中学卒業 1
奇跡の合格発表から何日か経ち、今日、ひよっこどもが旅立つ卒業式を迎える。
ここ何日かは記憶が曖昧だ。
それは俺が朝霞合格を決めて、想像を絶する歓喜に巻き込まれたからだ。
以下、ダイジェスト版をお送りする。
我が三姉妹の狂喜乱舞の世界だ。
――――愛姉ちゃん
『よくやったぁ我が弟よ! わっはははは~‼』
『ね、姉ちゃん! そんな叫ばないで、近所に迷惑だから! それに姉ちゃんのキャラ崩壊してるよ!?』
『めでたいわぁ!お赤飯炊かなきゃ!』
『何故!?』
『できたわぁ!早速ご近所にご報告ね~』
『やめて! 色々誤解されるからそれだけはやめて!』
――――栞姉ちゃん
『あきらぁ~ごうがくおめでどぉ~! ひっく…ひっく…お姉ちゃんすんごく心配だったんだからぁ! うぇえ~~ん!』
『栞姉ちゃん!? 何で泣いてるの!? 姉ちゃんもキャラ崩壊してるよ!』
『びぇええん! あぎらぁぁぁ!』
『うわっ!ちょ!抱きつかないで! ぐわ! 胸、当たってる!」
――――唯
『お兄ちゃんおめでとう…って! 何で栞お姉ちゃんに抱きついてるの!?ふしだらだよ!』
『ち、違っ! どう見ても抱きつかれてるのは俺だから!』
『むぅ~~‼ 唯だって! 唯だってぇ~~!』
『ばっ!何でお前まで抱きつくの!? や、ちょ、背中に柔らかいの当たってる! やめて! これ以上はやめて!?』
『…あらあら、凄い楽しそうね。私も負けてられないわ!』
『えぇ!? 愛姉ちゃんまで何言ってんの! ていうか何故脱ぐ!? や、や、や、ダメだって! いゃああ! 俺の頭に跨がらないで~~‼』
以降、まさに酒池肉林状態。カオス。良い子には見せられないぜ。
そんなこんなで、完全に疲れきって卒業式なんてのは全く頭になかったのだ。
ゴメンな皆、泣いてるとこ悪いが、全然そんな気分じゃないんだ……
そう悟りを開いていたとき、最後に歌を唱って卒業式は終わった。
なんとも感動に欠けてしまった卒業式だった。
――――と落ちがついて終わるところだが、今回はまだ終われない。
俺にはまだ行かなくてはいけない場所がある。
それは、俺の下駄箱に入れられていた差出人不明の手紙。そこに綺麗な字で『卒業式後、屋上で待っています』と書かれていたからだ。
誰だかは分からない。あれか、告白ってやつか? 俺みたいな奴を好きになってくれる人もいるんだな。ちょっと、いや、かなり嬉しいが。
誰もいない廊下を歩き、屋上へ上がる階段を一歩一歩歩いていく。
そして、屋上の扉を開いた。