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竜の国18

「なるほどね」


 竜王会議の北門を抜けて、その先の闘技場とやらに行って納得する僕たちだった。


 闘技場とは言っても野ざらしの谷の底であってとても場と呼べる代物ではなかったけど、フォトンが言うにはドラゴンどうしの戦いは空中でのブレス戦になるので広いスペースが取れればそれでいいらしい。


 とまれ、僕たちは黒竜王の意図を悟った。


 赤竜王が凍っていた。


 しかも人化した姿ではなくドラゴンの姿のままで。


 その姿は神々しかった。


 全長は五十メートルを優に超えるだろう。


 さすがに竜王というだけあって、その大きさだけでも敬服したくなるくらいの王の資質を感じた。


 爪や牙は力強く、何物をも貫き切り裂かんとする意図が垣間見える。


 赤い鱗は凛と輝き矛でも傷つけられないほど堅牢な印象を受けた。


 以前フォトンが言った。


 神竜は国家戦力と同等だと。


 なるほど。


 目にしてみれば信じざるをえなかった。


 確かに……強い……!


 そんな赤竜王は死んでいた。


 凍っているから……というわけではない。


 穴だ。


 赤竜王の体に穴が開いていた。


 それは赤竜王の……多分ではあるんだけど……心臓を捉えていて、腹から背中にかけて貫通していた。


 つまり死んでいるのだった。


「死んだ赤竜王の死体が腐敗しないよう我が凍らせた」


 黒竜王がポツリと言った。


「無限復元」


「何でしょう?」


「赤竜王を生き返らせろ。報酬は弾む」


「それは構いませんが……」


 フォトンの言葉が尻すぼみ。


「その前に何故赤竜王が死んでいるのです?」


「殺されたからだ」


「神竜の鱗は何より堅固な盾であるはずでしょう」


「弱点を突かれた」


「なるほど」


「何がなるほどなんでしょう?」


 これはツナデ。


 答えてフォトン。


「七竜王がそれぞれ魔術における七属性を持っているのは話しましたよね?」


「はぁ」


 これはイナフ。


「赤竜王は火の属性を持つ竜王です。つまりそうである以上、赤竜王は水の属性に弱いんですよ」


「なるほど」


 これは僕。


 五行相剋の理屈だ。


 水剋火。


 水を以て火を剋す……。


 そういうことなのだろう。


「でも誰が赤竜王を殺すほどの水属性の魔術を?」


「当人はフィリアと名乗った。人間だ」


「人間が赤竜王を殺したんですか!?」


 フォトンは信じられないと目を見開く。


「海王ポセイドンの持つ神器……トライデントをフィリアは持っていた」


「…………」


 僕とツナデが無言でずっこけた。


「何ですその反応は?」


 訝しむフォトンに、


「こっちの世界にもポセイドンっているの?」


 僕はよろよろと立ち上がって問うた。


「神話の世界の話ですけどね」


「一神教は唯一神の宗教ではないのですか?」


 この当然の質問はツナデ。


「唯一神の宗教ではありますが他にも天使や悪魔として霊的存在は伝えられていますよ?」


「その一柱がポセイドンってこと?」


「そういうことですね」


 フォトンはあっさりと頷いた。


 ポセイドン……。


 ポセイドンね……。


 たしかにこの世界は僕とツナデがいた元々いた世界と情報の一部がリンクしてはいるのだけど……いや、デミウルゴスという言葉が出た時点で想定すべきだったのかもしれない。


 僕はこの世界を準拠世界と名付けた。


 僕とツナデが元いた世界を基準世界と名付け、それに準拠する世界であると定義づけたのだ。


 ならばポセイドンが出てきても不思議ではないのだろう。


 ゼウスやハデスもいるのだろうか?


 あえて聞く気にはなれなかったけど。


「それで……海王ポセイドンはいいとして……その神器って何さ?」


「トライデント」


 それくらいは知っている。


 ポセイドンの持つ三又の槍のことだ。


 万物を破壊する神槍にして嵐や津波を起こし、時に大陸すらも揺るがす神話の世界の武器だ。


 その強力さは数多あるあっちの世界の神話の中でも随一の威力を持つ。


「それがこっちの世界には実在するの?」


「はい」


 フォトンは頷く。


「水を自在に操り嵐や津波を起こし、水の斬撃や刺突を可能とする規格外の神器です」


「そこまでだ無限復元」


 黒竜王が会話を遮った。


「ともあれトライデントで赤竜王が殺されたのは事実だ。無限復元にこれを治すことは可能か」


「可能です」


 力強くフォトンは肯定する。


「では頼む」


 黒竜王は淡白にそう言った。


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