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ラストバトル

ブックマークしてくれた方々、読んでくれた方々。誠に、まことにありがとうございます!

年末で正直忙しいですが、頑張って年内には小太を出すよう頑張ります。




 力任せに扉を殴り開けた。赤黒く禍々しい両扉は真ん中からひしゃげ、蝶番(ちょうつがい)の部分がはじけて奥の通路へと飛んでいく。

 最後の戦いだ。お前を倒してここから出てやる。そんな気合と敵への威圧を込めてわざとこんな演出的な開け方をしてみた。

 しかし残念ながら敵の姿は無く、まだまだ長い通路が先まで続いているようだ。


 (なんだ、まだ続いてたのか。普通に開けてりゃよかった)


 少し拍子抜けしたその瞬間、扉で遮られていた分の威圧感が直接二人の体を襲った。まるで津波をその身に受けてしまったかのような錯覚におちいる。


 「うおおぅ! ハッハー! すげぇな!」


 「ぐぬぅ! なんという圧迫感か、息がしづらいの」


 小太は鬼以上の威圧感を浴びながらも口角を上げ、これからの戦いにむしろ気合が入る。しかしライエルは格の違いを感じたのか、尾っぽが又の間に入り込んでしまった。


 (これは早まったかの)


 そんなライエルの背を小太が勇気づけるように撫でる。


 「ライエルは遠くから自分の身を守ることと回避に専念してくれ、そんで余裕ができたら紫電をチクチク飛ばして牽制してくれたら助かる」


 「そうだの、そんなことぐらいしかできぬかもしれぬ」


 「そんなことじゃない、少しでもライエルの方に敵の気が反れるだけで十分な隙ができる。一人じゃなかなか作れない隙だ。超助かるよ」


 小太の(しん)言がライエルの(しん)にするりと(しん)透していく。


 (まことこの男は優しいの。特に考えもせず喋っているのやもしれぬが、その気遣いがここに居ていいんだと思わせてくれる)


 二人は改めて気合を入れ直し、通路を進んでいった。






 進めば進むほど威圧感が増していく。正直進みたくない。元の世界に居た頃の、喧嘩の次の日に学年主任の先生に呼び出されて職員室に向かう時の心境に似ていた。


 (まぁ、あの時は命まではとられないだろうってことで開き直ったんだがな)


 今回はそうはいかないだろう、なにせ命のやり取りしかないのだから。そんな事を考えていたらとうとう通路の終わりが見えた。二人はそのまま広場へと入り息を飲んだ。


 薄暗く光る様々な魔方陣だけが暗闇に浮かんでいる。それは右へ左へ前方の地面へそして天井へずっと続いていた。しかしその薄暗い光は遠くに行けばいくほど見えなくなる。おかげでこの広場の入り口からでは向こう側が見えなかった。


 「かなり広くない?」


 「広そうだの」


 奥行きが分からない以上どれぐらいの広さか分からないが、明らかにドーム球場など目じゃないだろう。広場内に入ったにもかかわらず、ライエルが言っていた邪竜アルフェルドなるものの姿は見えない。もっと奥に居るのだろうか。

 二人でしばらくの間薄暗い広場を歩いていく。歩きながら幻想的に広がる魔方陣に見とれていたら突然腹に響く重低音の声が発せられた。


 「ようやく来たか、待ちわびたぞ」


 その声は遠くから聞こえたハズなのに、まるで耳元で囁かれたように静かに聞こえた。

周りを眺めながら歩いていたせいか。目の前数百メートルのあたりに淡く光る巨大なシルエットに気付かなかった。そこから声が再び発せられた。


 「何百年待ったことだろうか、ようやく、ようやくここまで辿り着ける者が来た」


 そのシルエットが身じろぎした。すると広場中にジャラジャラと鎖がこする音が響き渡る。それを合図に今まで薄暗かった魔方陣が眩いほどに光り広場全体を照らした。


 暗闇で隠されていた景色があらわになる。そこはドーム球場が何十個入るんだろうというほどの広さ。天井もあまりの高さにどれだけあるのかも分からない。

 そして広場中に無数に張られた鎖が壁まで延びていた。四方八方に伸びている鎖の中心。そこにそいつは居た。


 「我の名はアルフェルド。よくぞここまで辿り着いた、(にえ)よ」


 邪竜アルフェルド。

 かつてこの国の王が倒しきれずにここに封印した竜。その体は漆黒。しかし光が鱗に反射する部分は紫色の光を放ち、艶めかしく美しい輝きを放った。

 体長は軽く見積もって50メートルはあるだろう。トカゲを思わせるような体に広げれば数百メートルにはなるだろう巨大な2対4翼のつばさ。

 まさに現実世界では想像上の生き物として描かれていた姿が目の前に立って居た。


 「心が折れそうじゃ……」


 ライエルがか細い声でそう呟くのが聞こえてきたが俺はそれどころじゃない。


 「か……か、か」


 「どうした人間、あまりの恐怖に声も「カッコイイ……」……は?」


 「え?」


 思わず声に出てしまった。だって竜だぞ、ドラゴンだぞ! 俺の世界じゃ存在しない生き物だ。だからこそ描かれる姿は力強く、格好良く、あらゆるゲームの中に登場する。特にシリーズ物のRPGに出てくるバハ○ートと言われる竜が俺は大好きだった。そんな存在が今実際に目の前に居る。

 最後の戦いとか、命懸けとか、外に出るぞという思いを、この時の俺は完全に忘れて感動していた。


 「カッコイイなおまえ!」


 「……」


 「帰ってこい小太……」


 しばらく黙って俺を見ていたアルフェルドは(おもむろ)に口をカパッと開けた。喉の奥に黒い炎のようなものが見える。


 「ブレスじゃ! 避けよ!」


 ライエルの声がした瞬間、その炎が吐き出された。


 「うおおおお!」


 かなりのスピードと熱量を感じる。それを紙一重で避けきった。吐き出された黒い炎は俺が立っていた場所からずっと後ろの地面までの広範囲を全て削り取った。ブレスが触れた部分は溶解し、ドロドロになった溶岩が熱を発している。


 「やべぇ、気化するとこだった」


 抉られた地面を見ているとライエルが俺の隣に紫電となって着地してきた。


 「バカ者! ふざけて勝てる相手ではないのだぞ!」


 「ご、ごめん。俺の世界じゃ存在しない架空の生物そのままだったから思わず」


 怒られていたらアルフェルドが笑い出す。


 「フッハハハ、変わった人族かと思いきや、どうやら貴様は別の世界より召喚された者のようだな。その身に宿る無数の魂は、今まで倒してきた我が(しもべ)どもだろう?」


 どうやらこいつは人間である俺がライエルを召喚で呼び出し、ここに来たものと思っていたらしい。しかし魔物を倒し、その魂を取得できる者は異世界より召喚された者しかいない。どうやったのかは知らないが俺の身にその魂が宿っているのを見て、俺を異世界人と判断したようだ。


 「我を見て褒めるとは中々見上げたものよ。貴様は贄となった後、我の右腕にしてやってもよいぞ。そして貴様はフェンリスヴォルフだな、この忌々しい鎖を王に貸し与えた者の子孫か。貴様は魂がボロボロになるまでこき使ってから最後は我の手で握りつぶしてくれる」


 憎しみのこもった目がライエルを射抜く。睨まれたライエルは体が固まり、息ができなくなってしまったようだ。

 そんなライエルを庇うように俺は進み出て、アルフェルドの顔へ向けて拳を突き出した。


 「フン!」


 俺の体ほどもある巨大な白いオーラの塊が顔に轟音を響かせて着弾した。


 「むぅ!?」


 「悪いけど俺らは贄になるつもりはねーよ」


 さっきのブレスのお返しだ。銀環状態では無いとはいえ今出せる本気の一撃だ。少しは効いただろう。


 「フハハ、届いておらんぞ」


 「え!?」


 着弾してゆらゆらと漂っていたオーラが消える。そこには無傷の顔があった。よく見ると顔の少し手前に薄らと結界らしき壁があった。どうやらそれで防がれたようだ。


 「マジかよ、凹むわ」


 「その程度で我を屠るつもりか?」

 

 「はっ! まだ本気出してねぇし! てめぇこそ鎖で体中繋がれて不自由そうじゃねぇか。それで満足に俺と戦えるのかよ」


 鎖はアルフェルドのいたる所に繋がれ、広場の地面を四方八方に伸びている。それが壁に到達し、天井へと伸びていき、一か所へと集まっていた。

 そこには、ライエルが言っていたこの国の王である竜が宙に浮いて眠っていた。その姿はアルフェルドよりも何割かは小さく、青白い光を放っていた。

 彼の力とフェンリスヴォルフから借り受けたグレイプニルでアルフェルドを今まで封印していたのだ。


 「確かにそうだ、このままでは満足に戦えん。しかし案ずるな。それもすぐに解決するのだからな!」


 別に案じてねえよと思ったら、アルフェルドが左手を俺に向けて広げてきた。その5本あるうちの中指には巨大な魔石の嵌められた指輪がされていた。


 「回帰せよ!」


 アルフェルドがそう叫ぶと指輪が光り輝く。すると俺の体から無数の光の粒が尾を引いてアルフェルドの魔石へと吸い込まれていった。


 「な、なんだよこれ?」


 何が起きているのか分からない。別に力が抜けていくとかそういうのは感じない。でもすごく嫌な予感がする。

 その光の粒は俺の体だけじゃない。俺たちが通ってきた通路からも次々と飛んできては魔石へと吸い込まれていった。


 「フハ!? ハハハ、アーハハハハ! 素晴らしい、素晴らしいぞ! 人間、相当頑張ってここまで辿り着いたと見える」


 アルフェルドがちょっとヤバいぐらいに笑い出した。


 「何だよ! 何が言いたい!」


 「貴様は今まで私が顕現していた魔物どもと戦い、経験を重ね、レベルを上げてきた。そうだろう?」


 「そ、そうだよ」


 「つまり貴様と戦った魔物どももそれだけの経験値を溜め込んでいるというわけだ。そしてその魂は我がギフトの能力、『ネクロマンサー』で回帰させ、自分の物とすることができるのだ!」


 「な、なんだってー! ……つまりどういう事?」


 「ば、バカ者! つまりオヌシのLv200越え分の経験がアルフェルドにも加算されるという事じゃ!」


 俺の体から出ていく光の粒は今まで取得した魔物の魂であり、通路から飛んでくる粒も俺と戦うことで経験値を貯めた魔物達の魂らしい。

 その全ての魂がアルフェルドの身に還元されているということなのだ。


 「はぁあ!? マジで! ヤバくね!」


 「ヤバイのじゃ!」


 ヤバイ! これはマジでヤバイ! こいつが元々レベルがどれぐらいだったのかも分からないのに、更に俺が今まで経験した分が加算されるとは。


 (いったん退却するか?)


 情けないがそんな言葉が頭をよぎった。


 「逃げようと思っても無駄だぞ人間」


 まるで思考を読んでいたかのように言うアルフェルド。すると後ろの方でズズゥンと何やら壁が崩れる音がした。そこは俺たちが通ってきた道。そこは完全に塞がれ、ご丁寧に結界まで張られていた。


 「素晴らしい、素晴らしいぞ、何体(・・)かは回帰出来なかったのが不思議だが十分だ。これならば!」


 アルフェルドが4枚の翼をバサッと広げる。それに繋がれた鎖がジャラジャラと鳴りだす。


 「GRUAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!?]


 何が始まるんだ? と身構えた瞬間広場中に響き渡る大音量で吼えだした。


 「ぐぅあああああウルセエェエエエエ!」


 「…………!!?(パタリ)」


 竜の咆哮。その声を浴びたものは魂まで恐怖に塗り替えられる。弱いものはこれだけで命を手放すほどだ。それを小太はうるさいと感じ、気を失うだけでとどめたライエルはまだ強者なのだろう。


 アルフェルドは咆哮と同時に体を前のめりにする。その体から四方に伸びる鎖は全て引っ張られギチギチと悲鳴を上げ始めた。

 徐々に鎖に限界が訪れ、ところどころでパキィン、バキィンと千切れる音がしだす。


 「AAAAAAAAAAAA!?」


 バキィンと最後の鎖が引きちぎられとうとうアルフェルドは自由の身を手に入れる。


 「ハァ、ハァ、やった、やったぞ、ようやくこの鎖から解放された。あとは貴様らを屠り、コイツ(・・・)を殺せば我は出られる」


 天井に居る小さな竜を見上げた後、引きちぎられた鎖をジャラジャラと引きずりながらアルフェルドは俺たちの眼前までドン、ドンと足音を響かせ歩いてくる。

 

 「おい、ライエル起きろ! 起きてください! お願い起きて!」


 「……う、うむ、気を失っておったのか……ヒッ!」


 ライエルがやっと気が付くと同時に目の前に迫るアルフェルドを視界に入れてしまったのかひどく怯える。


 「待たせたな、さぁ、始めようか、なに、案ずることは無い、人間は我の右腕として大切に扱ってやるぞ」


 そんなこと言われてもちっとも嬉しくない。俺は生きてここを出てユアナに会うんだ。


 「ライエル、手筈どおり離れたところから牽制してくれ」


 「わ、分かった。無理をするでないぞ、と言っても後の祭りかの、死ぬときは一緒じゃぞ」


 「ちょ、諦めんなよ! 何としても勝つぞ、外に出るんだ!」


 ライエルは紫電となって俺たちから遠く離れた。


 「抗うか、人間」


 俺はゆっくりと(しん)呼吸した後、体中に力を籠め静かに言う。


 「銀郭!」


 俺の体の輪郭を銀に輝くオーラが包む。仙威の状態。さっきまでの俺のステータスの数値が今10倍になったのだ。


 「なんだそれは、力が膨れ上がっただと?」


 俺は右拳をアルフェルドに向けて言った。


 「勝った気になんなよコラ。俺のしぶとさ存分に見せてやるから覚悟しな!」


 こいつの中に入ったのは経験値というだけの数値であって、実際に俺と拳を交えた体験ではないのだ。俺がどんな戦いをしてきたのか知らないなら、まだ勝機はあるはずだ。

 

 「呼おおおお……」


 この場所に呼び出され、ここまで来るまでの間にあった辛かった戦いを思い出す。手探りで自分の力を発揮していったんだ。

 そしてとうとうここまで生き延びた。その経験は数値で表せるものじゃない。敵がどれだけ強大だろうと、今この体を、この拳を纏う銀の輝きを俺は、


 (しん)じる。


 「いくぞコラァアアアア!」


 気合と共に俺は地面を踏み砕く。真っ直ぐアルフェルドの顔面へと肉薄し、拳を突き出した。


 最後の戦いが始まる。







ルビの文字が少々露骨すぎたでしょうか?

さぁ、最後のバトル。どうなるのか! 私にもまだ分かりません! ていうかまだ書いてません。

ああ、小太のように私も上司に立ち向かえたなら……(想像中)……はい、クビになる未来しか見えませんでしたorz

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