表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼と彼女たち  作者:
プロローグ
5/37

入試 4

 そしてこの時がやってきた。


『合格発表会場』と書かれたプレートの前で佇む俺。さっさと行けばいいものの土壇場の意気地のなさ。


 俺の手には試験番号『115』のカード。手は汗で湿っている。


「…柏くん?」


 その時校門から倉林さんがやって来る。どこか緊張気味の表情をしている。


「ああ、おはよう倉林さん。いよいよこの日が来たね」


「…ええ」


薄く笑う倉林さん。両手で通学用の鞄をぎゅっと握り締めてそわそわと不安そうだ。


「…柏くんは、自信ある…?」


「俺? うーん、どうだろ…。こればっかりは、なぁ」


「そっか…」


会話が途切れて、変な間ができる。


「…取り敢えず、結果見に行くか」


「…うん」




倉林さんを連れて合格発表が貼り出されている掲示板がある中庭にやって来た。

まだそこは凄い人だかりだった。結果を見て友達同士で喜んでいる者、泣いている者、人知れず去っていく者様々だ。


少しずつ人が捌けてきて、ようやく数字が見える位置まで来た。


「倉林さんは何番?」


「私? 私は139番」


同じか行の苗字だったので、数字も割と近かった。


「139ね。なら、こっちにあるかな?」


左の方の掲示板を見てみる。そこは、100番台の数字が縦に並んでいた。

上から順に追ってみる。

101 105 106………





111 113 114………





そして…………






『115』




――――あった


「……マジか…」


やべぇ、信じられない。…嘘じゃないよな?


何度もカードと番号を見合わせる。真実だ。間違っちゃいない。


よかった。よかった……

これで姉ちゃん達や先生に顔向けできる。



そういや、倉林さんはどうだったんだろう?

俺はそのまま目線を下げてみる。


『139』


あった。彼女が云っていた数字は確かにそこにあった。

彼女の学力なら当たり前かもしれないが、それでもきっと喜んでいるに違いない。


だが、俺が横に顔を向けると、彼女の表情は俺が予想していたものと全く違うものだった。



「倉林…さん?」


彼女は泣いていた。両目から溢れんばかりの涙を浮かべて。


「…あ、ご、ごめんなさい!」


「謝らなくても大丈夫だよ。…ちょっと、あっち行こっか…」







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ