しゃべった!
オラ ゴブだの章でゴブリンの数を61から121に修正しました。
俺はレインボウバード達と戦った広場に礼をしてから最後の通路で気合を入れながら進んでいく。
さぁどうやって攻めてやろうか。あいつは最後、俺を追い払うように斬撃飛ばしてきやがったから遠慮はいらないだろう。まだ見えないこの通路からいきなりダッシュで本気の不意打ちでもしてやろうかと思いオーラを開放する。
クラウチングスタートの体制をとって、さぁ突っ込むぞと思ったとき、先の広場の気配がどうもおかしいことに気付いた。
「何だ? なんか騒がしいな」
通路の奥。まだ見えない鬼の広場から何やら音が聞こえてくる。壁が爆ぜる音やまるで雷が落ちたのか、ピシャーンゴロゴロ、バリバリ、ドゴーン。
「……んん?」
何してんだあの鬼。ていうか雷の音なのかこれ。あいつ他にも技かくしてたのかよ。とにかく状況が分からない。オーラで探ってもいいが、とりあえずこの目で確かめようと俺は歩いて行った。
「こいつぁ、どういうことだ?」
鬼の広場の前に立った俺は更に状況が分からなくなった。いや、見ればわかるんだけどな。
鬼は何かと戦っていた。そいつは一目見てオオカミだった。しかし体が大きく3メートルはあるんじゃなかろうか。
真っ白な体に紫色に淡く光る流麗な模様が体中に浮かんでいる。そこから紫電がバリバリと放電していた。
「……どこから湧いて出てきた?」
オオカミが鬼と戦っているのは分かった。しかしこのオオカミがどこから来たのかが分からず俺は混乱していた。
だから俺は他にも道があるのかと思いオーラを壁づたいに広げて調べてみた。徐々に広場の左右に広げていく。
「あー、あった」
右側奥の壁。そこに岩で隠されたせいか1メートル四方ほどの小さな穴があった。
(いやぁ気づかなかったなぁ、でもあの穴じゃ、あの巨体は通れないんじゃないのか?)
そんなことを考えながら観戦する。体の周りを放電していた紫電が鬼に向かってはしる。
(おお! 速いな)
ブヒーモスの雷も速かったけど、あいつのは溜があったぶん分かりやすかった。
でもこのオオカミはノーモーションで撃ってるからブヒーモス以上のように感じる。籠められた魔力も桁外れだった。それを鬼は紙一重で避けながら炎の斬撃を放った。その斬撃がオオカミに届くその瞬間。その姿が雷に変わり一瞬で鬼の背後にはしったと思ったら再び姿を現した。
(雷そのものになるのか、ならあの細い通路が通れるのも納得だ)
オオカミは前足を振りかぶり鬼の頭をしばいた。鬼はそのまま吹き飛ぶが壁に激突とまではいかず、途中で踏ん張り体制を立て直す。
(雷の力はすごいけど、物理的な攻撃は弱いな)
しばらく2体の観戦を続ける。
(うーん、オオカミのほうが不利だな。雷は速いけど慣れれば避けれそうだしたいしたことなさそうだなぁ、物理的な攻撃がパンチか噛みつきだけに限定されてる)
雷を避けるのを大したことないと思う時点で人間離れしているのに気付かないまま分析していく。
オオカミは攻撃が当たらなくなってきたのに焦れてきたのか広場内を縦横無尽に雷のまま動き回る。どうやら撹乱して隙を作ろうとしているようだ。
(速いけど無理だろうな、鬼も目閉じてるし)
鬼と戦っていた俺だから分かるけど、あいつは俺と同じタイプだと思う。もう敵を視界で追わずともどこから来るか分かってるんだろうな。
いくら撹乱しても攻撃に意識を変えた途端そのタイミングが分かる。俺も見ないで切り替わる瞬間に集中するだろうなぁ。
俺はこの時点でこのオオカミの強さが前の広場の4体たちと同レベルだろうと思った。
(こりゃ負けるな、オオカミ)
そう確信した時オオカミが動いた。動きで撹乱していた雷が鬼の背後に回り、実態となって飛び出した。狙いは首。そして鬼は自ら後ろに下がる様にスライドした。それと同時に左腰に差してあった刀と右手がぶれる。
そのままオオカミと鬼が交差し離れていく。そしてすこし距離をおいた場所で二つは止まった。
(決着だ)
オオカミの体から突然血が吹き出し倒れる。
オオカミは何が起きたのか分からなかったのではないだろうか。俺もあの抜刀術は避けきる自信が無いからな。
鬼は止めを刺すためかオオカミにゆっくり近づいていく。これはあの二体の戦い。邪魔をするのは無粋というものだろう。
俺は間もなく命が消えるオオカミをせめて看取ろうと視線を向けていた。
「おのれ……」
「ん? 今なんつった!?」
何か聞こえたんだが空耳か? 呻く声が言葉に聞こえただけか?
「グルルゥ……」
やっぱり気のせいかなと思っていたら信じられないものが視界に入り込んだ。
「キャンキャンキャンキャン」
小さい穴から小っちゃいのが飛び出してきた。
「キャワワ!」
うわ、変な声出た。
「カアチャをイジメるなー!」
「えッ!?」
俺の両手に納まりそうなほどの小さなオオカミが鬼に向かってテチテチと走っていく。
「坊、来てはならぬ」
大きい方のオオカミがそう言うがもはや力が無く声は届かない。小さいオオカミは鬼の足にかじり付く。
必死に鬼にダメージを与えようとするが、かじり付かれたほうはどこ吹く風といった風貌だ。
「しゃ、しゃべ……」
鬼は無言でかじり付かれた足を軽く振り上げた。小さなオオカミはそれだけで吹き飛ばされ、地面に落ちる。
「キャウン」
そして鬼は止めを刺すため、刀を振り下ろす。
「しゃべったぁああああ!」
俺は一瞬で銀郭を開放し、たった一歩の踏み込みで数百メートル離れた鬼の懐に入り込む。後で思ったがこの動きは今までで一番最高の動きだった。邪魔をするのは無粋とかそんなことももはやどうでもいい。
咄嗟のことで鬼も完全に不意を突かれた。でもいいよね、俺を追い払うように斬撃飛ばしてきたお返しだ。
俺は顔面に拳を叩き込む。鬼はなすすべなく壁へと吸い込まれ激突した。その隙におそらく親子であろうこの2匹をオーラで回収し、通路を塞いでいた岩を粉砕。広くなったもう一つの通路へと逃げ込んだ。
通路へ逃げ込みしばらく進むと小さな広間があった。そこに俺はオオカミ達を降ろす。
「カアチャ! カアチャ!」
ぐったりした母親に小っちゃいのが縋り付く。
「大丈夫だ、これを飲めば助かる」
ボトルを出して母親の顔を持ち上げようと近づいたらすごい威嚇された。
「グルルル……」
「治すだけだ、傷つけるつもりはない」
分かってくれたのか、顔を持ち上げても何もしてこなかった。
「頼むから治った後に襲わないでくれよ?」
そう言いながら俺はオオカミの口へ水を流した。
するとオオカミの体が淡く光り、それが収まると傷一つない元の体に戻った。
「カアチャ!」
完全に治った体にオオカミは瞠目していたが、縋り付く子供をあやす様にペロペロ嘗める。
「ケガは無い? 坊」
「ウン!」
母親は安心させるように嘗め続け、子オオカミは甘えるように額を体にコシコシとこすり付ける。
その親子愛を目の前で見せられていた俺はそろそろ限界がきていた。ただでさえ孤独感で押し潰されていた時に、仲良くなれると思っていたゴブは目の前で死んでしまった。その後夢のおかげで少しは元気が出たとはいえ孤独感はぬぐえていない。
そんな時に喋るオオカミが出てきた。喋れる、つまり意思の疎通ができる。そして子を嘗める母親の慈愛に満ちた目が遠い日に見た俺の母ちゃんと重なって見えた。
(ああ、もうだめだ我慢できない)
「礼を言う、人族も「母ちゃぁああん!」ッ!?」
この俺を受け入れてくれ! そんな想いで俺はオオカミにダイブしていた。しかし返ってきた返答は肉球によるビンタだった。
「オオ……、オウフゥ……」
顎外れた。
「仕方なかろう、突然跳びかかられては誰でもそうする」
「いやぁ、すいません、舞い上がっちゃってまして」
「オジチャおもしれー顔!」
小っちゃいのがケラケラ笑ってる。超カワイイ! あとおじちゃんじゃない、誰が老けてるって? 俺はお兄さんだ!
「てことでモフらせてもらっていいですか?」
「もふるというのが何か分からぬ以上断る。しかし礼を言おう。坊やともども助けてくれて感謝する」
「だからお礼はモフモフでお願いします」
「そのもふもふとは何だ」
「その柔らかそうな毛の中に抱き着いてその柔らかさを心ゆくまで堪能することで「やはり断る」何でぇ!?」
「この身は夫に操を立てた身、人族とはいえ成人した男に、しかも腰布のみの男にこの身は晒せぬ」
「あ、はい、分かりました」
これ見よがしに落ち込む。仕方ないよな、人間で言うと人妻にいきなりパンツ一丁で抱き着こうとする変質者じゃないか。
「ていうか俺成人してねーし、まだ17だし」
「(ネーシ?) 17ならば立派な成人ではないか、人族はたしか15で成人であろ?」
「え、マジかー。 俺の世界じゃ20で成人なんだけどな、結婚は確か18でできたっけ」
「オレの世界? おぬしはこの世界の人間ではないのか? その、ネーシだの、マジカー、だのよう分からん言葉だの……」
俺はここに来た時のことを話した。これまでの激戦で服は亡くなり、ここまで戦い抜いて鬼の所まで到達した。いったん引いた後もう一度挑もうとしたらオオカミが鬼と戦っていたこと。
あと言葉使いをこれからは気を付けますと言った。
「なるほど、恐らくおぬしは人族の召喚の儀によって呼び出された使い魔であろう。なぜここに居るのかは分からぬが」
「人間について詳しいんだな」
「我らの先祖も人族に呼び出された召喚獣ゆえな、紹介が遅れた。わが名はライエル。誇り高きフェンリスヴォルフなり」
「ボクはカイだよオジチャ」
「俺は盾地小太だ。小太って呼んでくれ」
俺は手を差し出した。するとライエルが俺の手の上にポンと前足を置く。図らずもお手の形になった。
俺はその手に触れる感触に我慢できなかった。
「肉球ぷにぷにー」
ビシッ。
「痛い!」
ビンタされた。
でも爪を立てないでくれるのは優しさかな。おかげで肉球の感触が癖になるかも。
「懲りぬなオヌシ」
「オジチャ遊んでー」
俺はしばらくカイと遊んだ。ライエルは二人を慈愛で満ちた目で眺める。
ここをダンジョン内だという事を忘れられた束の間の楽しい時間が流れていった。
キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!……はい。
喋れる 喋られる ら抜きになるのか調べたらどうも喋れるでよさそうだったのでこっちで書きました。
日本語って難しいですね。




