表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/512

光の国02

 僕は眉間を摘まんで思考を加速させる。


 異世界。


 騎士。


 召喚。


 見知らぬ深緑の髪の美少女……フォトン。


 見知らぬ部屋。


「えーと……」


 僕は考えたくない一つの結論を放棄して、


「何のドッキリ?」


 フォトンに問うた。


「どっきりって何です?」


 フォトンはキョトンとしている。


 駄洒落じゃないよ。


 念のため。


 閑話休題。


 僕はキョトンとしているフォトンの表情を見る。


 毛細血管の揺らぎから顔の筋肉の微細な動きまでをも読み取る。


 その上で出した結論は、


「少なくとも君がドッキリの仕掛け人でない事はわかった」


 そういうものだった。


「だからどっきりって何です?」


「悪戯のことだよ」


「ああ、悪戯……」


 フォトンは納得いったと頷いた。


 少なくともフォトンは真剣だ。


 とすればフォトンまで担ぎ上げている人物がいるのか?


 それとも……まさかとは思うけど……いや……それより確実な証明法がある。


 つまり……夢オチ!


「というわけでおやすみなさい」


 僕はそう告げると、僕の鍛え抜かれた体をペタペタと触っているフォトンを無視して再度眠りについた。


「おやすみなさいマサムネ様」


 フォトンは一向に気にしなかったようである。


 まぁ次に目が覚めれば現実世界だ。


 起きなければツナデが起こしてくれるだろう。


 忍の基本技術の一つであるどこでも睡眠をとれる体質を利用して僕は眠りの底へと堕ちていくのだった。


 …………。


 ……………………。


 ………………………………。


 目が覚めた。


 天蓋付きのベッドで僕の体をまさぐっているフォトンを視界に捉えるのだった。


 ちっとも夢からさめなかった。


「…………」


 憮然とする僕と視線が交錯するとフォトンは、


「おや、おはようございます」


 軽くそう言った。


 まだ夢を見続けているのか……。


 いや、これ以上自分を誤魔化すのは不可能だ。


 僕は自らの状況を悟る。


「あのさ……フォトン……」


「何でしょうマサムネ様?」


「これはいったいどういう状況?」


 問う僕に、


「どうと言われましても……」


 困惑するフォトン。


「ん」


 今のは僕の質問が悪かった。


「つまりさ。僕の聞きたいことは……」


 そこでつっかえてしまう。


 だってそれは最悪の状況だ。


 自分が狂っていると言われた方がまだしも理解できる状況だ。


 植物人間になって夢の世界を彷徨っていると言われた方が納得のいく状況だ。


 でも問わずにはいられなかった。


「僕のことを異世界の騎士と言ったよね?」


「言いましたね」


「異世界から召喚したとも言ったよね?」


「言いましたね」


「…………」


 僕は眉間を摘まんで、


「うーん」


 と唸る。


 そんな僕に、


「大丈夫ですかマサムネ様? 何かお辛い事でも?」


 心配げにフォトンは問いかける。


「大丈夫」


 そうとだけ返す。


 状況は最悪だ。


 でも見てみぬふりは出来ないだろう。


「えーと、さ」


「はいな」


「つまりさ」


「はいな」


「まこと恐縮ながら」


「はいな」


「とても受け入れがたいんだけど」


「はいな」


「僕は夢を見てるのかな?」


「まずは現実と夢の境界について定義すべきですね」


「胡蝶の夢ってこと?」


「こちょうのゆめ……?」


 クネリとフォトンは首を傾げる。


 埒が明かない。


 言い切ってしまおう。


「もしかして……僕……異世界に召喚されちゃった?」


「はいな!」


 ニッコリと向日葵のように笑ってフォトンは頷くのだった。


 一番肯定してほしくなかった返答であった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ