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ラストバトル スキル




 流れる涙が床にポタポタと落ちていく。


 「小太、カイ……」


 どうせもうすぐ自分もアルフェルドに殺される。ライエルがそう思い、全てを諦めた時だった。


 「呼んだ?」


 ライエルのすぐ隣から声がした。あまりにも突然のことでライエルは悲鳴を上げそうになる。それを慌てて止める小太。


 「シー! シー! 落ち着け、ごめんビックリさせた」


 アルフェルドはまだ燃えてる壁の方を見ている。小太がここに居るのにまだ気づいていない。気付かれないよう小声で話す。


 「な、何故、私はてっきり死んだものと、しかもいつの間にここまで? 壁からここまでかなりの距離があるのだぞ」


 「ああ、これはな……」







 ブレスを吐き出されたあの時、スローになっていたこともあり自力で逃げようと思えば逃げられた。埋まった壁から抜け出そう。そう思ったとき頭の中に低く渋い声が響いた。


 『移動したい場所に目を向けよ』


 (え? 誰?)


 『空中は無理だ。双の目が合わされる物ならばどこでもよい』


 (合わさる場所……)


 小太は遠くから必死に雷撃を放っているライエルの隣の地面に目を向けた。


 『その場に自分が着地する姿を想像せよ』


 ゆっくりと向かってくる炎が目前まで迫る。


 『そのまま心でその技を叫べ』


 


 焦点縮地!




 次の瞬間、見ていた地面がズームアップしたと思ったら、その場に立っていた。


 『スキルヲ覚エマシター』


 なんの予備動作もしていない。それなのに壁からこの場所、下手すりゃ1キロ近くある距離を一瞬で移動していた。


 『目が良ければ良いほど遠くまで移動できる。技は託した。励むがいい』


 (焦点縮地ってことは、やっぱりオニオニだったのか)


 『……』


 (オニオニ?)


 『……』


 (オニオニ~♪)


 くそ、だんまりか?


 (オニ~ちゃん♪)


 『やめよ』


 かなりキレた感情が込められた声が返ってきた。


 (あ、ハイ、すみません。あと、スキルありがとうございました)






 「そういう事だったのか」


 「そう、つまりアイツの高速移動もこれだったみたいだ」


 「遠くから見ていても初動が見えなんだ、あの巨体であの動きは反則じゃ。いつ私の眼前に現れるかと思ってヒヤヒヤしておったの」


 「最後に顔面蹴られたのも、アイツ俺の顔を着地場所として見て発動したってことだ、避けられないわけだ」


 そう思ったら腹立ってきた。人の顔を足蹴にしやがって。


 



 アルフェルドは俺の死体でも確認しに行っているのか、まだ炎で燃える壁へと向かている。


 「にしてもアイツの結界が固くてな。ライエル、アイツが引きずってる鎖、なんだっけ、スレイプ「グレイプニルじゃ」そう、そのグレイプニルは操れないのか?」


 少し悔しそうな顔をする。


 「私も操れないか意識を向けはしたのだがの、何の反応もせなんだ。武器も主人を選ぶという。どうやら私では無理そうだの」


 「そうか、んじゃ引き続きヤバくなったら牽制ヨロシク!」


 とりあえずさっき思いついた作戦を実行しようと集中する。焦点縮地を覚えられたことで更に効果は期待できるはずだ。


 「小太よ、明らかにレベルの差が開きすぎておる。その、怖くはないのかの?」


 近くに居るせいかライエルの感情が流れてくる。


 不安、恐怖、絶望、心配、そして信頼。


 やはりしん属性とは心に関する力なのだろう。ライエルのマイナス的な感情の中に俺へと向けられた信頼という感情が痛いほどに伝わってくる。

 前の世界で他人からここまで信頼されたことがあっただろうか。いや、無い。図体と腕っぷしだけでケンカの際、殿(しんがり)として信用されたぐらいだろう。しかも勝っても負けてもどっちでもいい的な。だからだろうか、ここまで信頼されていることが嬉しく思う。本当に必要と思われるのが幸せに思う。その思いが俺に力をくれる。

 だから安心させるように言ってやった。


 「大丈夫だ。絶対出してやる。俺に任せとけ!」


 作戦を実行する。


 銀郭の魔力全てを右拳に集中。すかさず魔力を回復し、再び銀郭形成。次にその全ての魔力を左拳に集中。それを繰り返し、右足、左足にも魔力を集中した。

 これで完成。銀郭な上に両手、両足は眩いほど銀色に輝いている。


 「し、小太よ、魔力はもつのか? 水を飲んではいないようだが」


 ライエルの疑問は最もだろう。何せ水を飲むという動作をせずに魔力が回復しているからだ。


 「大丈夫、もう水は胃の中にあるよ」


 神竜の涙は一滴で十分効果を発揮すると知った。ならば一口分をオブラートのようにオーラで包んで胃の中に納めておく。

 そうすればボトルを出して飲むというタイムロスを無くすことができるのだ。魔力が枯渇、(あるい)はケガをしたとしても水を包んでいたオーラに少し穴を開けるだけで一滴分の水が飛び出し全回復する。これがさっき必死で思いついた作戦だ。


 (オーラを操る修行積んでてよかったぜ)


 まさに神竜の涙様様だ。卑怯だとは思わない。ただでさえレベルに差がある敵が相手なのだ。それにゲームのラスボス戦じゃ貯めに貯めた貴重な回復アイテムを一気に使うのが普通だろう。


 (普通だよな、俺だけか?)


 急激な魔力の上昇を感じ取ったのかアルフェルドが此方を振り向く。アイツが焦点縮地でここに来る前にこちらから仕掛ける事にした。


 「んじゃチョット行ってくるわー」


 ライエルを安心させるように敢えて軽く言う。


 小太はアルフェルドの足元の地面に目の焦点を合わせる。


 (焦点縮地)


 スキルが発動され、一瞬でアルフェルドの足もとに着地する。頭上を見上げればまだライエルの方を見ているようで小太には気づいていない。


 (くらえ!)


 両足に集めたオーラを踏み込む力に全て注ぎジャンプ。今までに無いほどの衝撃音と振動が広場中に響き渡る。


 そして一瞬に迫るアルフェルドの顎下に拳を叩き込んだ。


 「チェストーーー!」


 ゴギィン!


 「ぐふぅう!?」



 結界を容易く突き破り、拳が初めてアルフェルドに届くが、鉄骨を直接殴ったような感触に拳、手首、肩が悲鳴を上げる。


 「痛ってぇ!」


 その分アルフェルドにもかなりのダメージが入ったようで顔をこれまで無いほどに後ろへとのけ反らせた。

 そしてがら空きになるボディにすかさず左拳のシルバーナックルを叩き込む。


 「セィッ!」


 再び結界を貫き腹へと拳が突き刺さる。しかしさすがは竜の鱗か。結界以上に固いのだろう、銀の光は貫通することはなかった。


 「ぐぶぅあああ!」


 アルフェルドの口から夥しいほど血が吐き出された。どうやら内臓を傷つけるだけのダメージは入ったようだ。


 血が降ってきたのでアルフェルドの背後の地面に目を向け焦点縮地。うむ、実に楽だ。


 苦しむアルフェルドを視界に入れつつ両手、両足に再び力を集中、そして回復。胃の中の水はまだ9割以上ある。


 (この勝負、勝てる!)


 小太はそう確信した。





ひぃぃ!年内に小太を外に出すと宣言した〆切がががが!

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