………」
俺は言葉を失った。
「……でも」
「え…?」
「まだ、私はあなたに相応しくない……」
「……だから……」
「私は私を捨てます」
今度は顔を上げて、俺に向かって叫んだ。
「私生まれ変わる! あなたに相応しい人になって、そしてまたあなたに告白します!」
春の風が俺らを包んだ。
あの時と一緒……やさしい風。
「……それまで……どうか、待っていてください」
彼女の顔は、覚悟を決めた、清々しい表情だった。
プロローグ ――完――