表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/512

竜の国11

 ともあれ人類の醜い部分を聞いた僕だったけど今日宿泊する宿にチェックインしながらフォトンに問うた。


「でも門前市ではドラゴンの肉や鱗が売られていたよね?」


「ですね」


「アレはいいの?」


「ドラゴンの肉はドラゴンミートと呼ばれ、食事をしないドラゴン故に臭みの無い高品質な肉とされています」


「へえ」


「ドラゴンの鱗はドラゴンスケイルと呼ばれ、強固な鎧や盾の素材として高く売りだされます」


「全部人間の手で、だよね?」


「はい」


「ドラゴンに怒られないの?」


 それが心底疑問だった。


「大丈夫です」


 とフォトン。


「竜王谷にいる人間は全て親ドラゴン派ですから」


「親ドラゴン派……」


 そんな派閥があるのか……。


 僕たちはチェックインし終えると、部屋へと案内される。


 四人部屋。


 観光旅行用の宿を選んだのだ。


 この辺は意を汲んでくれる。


 僕は想像創造をすると世界宣言をして薬効煙を生み出し、さらなる魔術で生まれた炎をもって薬効煙に火をつける。


 煙を嗜む僕。


 ああ、落ち着く。


 そんなこんなで薬効煙の鎮静効果に酔いながら僕は言葉を吐き出す。


「親ドラゴン派って何さ?」


「言葉の通りドラゴンに悪い感情を持たない派閥のことです」


「でも親ドラゴン派もドラゴンの肉や鱗を加工して門前市で売ってるんだよね? それって許されるの?」


「可能です」


 フォトンはあっさりと頷いた。


「親ドラゴン派が加工しているのは老衰したドラゴンだけです故」


「…………」


 僕は煙をプカプカ。


「つまり寿命で死んだドラゴンの遺体のみを活用してるってことかな?」


「その考えであっています」


「ふーん」


 僕は煙をスーッと吸う。


 たしかに寿命を迎えて死んだドラゴンならドラゴン狩りにはならないだろう。


「でもそれは死者……ドラゴンだけど……に対して無礼にあたらない?」


「その辺は七竜王も理解して許可を出しているようですよ?」


「…………」


 僕は煙をフーッと吐く。


 同時に部屋の扉がノックされて、


「お客様、食事の時間です。整理が終わり次第ダイニングへとお越しください」


 そんな言葉が聞こえてきた。


 まぁ元々荷物を持っている集団でもない。


 僕とフォトンとツナデとイナフは即刻ダイニングへと場を移動するのだった。


 待っていたのはドラゴンの肉……ドラゴンミートを使った様々な肉料理だった。


 これがまた臭みがなく、歯ごたえ抜群で、肉汁がそそり立つ味だった。


 こっちの世界に来てから様々な肉を食ってきたけど、そのどれもが比較しうる領域に無い……。


 そんな完成された味だった。


 美味しさだけなら世界樹の果実にも匹敵する。


 それほどドラゴンの肉は美味しかったのだ。


「すごいね……これ……」


 食欲をそそる匂いに一皿完食する僕。


 できれば米が欲しいくらいである。


「これも寿命を迎えたドラゴンの肉なの?」


「そうです」


「老齢してなおこの味を保つの?」


「若いドラゴンの肉はもっと美味しいらしいですよ?」


「そりゃドラゴン狩りがおこるわけだ」


 僕は苦笑する他なかった。


 要するに劣化したドラゴンではなく若く瑞々しいドラゴンの肉や鱗が貴重なのだろう。


 そりゃ老衰してこの肉の旨さなら、若いドラゴンの肉たるや想像を絶する。


「ですからドラゴンの肉や鱗は高く買い取られるのです」


 あっさりとフォトン。


「本当に美味しいですね」


 とツナデが言う。


「うまうま」


 とイナフが言う。


 宿の店員が問うてくる。


「今日亡くなられた小竜……リファル様の肉です。いかがでしたでしょうか?」


「「「「美味いです」」」」


 僕たちは遠慮もなく言った。


「では良かったです。亡くなったドラゴンの肉を新鮮そのままに出せる環境はそんなにありませんからね。普通は塩漬けにして干し肉へと変えるのですが、新鮮な内に出せてこちらも僥倖です。リファル様の血肉がお客様の血肉へと変わらんことを祈ります」


 そう言って宿の店員ははにかむのだった。


 親ドラゴン派……寿命を迎えたドラゴンの加工……なるほど……。


「ふむ……」


 僕は思案する。


「つまりこれが人間と竜の共存ってわけ?」


「そう捉えても構わないかと……」


 そんなフォトンの言葉に、


「…………」


 僕は、無言で納得した。


 そしてフォークでドラゴンの肉を刺して口に運ぶ。


 香り高いドラゴンの肉の味が口内に広がった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] え〜、なんか食べたくないな、埋葬してあげたい。それか親しい弟子かなんかに継承する為に食す位がいいなぁ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ