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 「ふっ!」


 俺は右手に握った大剣を力任せに振り下ろす。しかしそいつは左手に持った水色に透き通った刀で後ろへ受け流し、右手に持った燃えるように赤い刀で斬りつけてきた。それを俺は左手に持ったハルバードで迎え撃つ。

 ガキィンとぶつかり火花が飛び散るも、次の瞬間にはバターを斬るかのように俺のハルバードは斬られてしまう。

 刃が俺の体に到達する直前、俺はオーラの拳を刀の横腹にぶつけ軌道をそらす。すかさず半分になったハルバードでそいつの横腹を殴りつけた。


 「グフゥ!」


 うめく声をあげそいつは広場の壁まで吹っ飛び、砂埃をまきあげた。


 「うおおお!」


 俺はその砂埃に向かって数十本アイテムから出した様々な武器を一気に飛ばす。

 ズドドドと着弾していくが手応えが無い。そこで世界がスローになった気がした。


 (後ろ?!)


 体の周り数メートル四方まで縮めたオーラが真後ろに居ることを知らせ、右から刀が迫ってくる輪郭を確認。いつの間に移動したのか見えなかった。

 とっさに右腕をガードするように掲げると同時に全てのオーラを腕に一瞬で纏わせる。


 ガキィイン!


 赤い刃と俺の腕が接触。そのまま振りぬかれる刀の勢いにその身を任せ離脱。


 「()ぅ!」


 銀環無しの全力オーラは今では体育館ほどのデカさまで成長した。もう銀環無しでも俺は自由に空を飛び回れる。

 そのオーラを右腕だけを防御するために質を上げて纏ったオーラでも防ぎきれず、少し斬れて血が流れた。

 かなり吹き飛ばされ体制を立て直しヤツを見ると左手に持っていたはずの水色の刀が目の前まで迫っていた。


 (投擲!)


 俺はオーラを左拳に集め弾く。


 パキィイン


 拳が刃先に触れ、弾いたと思った。しかしその瞬間刀の能力なのか俺の体半分を一気に凍らせた。


 (やっべ動けん!)


 再びスロー。目測で100メートル以上は離れていたヤツがスローにもかかわらず突然目の前に肉薄し、赤い刃を振り下ろしてきた。


 (銀環!)


 俺の体を中心に銀の太陽が吹き出す。氷を砕き、赤い刃も銀の壁に防がれた。


 殺意 歓喜 憧憬


 相変わらず銀環で敵の攻撃を防いだ時に流れ込んでくる感情の様なもの。それを無視して俺は前蹴りを放つ。

 しかしそこに敵は無く(くう)を蹴る。また後ろに回り込まれいつの間にか回収したのか二つの刀を気合の声とともに同時に振り下ろしてきた。


 「ゴォオオオ!」


 (ッ! 銀環なのにスロー?!)


 俺は銀環中にもかかわらず武器を5本頭上にクロスするように出現させ前転して逃れる。

武器は振り下ろされる二つの刀に切り裂かれた。しかしそのほんのタイムラグのおかげで俺は逃げおおせる。


 地面に振り下ろされた刃が轟音を響かせる。その隙に俺は銀環を見た。


 (斬られてる)


 今まで絶対防御と思っていた銀の環。しかし俺の目の前には少し裂かれた跡が二つあった。でもその部分はすぐに光の粒子が集まり塞がれ元の環に戻る。


 (絶対なんてことは()ぇってことか。修復の瞬間ちょっと力抜けた気がしたな)


 修復分に必要なだけの魔力が抜かれたのか、少しの範囲にもかかわらず必要な魔力はかなり必要らしい。 銀環が直った直後、ヤツが走ってきていた。俺は反射的に拳を突き出し、一軒家ほどもあるサイズの拳オーラを飛ばした。

 キシリトロール鬼3体をまとめてコナゴナにするほどの力。


 「フン!」


 しかしヤツの片手の刀一振りで拳オーラが霧散した。


 「(へこ)むわ……」


 とっさの攻撃だし、まぁ自分でも多分効かないだろうなと思ったがまさか片手でかき消されるとは思わなかった。


 ヤツはお返しとばかりに赤い刀に炎を纏わせ縦に振り下ろした。まるで三日月のような形で飛翔してくる炎の刃。

 銀環でも防げそうに無いだろう魔力というか圧力を感じる。だが少し横に移動すれば避けれるだろう。

 しかし俺は片手で払う動きをつけてオーラの手でかき消した。炎は霧散し、残り火が広場の空間にゆらゆらと消えていった。

 それを見てホッとする。かき消すだけの力はあったようで冷や汗を流しながらもニヤリと笑った。


 (避けたらなんか負けた気がするからな)


 ヤツもそれが分かっているのかニヤリと笑った。

 笑ったように見えた。

 多分笑ったんだと思う。


 鬼みたいな凶悪な顔で笑われても怖いだけだ。人のことは言えないけどな。


 (ていうか鬼そのものだよなこいつ)


 


 ちょっと前に鳥と豚と蛇二匹倒してからまだ余裕があって次の広場に来てみたらこいつが居た。

ちなみに鳥がレインボウバード。豚がブヒーモス。黒ヘビがアニコンダで白ヘビがアネコンダだった。


 キシリトロール鬼以降から広場はドーム球場ぐらいの広さが続いている。ここに来るまでは広さに比例するように敵の数が多かったり個体がデカいやつが出てきたりした。

 しかしここに来て広さは相変わらずだったがこいつ一人だった。


 こいつの容姿は一目見て鬼だな。身長は3メートルほど。ボサボサの茶髪で額から2本の真っ黒で長い角が生えて途中から後ろに反る様になっている。

 全身は浅黒く鍛え抜かれた体は侍が着るような黒い浴衣? 着流しっていうのか? そんなのを着ていた。光沢があってお高そうなんだけど裾がボロボロだ。

 浅黒いヤツが黒い着物を着て薄暗い所に居るから正直見にくい。視界ゼロの修行してなかったら辛い戦いになってただろうな。まぁ辛くない戦いなんて無いけど。目は瞳が無いのか全部真っ赤でどこ見てるか分からない。

 右手に炎を出す刀。左手に氷を出す刀を持つ二刀流スタイル。両の腰には鞘が一本づつぶら下がっている。


 対峙した時は身震いした。明らかにこれまで以上の強敵だと分かる圧力を感じた。フワフワと広げていたオーラを圧縮して質を上げてから挑んだのはどうやら正解だったようだ。銀環斬られたのも初めてだしな。


 俺たちはにらみ合いながらもそれぞれ構えをとる。同時に俺は銀環に意識を少し向けて集中。環がその輪郭を崩し俺の体に張り付いて全身を包むようになる。はたから見たら俺の体の輪郭は銀色に輝いて見えるだろう。こうすることで魔力の消費がおさえられて銀環持続時間が増えた。

 それだけじゃない、この状態で敵を殴りつけたら今までにないほど攻撃力があがった。俺はこの状態を銀色の輪郭ということで銀郭(ぎんかく)と名付けた。はい、適当です。

 銀環を出したおかげで周りに漂うオーラはもはやどこまで広がったのか距離が分からない。ここからでも来た道にちょっと意識を向けたらソードウルフが毛づくろいしてる姿が見える。もう何百キロも広がってるんじゃないかなこれ。

 その広がったオーラも自分の体の周り数メートルまで一気に圧縮する。銀と白いオーラに包まれたこの状態が俺の現時点での本気だ。


 ここに来るまで戦うだけじゃなく様々な修行もしてきた。この銀環をなんとか操ることができないか試行錯誤していたら徐々に変化が見えた。

 おかげで様々なことができるようになったが今はこの目の前の敵だけに集中できるこの型を取る。鬼もどうやらヤバさに気づいたのか、ニヤけてたと思う顔を引き締めていた。


 「ふぅうう……」


 「コォオオ……」


 お互いの緊張感が高まる。さっきまでのはお遊びだ。数秒か、数分か、どれだけ経ったか分からない膠着状態からどちらからともなく動いた。

 常人では両者掻き消えたと思っただろう瞬間。その広場は轟音と砕け散る岩壁と炎と氷とオーラがグチャグチャに埋め尽くした。


 

魔武闘大会が行われる闘技場の広さ=ドーム球場の広さ

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