竜の国03
「ええと……ドラゴンさん……こちらがフォトンになります」
僕がそうレッドドラゴンに他己紹介をすると、
「うむ。承った」
レッドドラゴンは長い首を低くして、
「我が名はレイフェル。お会いできて光栄だ。セブンゾール……」
そう謙遜するのだった。
フォトンはそれだけのネームバリューということだろう。
しかして、
「謙遜なさらないでください」
フォトンも謙虚に応じた。
「私も不死身とは言え吹けば飛ぶような人間でしかありません」
クスリと笑うフォトン。
「長年生きたドラゴンに敵う道理はありませんよ」
「…………」
「それで?」
フォトンは本質を切り出した。
「ドラゴンが人間に興味を抱くなんてどういうことです?」
「うむ……」
言い難そうにレッドドラゴンが訝しむ。
もともと爬虫類顔なので悩んでいるのか別種の感情なのかは理解できないけど。
「フォトンを殺す算段ならツナデも乗りますよ」
「イナフも。イナフも」
ツナデとイナフはそう茶化すのだった。
「なんで仲良く出来ないかな……君たちは……」
うんざりと僕。
さらに村人たちはレッドドラゴンと僕たちの邂逅に目を驚かせていた。
ちなみにこれはフォトンの言だけど、
「竜の国には貴族と云う制度はありません」
ということらしい。
「貴族の代わりに選ばれたドラゴンが竜の国の町村を守る役を担います」
とのこと。
つまり、
「貴族に代わってドラゴンがそれぞれの町村を守ってるってこと?」
と僕が問うと、
「そういうことになりますね」
とフォトンは頷くのだった。
閑話休題。
「竜の国の七王は知っているか?」
そんなレッドドラゴンの言葉に、
「「「?」」」
僕とツナデとイナフは首を傾げた。
一人フォトンだけが、
「それは知っていますが……」
と肯定する。
「もしもし?」
僕が尋ねる。
無論フォトンに。
「七王って何?」
そんな僕の問いに、
「まさか……そんなことも知らないのか? そう言えばきさんは異世界から来たなどと言っておったのう」
呆れたようにレッドドラゴン。
そしてフォトンが口を開く。
「竜の国の七王……七竜王は竜王谷にて竜の国を司る七体の竜王のことを指します」
「七体の竜王……」
そこで僕は閃いた。
そしてその閃きをフォトンは上手く汲み取った。
「そうです。七竜王はそれぞれ世界を構築する七つの属性を象徴する竜王たちです」
「木、火、土、金、水、光、闇……!」
「ええ」
コクリとフォトンは頷く。
「それで?」
これもフォトン。
「レッドドラゴンのあなた……レイフェルが竜王の話を持ち出すということは火竜王に何かあったのですか?」
「御明察」
とレッドドラゴンは言った。
「火竜王……フレア様は今生死の間際にあらせられる」
「死んではいないのですか?」
「水竜王のアイスブレスによって死に際で凍らされているのだが……それもどれだけもつか……」
「つまり無限復元で火竜王を正してほしいと?」
「そういうことになるな」
レッドドラゴンが頷く。
「どうだろう? フォトンにおいては火竜王様を助けられるか?」
「可能です」
躊躇いなくフォトン。
「ではその旨を竜王谷に伝えよう」
「構いません」
「うむ。了解した」
そう言うとレッドドラゴンはどこかの空間に向けてか会話をするのだった。
テレパシーの一種なのだろう。
遠くの人間と魔術で会話する技術は既に知っているから驚くこともない。
「そういえばフォトン……」
「何でしょう?」
「国に行くたびに王都によって逐次光の国に報告しなければならないって言ってたけど……この国に王都はあるの?」
「人間の治める王都はありません」
やっぱりか。
「じゃあどうするのさ?」
「いいでしょう別に」
肩をすくめるフォトン。
「たとえライト王が暗殺されたからと云って後継者がいないわけじゃありませんし」
あっさりしてるな~。
まぁいいんだけどさ。