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竜の国19

 僕は魔術で薬効煙を作ると魔術で火をつける。


 煙をプカプカ。


 ああ、落ち着く。


 薬効煙を吸いだした僕の視界でフォトンが赤竜王の死体に近付く。


 そしてフォトンは凍っている赤竜王の死体に手を触れさせる。


 ただそれだけのことなのに、


「……っ!」


 黒竜王は絶句した。


 フォトンの触れた赤竜王の体……そにあった心臓を貫いた穴が見る見る塞がり凍結されていた赤竜王の瞳が活力を取り戻したのだから。


「…………」


 僕はスーッと煙を吸う。


 生き返った赤竜王は、


「グガアアアアアアアアッ!」


 と吼えた。


 それが何に対しての咆哮かは僕にはわからない。


 ただビリビリと空気が震えた。


 フーッと煙を吐く。


「ようやっと目覚めたか赤竜王」


 黒髪黒目の美女……黒竜王がそう赤竜王に話しかける。


「うん? 我は……どうしたのだ?」


 赤竜王の立場にたってみれば殺されて意識を失くした瞬間から記憶が途絶えているのだろう。


 困惑するのは当然と言えた。


「フィリアは……トライデントの所有者はどうした……!」


「とっくに立ち去っている」


 黒竜王は淡々と事実を並べる。


「立ち去った? 我との決闘を放棄してか?」


「決闘は終わっている」


「どういうことだ黒竜王?」


「赤竜王……貴様はトライデントの所持者たるフィリアに負けたのだ」


「…………」


「心臓を貫かれ……死んでいる」


「我は生きている……!」


「それは無限復元が生き返らせたからだ」


 容赦なく言う黒竜王。


「では我は……!」


「ああ、フィリアに殺された」


「そうか。負けたか」


 赤竜王は納得したように呟くのだった。


「トライデントはそれほどまでに強力か……」


「相性が悪かっただけだ。気に病むこともあるまい」


 黒竜王は淡々と言う。


 僕は煙を嗜んだ。


「それで?」


 そして問う。


「赤竜王を生き返らせたのですからこれにて僕たちの仕事は終わりですよね?」


「そうだな」


 黒竜王は頷いた。


「無限復元には世話になった。感謝する」


「いえ、大層なことはしていません」


 恐縮するフォトン。


 大層なことをしたと思うのだけど……まぁ言葉にする必要はないだろう。


「そうか……。負けたのか……」


 赤竜王はそれだけ呟いた。


「では僕たちはこれで」


 煙を楽しむ僕。


 薬効煙にて落ち着く僕……正確には僕たちに、


「感謝する」


 と黒竜王が頭を下げた。


「頭を下げられるようなことはしていませんよ」


 フォトンは謙虚にそう言う。


「いや、我の命の恩人だ。我も感謝する」


 赤竜王も頭を低くするのだった。


 次の瞬間、竜王会議の城から虹が放出されて天空へと消えていった。


 何事かと訝しむ僕たちは、竜王会議から翼を広げて飛び立ったウーニャーを発見するのだった。


 ウーニャーは僕を見つけると、


「パパ!」


 と僕を呼んで僕へと羽ばたく。


 そして僕の頭に身を置くのだった。


「パパ! 助けて!」


「何があったのさ?」


「七竜王がウーニャーは竜王谷に残るようにって言ってきたの!」


「当然じゃない?」


「ウーニャーはパパと一緒に旅したい!」


「またそう言う無茶を……」


 煙を吸って吐く僕。


 青と白と黄と金と銀の美男美女が追い付いてくる。


 赤竜王と黒竜王以外の竜王だ。


 そして銀髪銀眼の人化した竜王……銀竜王が僕たちに近付いて言う。


「ウーニャー様。ご自重ください」


「や! ウーニャーはパパと一緒にいるの!」


「聞き分けてください」


「じゃあ銀竜王とパパが戦えばいいじゃない。パパが勝ったら銀竜王と一緒にいるよりパパと一緒にいる方が安全だって証明できるでしょ?」


 何を言い出すんだウーニャーは。


「人間が神竜に勝てる道理などありませぬ。パパが死ぬだけですよ?」


「戦ってみればわかるよ!」


「と、ウーニャー様は仰っていますが……マサムネは我に挑むのですか?」


「負ける気はしないけどね」


 僕は薬効煙を吸いながら肩をすくめた。


「ほう」


 と銀竜王は感心したように吐息をつく。


 そんなこんなで僕と銀竜王の決闘が決まったのだった。


 目的はウーニャーが僕たちの旅についていくかどうかの分水嶺。


 なんでそんなものに僕が命をベットしなきゃいけないのかはわからないけど。


 僕は煙を嗜んだ。


「やれやれ」


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