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竜の国20

 僕と銀竜王は竜王谷の北端……荒れ地となっているドラゴンどうしの決闘場に使われる谷の底にて相対した。


 僕は準備された片手剣を握って試しに振ってみる。


 ずっしりとした重さは人の命を奪うための代償のようにも思える。


 対して銀竜王も片手剣を握っている。


 僕のと同様のものだ。


 当然、剣を持っているのだから銀竜王は人の姿をとっている。


 ドラゴンの姿にならなくとも僕に勝てると思っているが故だろう。


 まぁ別に負けてもいいんだけどさ。


 鎧も受け取れたが僕は断った。


 動きを制限されるのは忍の戦いとしては致命的だ。


 んなこと言ったら「片手剣だってどうよ?」という話だが……まぁハンデの一つや二つはあってもいいだろう。


 銀竜王は軽装の……聞くところによるドラゴンの鱗を使った鎧を着ていた。


 守りは万全ということらしい。


 僕は片手剣を振って具合を確かめながら、吸い終わった薬効煙を魔術によって焼き払い消失させる。


 それから目を閉じて瞑想。


 僕と銀竜王の間に立つ金髪金眼の人間……人化した金竜王が言葉を紡ぐ。


「双方とも……準備はよろしいか?」


 僕は目を開くと頷いた。


「大丈夫」


 銀竜王もまた頷く。


「万全である」


 そんな僕と銀竜王の頷きに、


「うむ」


 と金竜王が頷き返すと、


「ルールは一対一の決闘。魔術の使用も認める。また無限復元が復元できるまでの殺傷行為も是とする。ここまではよろしいか?」


 そう確認してきた。


「物騒なことだね」


 僕はそう言う。


 要するに死んでもフォトンがいるから大丈夫……そんな狂気とさえ思われるルールを提示しているのだから。


「不満か?」


 これは銀竜王の挑発。


「まぁ銀竜王に痛い思いをさせるのは忍びないしね」


 僕も挑発で返す。


「ほう」


 ピクリとこめかみをひくつかせる銀竜王。


 銀色の瞳には怒りの感情が含まれていた。


 挑発されて怒るくらいなら煽るなよ、とは言わない。


 不毛だからだ。


「双方合意したと受け取っても?」


 金竜王が問うてくる。


「はい」


「然り」


 肯定した僕たちを見やった後、


「では……」


 と金竜王は頷いて片手を掲げると、


「始め……!」


 と掲げた手を振り下ろした。


 同時に銀竜王が駆けた。


 片手剣を両手で握って僕へと間合いを詰める。


「…………」


 僕は無言で待ち構える。


「はああああっ!」


 と闘気も十分に銀竜王が剣を振るう。


 袈裟切りだ。


 僕はそれを片手で受け止める。


 剣どうしが拮抗する。


 相手は両手持ち。


 僕は片手持ち。


 拮抗はすぐに崩れる。


 僕は銀竜王の剣を受け流すとバックステップした。


 今度はこちらの番だ。


 間合いを詰めて突きを放つ。


 狙いは喉。


 しかして、


「ふっ」


 と呼気も強く銀竜王が僕の突きを弾く。


 想定内だ。


 水平に振られた銀竜王の剣を身を低くして避けると、僕は剣を切り上げる。


 それを跳躍で避ける銀竜王。


 ムーンサルト。


 高く跳躍して僕の背後をとる。


 同時に斬撃が僕を襲う。


 見えずとも展開したオーラで手に取るようにわかる。


 兜割りだ。


 僕は体を軸回転させて直上からの剣を避けて、回転そのままに剣を振るう。


 決まった。


 そう思った。


 だが結果は違った。


 予想以上に素早い銀竜王の対処のせいで僕の剣は弾かれたのだ。


 銀竜王は一つギアを上げた。


 それは確実だった。


 僕もギアを一つ上げる。


 片手剣を連続的に振るって銀竜王を追い詰める。


 しかしてさらにギアを上げた銀竜王の斬撃が僕の斬撃の全てを弾くのだった。


 一旦距離をとる僕に、


「ほう……」


 と銀竜王は感嘆の声を上げた。


「我の動きについてくるか。見上げたものだな」


 そりゃどうも。


 僕は片手剣を捨てると、袖に隠しているクナイを取り出して両手に構えた。


 そしてもう一段階ギアを上げる。


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