竜の国13
「パパ!」
と虹色の幼女は僕に抱きつく。
無論のこと卵から脱している直後のため全裸である。
「パパ! パパ!」
と虹色の美幼女は僕に抱きついて僕の頬に自身の頬を擦り付ける。
「え? ええ?」
虹色の美幼女に「パパ」と呼ばれて抱きしめられる。
そんな経験はもちろん初めてだ。
「パパ! 遊ぼ?」
卵から生まれた七色の美幼女は僕にそう提案する。
「遊ぶったって何を。そもそも君は誰さ?」
そんな僕の問いに、
「ウーニャー!」
と少女は答える。
「ウーニャー?」
「ウーニャー!」
ドラゴンの幼女……ウーニャーはそう答える。
「パパ……ウーニャーと遊んで!」
そんなウーニャーの言葉に、
「遊ぶったって……」
どうすればいいのさ?
困惑する僕。
そこに、
「申し訳ない」
と第三者の声が聞こえてくる。
声のした方を見ると黒色の……ブラックドラゴンとでも呼ぶべき巨大なリンドブルム級のドラゴンがいた。
「ブラックドラゴン……!」
と驚愕したのはフォトン。
「でか……」
とこれはツナデ。
「ふあ~、大きいですねぇ」
とこれはイナフ。
「ウーニャー様。どうぞこちらへ」
と手を差し出すブラックドラゴンに、
「や!」
とウーニャーは拒絶の意志を示した。
そしてギュッと僕を抱きしめる。
ちなみにさすがはドラゴンと言うべきか。
僕を抱きしめるウーニャーの膂力は大層なモノだった。
美少女に抱きしめられて死ねるなら本望だけどコレには該当しまい。
ということで僕はウーニャーの抱きしめからスルリと抜けてブラックドラゴンに問うのだった。
「ブラックドラゴン?」
「何です?」
「このウーニャーはいったい何なのさ?」
「七色竜王と呼ばれる……五千年に一度生まれる竜王たちを纏めるドラゴンの真の王にございます」
それは……なんと言ったらいいのか……。
戸惑う僕に、
「パパ! 逃げよ!」
とウーニャーは言って美幼女の姿からドラゴンの姿へと変わる。
人化を解いたのだろう。
虹色に変色する鱗を持ったレインボードラゴンとでもいうべきドラゴンの姿となるウーニャーだった。
ただし大きさは生まれたばかり故か一メートル前後といった有様だ。
まだ子供のドラゴンなのだろう。
先ほど卵から生まれたのだから当然と言えば当然なのだけど。
そんなわけで七色竜王……ウーニャーは僕の頭部を掴んで空へと羽ばたくのだった。
そしてそれを拒否する僕。
想像創造をして、
「闇を以て命ず。空間破却」
とテレポートする。
結果としてウーニャーの手を逃れ地面に着地する。
地面に接した僕に、
「なんで……パパ!」
ウーニャーは、
「わからない」
と困惑する。
「ウーニャー……」
と僕はウーニャーに問いかける。
「何で僕がパパ?」
「だってウーニャーのパパだよ?」
当然とばかりにウーニャー。
そこにブラックドラゴンが補足してくる。
「ドラゴンは卵から生まれると同時に目にした生き物を自身の親だと認識することが稀にあるのです。まぁアイデンティティが確立するまでの数ヶ月の間ではありますが……」
「つまり……」
これは……。
「一時的なインプリンティング?」
「そうとってもらって構わないかと」
ブラックドラゴンは頷く。
「じゃあ僕は七色竜王のパパになったわけ?」
「そういうことになりますね」
ブラックドラゴンはどこまでも実直だった。
「パパ! パパ! 遊ぼ?」
ウーニャーは僕にそう問いかける。
「どうすればいいの?」
僕がブラックドラゴンに問いかけると、
「竜王会議に出席してください。そこでウーニャー様の処遇を決定します」
そう返された。
やれやれ。
竜王会議とやらに顔を出さねばならないらしい。
ま、いいんだけどさ。
そしてドラゴンミートのベーコンを食べながら竜王谷を北上する僕たちだった。