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竜の国12

 次の日。


 僕たちは宿をチェックアウトして竜王谷を北上する。


 さすがに竜の遺体は高く売れるらしく、そこかしこで人間たちが快活良く声を張り上げて商売をしていた。


 僕は薬効煙をプカプカ。


 一つの薬効煙を吸い終えて、


「火を以て命ず。ファイヤー」


 と魔術を起こす。


 宣言通りに炎が生まれ薬効煙をかき消した。


 市場で売られているのはヤギのミルクや肉……などはまだ良いとしてもドラゴンの干し肉や鱗を加工したものまで売られている。


「ドラゴンに対する冒涜にならないの?」


 僕がそう問うと、


「頭部を清め墓に埋めて肉体は人間に活用されるということが竜王会議にて決着してますから」


 フォトンはそう言う。


 さらに続ける。


「そも、そうでなければ昨夜のドラゴンの肉など食せないでしょう?」


 そりゃそうだけどさ。


「まぁ確かに美味しかったけどさ。ドラゴンの肉」


「まぁ死んだ者は死んだ者です。死人に口無し。ならば有効活用しても文句など出ないと思われます」


「死人に口無しってこっちの世界にもあるんだ」


「そちらの世界にもあるんですか?」


「あるよー」


「何かしらマサムネ様の世界とこちらの世界はリンクしているみたいですね……」


「そうだねー」


 僕にしてみれば、


「当然だろう」


 という気持ちでいっぱいなんだけど。


 とまれ、簡素に頷いて、僕は想像創造をして、薬効煙を作りだして、さらなる魔術で薬効煙に火をつける。


 そして火のついた薬効煙を嗜む僕。


 そんな僕に、


「おい、兄ちゃん」


 と門前市の商人の一人が声をかけてきた。


 僕は吸った煙をフーッと吐くと、


「何でしょう?」


 と問うた。


「それは紙巻きタバコか? それにしちゃ凄いクオリティのようだが……」


「タバコじゃありませんよ。薬です。鎮静効果を持った……ね」


「一ダース譲ってくれんか。なに、タダで寄越せなんて言わねえ。ドラゴンミートのベーコンをかわりに譲ろう」


 まぁ構わないけどね。


 僕は想像創造の後に世界宣言をする。


「木を以て命ず。薬効煙」


 宣言に合わせて一箱分の薬効煙が生まれる。


 小さな箱には十二本の薬効煙が詰められているのだった。


「ほい」


 と僕は薬効煙の入った箱を商人に投げて渡す。


「ありがとさん。かわりに焼きたてのドラゴン印のベーコンをくれてやろう。そっちの可愛い嬢ちゃんたちもどうだい?」


 そう言って熱した鉄板でドラゴンミートのベーコンを焼く商人。


「「「いただきます」」」


 とかしまし娘。


 僕は煙をプカプカ。


 その間にも商人は鉄板でベーコンを焼いて串に刺すと、僕たちに振る舞った。


 僕たちはソレを受け取って食す。


 さすがにベーコンとはいえドラゴンミート。


 その味は想像を絶するものだった。


「……っ」


 僕はいい塩梅に仕上がったドラゴンミートのベーコンを食べて絶句する。


 商人はといえば熱した鉄板の炎の元に薬効煙を突き出して火を点け、そして煙をスーッと吸ってフーッと吐く。


「うむ。美味い」


 それは重畳……。


 ちなみにこっちのベーコンも美味いです。


 そんな風に思っていると、


「…………」


 僕たちの居る谷を挟んでいる山の一角から巨大な卵状の物体が転がり落ちてくるのが、僕のオーラが感じ取っていた。


 一応カロリー消費を抑えるために半径一キロメートルにオーラを押さえているけど、その範囲であれば僕は感知を可能とする。


 そして急激な傾斜角の岩肌から転がり落ちてくるのが卵だということを僕は悟る。


 卵の殻は相当硬いのか山の壁面を転がり落ちてもなお傷一つ付かない鉄壁ぶりだった。


 そしてその卵は先の商人が張っていたテントを破壊して、僕目掛けて勢いをつけて転がってくる。


 対して僕はあっさりと勢いのついた卵を片手で押し留めるのだった。


 僕の手に受け入れられた卵は僕が両腕で抱きしめてもまだ足りないほどの大きさを持っていた。


 おそらくドラゴンの卵なんだろう。


 そう思って軽くドラゴンの卵を持ってコンコンと外殻を叩くと、その叩いた外殻に蜘蛛の巣状のヒビが入る。


 そしてそのヒビはパキパキと広がり、中から美少女が飛びだしてきた。


 その少女を何と形容すべきか。


 虹色の瞳に、虹色の髪を持った美少女だった。


 いや、あるいは美幼女とでも云うべきか。


 肉体年齢だけならイナフよりも年下だ。


 おそらく六、七歳くらいの幼女だ。


 そんな幼女は卵の殻から出ると僕を見つめ、キョトンとした後、


「パパ!」


 と僕に抱きついてきた。


 え……ええ?


 僕は困惑することしきりだった。


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