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桜の国03

「あ……」


 僕がオーラを引っ込めるとフォトンはハッとした表情になった。


 ここは桜の国のとある村。


 僕たちが桜の国に入国して最も初めに辿り着いた村だった。


 つまり桜の国において最も竜の国に近しい村だ。


 辺境だね。


 要するに。


 というわけで今日はこの村で一泊することになり、銀貨二枚という安い値段の宿屋に泊るのだった。


 ちなみに二人部屋が二つ。


 今日僕と部屋を共にしているのはフォトンである。


 ウーニャーもいるけど。


 そういうことで僕とフォトンは遁術講座を行なっている最中だったのだ。


 ベッドの上に胡坐をかいて向かい合い、僕がオーラを展開しては引っ込めることを繰り返したのだった。


 毎度の通りにオーラ酔いになるかと思ったけど今夜のフォトンは少し違った。


 僕は引っ込めたオーラを広げる。


「あ……」


 やっぱりハッとなるフォトンだった。


「もしかしてフォトン……?」


「はい。何か違和感のようなものを感じます」


「へえ」


 僕は感心した。


 そしてオーラを引っ込める。


「あ……」


 とまたフォトンが呟く。


「どう? まだ違和感は感じる?」


「いえ、先ほど消えました」


 正解。


 僕はまたオーラを広げる。


「あ……」


 またハッとなるフォトン。


「こりゃ確信せざるを得ないね」


「何をでしょう?」


「フォトンがオーラを感じ取れてるってことを、だよ」


「これが……オーラ……?」


「違和感を感じ取れたってことはオーラに対してそれだけ敏感になったってこと。後は慣れだね」


「慣れ……ですか」


「然り」


 とここで、


「ウーニャーは何も感じないよ?」


 ウーニャーが虹色の瞳で興味津々に言葉を挟んでくる。


「ウーニャーにもその内わかるよ」


 そう言って僕は人化しているウーニャーの頭を撫でてやった。


「えへへ」


 と笑うウーニャー。


 可愛い可愛い。


「それで……」


 とこれはフォトン。


「オーラを操れるようになるまでどれだけかかります?」


「本人の才能と努力次第じゃない?」


「身も蓋もないですね」


「最悪出来ないってことはないから心配しなくていいよ。オーラを操るってのは要するに感覚の延長だから生物なら何であろうと可能性はある。まして人ともなれば出来ない方がおかしいくらい」


「ですか」


「実際……僕もツナデもイナフもできるからね」


「こちらで言うところのエルフ魔術がマサムネ様における遁術だというのが私には驚きに値するのですが……」


「ま、どこに行っても世界の基準は変わらないってことかな」


 基準世界と準拠世界。


 それを僕は思い出していた。


「ぶっちゃけて言うなら遁術っていうのは他者の意識へのオーバーライドに他ならないんだよ。それを行なうための手段としてオーラが存在するんだから無茶と言えばその通りなんだけどね」


「でもカロリーを消費するんでしょう?」


「お腹はすくね」


 僕は肩をすくめる。


「等価交換……なんでしょうか?」


 それとは少し違うと思うけど……。


「それで……」


「何さ?」


「これからどうすればいのでしょう?」


 遁術の習得についてだろう。


「違和感の探索かな」


 僕はそう結論付けた。


「違和感の……」


「そ、違和感の……」


「そのためには?」


「瞑想が一番」


「瞑想ですか」


 フォトンはキョトンとする。


 洒落じゃないよ。


 念のため。


「それじゃあ目を閉じて自身の周りを纏う違和感を探ってみよう」


「マサムネ様がそう仰るならそうしますが……」


 そう言って胡坐をかいたまま目を閉じてフォトンは瞑想をするのだった。


 元々魔術師であるフォトンは想像創造……強烈なイメージを得意とする。


 瞑想くらい何とでもなるだろう。


 瞑想をして自身のオーラを感じ取ろうとしているフォトンを邪魔することもできず、僕は部屋を出た。


 僕は僕で訓練をしよう。


 そう思って宿の外に出ると、


「お兄ちゃん……」


 とイナフに出くわした。


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