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竜の国22

「ウーニャー様……騎士マサムネ様にその運命を託するや?」


「ウーニャー!」


「騎士マサムネ様……ウーニャー様を守る剣となり誇りある竜騎士とならんや?」


「承りましょう」


「ではここに高らかに宣言しましょう。ウーニャー様はその運命を竜騎士マサムネ様に託し、マサムネ様はその剣を真竜王ウーニャー様に託し、バーサスの契約を結ばんことを!」


 次の瞬間、ワッと竜王谷が沸き立った。


 竜王谷のドラゴンたちの歓声だ。


 生まれたての真竜王ウーニャーに早々にできたバーサスの騎士……竜騎士マサムネ。


 僕とウーニャーは竜王会議の屋上で、晴れ渡る空の下、契約を交わす。


 それは所謂一つのキスだ。


 人化した虹色の髪に虹色の瞳を持った幼女相手にキスをするのは何とも背徳めいていて冷や汗が出るのだけど、こうしなければウーニャーを竜の国から連れ出すことはできないとなれば仕方ない。


「パパ……」


 と潤んだ瞳で僕を見るウーニャーに、


「ウーニャー」


 と名を呼んで唇を重ねる僕。


 こうして僕はウーニャーの竜騎士となったのだった。


 竜騎士。


 それは騎士として一体のドラゴンと運命を共にする人間に与えられる称号だ。


 魔術師のバーサスとは本質的には一緒だけど、重ねることが出来るのだ。


 つまり僕のバーサスはフォトンとウーニャーということになる。


「「「「「真竜王様!」」」」」


「「「「「ウーニャー様!」」」」」


「「「「「竜騎士様!」」」」」


「「「「「マサムネ様!」」」」」


 竜王谷のドラゴンたちが「めでたい」と熱狂する。


 僕とウーニャーを祝福し奉る。


 竜王会議の上空を飛んでいるドラゴンたちも、


「「「「「真竜王様!」」」」」


「「「「「ウーニャー様!」」」」」


「「「「「竜騎士様!」」」」」


「「「「「マサムネ様!」」」」」


 と僕たちを祝った。


 その日、竜王谷は歓喜の渦に呑み込まれた。


「「「「「真竜王ウーニャー様に乾杯!」」」」」


「「「「「虹竜騎士マサムネ様に乾杯!」」」」」


 そんなこんなでドラゴンたちは「めでたいめでたい」と酒を呑む。


 食事はしないドラゴンではあるけど麻薬や酒はやるらしい。


 僕?


 無論未成年だから酒なんて飲まないよ?


 竜王会議の屋上。


 晴れ渡る空の下。


 僕とウーニャーが契約を交わした……その隅っこでフォトンとツナデとイナフが嫉妬に狂っていた。


「マサムネ様……私以外の女の子とキスしました……!」


「お兄様の唇はツナデのモノなのに……!」


「ちがうよ! お兄ちゃんはイナフのモノ!」


 まぁ聞かなかったことにしよう。


 フォトンもツナデもイナフも……ある意味で僕との関係性は強い。


 フォトンは僕を排斥だらけの世界から脱出させてくれた。


 ツナデは元の世界で唯一僕の味方だった。


 イナフは僕と同じ業を背負っていた。


 それぞれに大切な女の子だ。


 でも今だけは僕はウーニャーのモノだ。


 ウーニャーは、


「ウーニャー」


 と言うと人化を解いてドラゴンの姿になり僕の頭に乗るのだった。


 どうやら本気で僕の頭の上がベストプレイスらしい。


「皆の者、今日は大いに真竜王ウーニャー様の契約を祝ってほしい」


 金竜王がそう高らかに宣言すると同時に歓喜の喝采が一際大きく沸く。


 人化したドラゴンも、素の姿のドラゴンも、酒を呑んでは僕とウーニャーを祝福するのだった。


 ここまで祝福されると気恥ずかしくもあるね。


 とまれ、


「竜の国も堪能したし次の国に行こっか」


 僕がフォトンにそう言うと、


「そうしますか」


 フォトンは頷いた。


 僕は魔術で薬効煙を生み出し火をつけると煙をスーッと吸ってフーッと吐く。


「で、次の国は?」


「東へ行きましょう。竜の国の隣国……桜の国です」


「…………」


 桜の国ね。


「もう出立されるのですか?」


 問うてきたのは金竜王。


「ま……ドラゴンも見れたし……やるべきことはやったし……ね……」


 フーッと煙を吐く。


 スーッと煙を吸う。


「ウーニャー! ウーニャーもパパと一緒にいろんな物を見たいな!」


 知識欲旺盛でよかことです。


「では桜の国までわたくしがお送りしましょう」


 そう言って金髪金眼の人である金竜王は全長五十メートルを超える金色のドラゴンへと姿を変える。


 端々で「金竜王が真の姿を!」とドラゴンたちが驚愕していた。


 ドラゴンの姿になった金竜王はといえば、


「ではどうぞ背にお乗りください……ウーニャー様……マサムネ様……フォトン様……ツナデ様……イナフ様……。竜の国と桜の国の国境まで送って差し上げます」


 そりゃどうも。


 僕たちが金竜王の大きな背中に乗ると同時に金竜王は羽ばたいた。


 そして桜の国との国境のある東へ向かって飛ぶのだった。


 こうして僕たちは竜の国を後にする。


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