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竜の国01

 僕ことマサムネは、


「…………」


 薬効煙をスーッと吸ってフーッと吐いた。


 僕たちが歩いているのは山道。


 樹の国は既に脱した。


 僕たちが今いるのは「竜の国」である。


 ここも樹の国と同じで山岳国家らしく、それ故に僕たちは山道を登っている最中ということだ。


 樹の国との違いがあるとすれば竜の国は単純な山であって、木々の全てに美味な果実をならせていない……どこまでも普通の山であるということだろう。


 まぁフォトンとツナデの持っている、闇魔法によって異世界に繋がっている皮袋……四次元ポケットには食料の備蓄があるから飢えて死ぬことはないだろうけど、頼ってばかりもいられない。


 というわけで僕は川が見えたら魚を釣ることにしていた。


 動物性たんぱく質は貴重だ。


 干し肉もあるにはあるけど新鮮さは必要な要素である。


 そんなこんなで山道を歩いているところで川のせせらぎを聞くと同時にそちらに向かって歩き、魚を釣り、焼き、川べりで焼き魚を食べる僕たちだった。


 そんな僕たちは悪意に包囲された。


 山賊……ではない。


 ゴブリンだ。


 亜人の一種。


 いかにも悪人面で鼻が長く下顎の犬歯が口から飛び出ている。


 身に纏うのは腰蓑一枚。


 手に持つは鉈。


 そして、


「グルル……!」


 と威嚇するように喉を鳴らす。


 計五体。


 こっちも四人だから決して不利な状況ではない。


「…………」


 僕は気にせず魚を食べる。


 ゴブリン。


 先に言ったように亜人の一種だ。


 ただし知能は無いに等しく衝動的に人を襲う。


 主食は肉。


 ちなみにこの肉には人肉も含まれる。


 つまり僕たちを食料とみて襲ってきたのだろう。


 人肉が美味しいと聞いたことはないけど……相手はモンスターだ。


 常識など通じまい。


 ゲームと違うのは経験値や金銭を得られないというところか。


 さてどうする?


 僕が思案すると、


「お兄ちゃんとお姉ちゃんは食事を続けてて」


 イナフが可愛らしい声でそう言って、焼き魚を食べ終わると、


「イナフが片付けるから」


 魚に貫いていた串を地面に突き刺して、腰から短刀を抜いた。


「手伝おうか?」


 僕がそう言うと、


「ううん。一人で十分だよ」


 イナフはあっさりと拒否して、


「っ!」


 疾風となった。


 疾駆するイナフ目掛けて、


「ゲギャア!」


 と吼えて鉈を振るうゴブリンの一体。


「ふっ!」


 と独特の呼吸を発したイナフは、鉈を短刀で受け止めて、ゴブリンの足を払う。


 倒れ込んだゴブリンの心臓に短刀を突き刺す。


 血飛沫があがる。


 そういうわけで五体の中の一体のゴブリンが死んだのだった。


 驚愕したゴブリンが二体。


 殺気を纏ったゴブリンが二体。


 後者のゴブリンがイナフ目掛けて襲い掛かってきた。


 僕は黙々と焼き魚を食べる。


「ギギャア!」


「ゲギャア!」


 手に持った鉈を振るってイナフに襲い掛かるゴブリン二体だったけど、幼女とはいえ鍛え上げられたイナフのセンスの前には沈黙せざるをえなかった。


 前後を挟んだゴブリン二体が水平に鉈を振るう。


 逃げ場は上か下か。


 あるいは短刀で受けるか。


 そんなところだろう。


 イナフは下を選んだ。


 地面ギリギリまで地に伏せて鉈を避けると同時に、跳ね上がって鉈に身を振るわせて隙だらけのゴブリンの一体の喉を短刀でかき切った。


「……っ!」


 悲鳴も出せずに崩れ落ちるゴブリンの一体。


 そしてイナフはそこでは留まらず、動揺したゴブリン一体目掛けて短刀を振るう。


 雲耀にも等しい速度で短刀を振るい、ゴブリンの目と喉とをかき切る。


「「…………!」」


 恐怖に支配された残りの二体のゴブリンは逃げを選んだ。


 正しい判断だ。


 だが遅きに失した。


 イナフはオーラを広げて両手で印を結ぶと術名を発した。


「その身を焼け」


 そしてエルフ魔術……遁術が発動する。


「「ゲギャアアアアアアアアアアアアアアッ!」」


 と悲鳴を上げて幻覚の炎……幻覚の熱……幻覚の苦痛を一身に受けてショック死するゴブリンたちだった。


「へえ……」


「やりますね」


 イナフの戦闘能力をフォトンとツナデは高く評価するのだった。


 まぁこれなら足手纏いにはならないだろう。


 それには僕も同意見だった。


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