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樹の国14

 僕は薬効煙をスーッと吸って煙をフーッと吐く。


 いい天気だった。


 場所は樹の国の頂上へと至る川のへり。


 時間は昼頃。


 結局あの後王城で一泊した後、朝早く発った僕たちだった。


 で頂上へ向かう山道の途中。


 僕は魚が食べたくなって川に釣り糸を垂らしているというわけだ。


 そして同時に直径四メートルの範囲でオーラの拡大と縮小を繰り返していた。


 何故って?


 無論オーラの訓練である。


 僕ではなくフォトンにとってのね。


「…………」


 しばらく無言で釣りを楽しみながら、同時にフォトンの無意識に向かってオーラをあてる僕。


 しばらくすると反応はやってきた。


「うう……気持ち悪いです……」


 オーラ酔いだ。


 フォトンは川辺の大きな石の一つに背中を預けて、顔を青くしていた。


 ちなみにその石の頂上に僕はあぐらをかいている。


 煙をプカプカ。


 それからいい加減短くなった薬効煙を火の魔術で滅却する。


「だんだんオーラ酔いの感覚が短くなってきてるね」


「いいことなんですか?」


「そりゃまぁオーラを知覚しようとするように脳が動いている証拠だから」


「いまいち先に進んでいる気がしないんですが……」


「千里の道も一歩から」


 そして僕は想像創造をしてイメージを確定させると、


「木を以て命ず。薬効煙」


 と世界宣言をして薬効煙を生み出す。


 それを口にくわえて、さらに魔術で炎を生み出す。


 その炎で薬効煙に火をつける。


 煙を嗜む僕。


 と、


「お兄様♪」


 猫なで声でツナデが僕に寄り添ってきた。


 ツナデは山風にしっとりとした黒く長い髪を流しながら僕の肩に頭部を乗っける。


「ツナデは甘えん坊だね」


「はいな」


 否定しないツナデ。


「ツナデはお兄様に甘えるために生まれてきたんですから」


「義父が泣くよ」


「父や兄のような血統がどうのなんてしがらみに捉われた時代遅れの朴念仁の言葉なんてツナデには通用しません」


「まさかツナデまでこっちにくるとはね」


「朝起きたらいきなりお兄様が行方不明になったんですよ? ツナデがどれほど狼狽したかお兄様にわかりますか?」


「わからない」


 正直な僕だった。


「それで何の用?」


「お兄様に魔術を教わりたくて」


「理論だけならフォトンの方が詳しいよ?」


「フォトンは嫌いです」


 なんだかなぁ……。


「ま、僕の知る範囲でなら教えてもいいけどさ」


「お願いします、お兄様」


 僕は煙をプカプカ。


 それから僕は僕の知る限りをツナデに教えた。


 こっちの世界は七つの属性で成り立っていること。


 想像創造という自己暗示や催眠にも似た……強烈にして確固たるイメージが必要不可欠なこと。


 そして世界を管理する神……デミウルゴスに対してこうこうこういう魔術を使いますよという世界宣言が必要なこと。


 それらを伝えると、


「ふーん」


 と了解したのかどうなのかわからない答えを返すツナデだった。


「何かお兄様が魔術を使ってくださいませんか?」


 と言われたので僕は想像創造をして、


「木を以て命ず。薬効煙」


 と加当の家に伝わる煙薬を生み出した。


「向こうの世界の品も具現化できるんですね」


 とはツナデの言。


 そして薬効煙をツナデに渡すと僕とツナデはくわえた薬効煙の先をくっつけあって、ツナデのくわえた薬効煙に火をつける。


 ツナデは煙をスーッと吸ってフーッと吐いた。


「でも七つの属性で世界が出来ていて……それによって向こうの世界の産物を創り出せるというのなら……」


 というのなら?


「こういうことも出来るわけですよね?」


 そう言ってツナデは目をつむる。


 想像創造をしているのだろう。


 そして世界宣言。


「我は火と金を以て世界に命ずる。コルトガバメント」


 そしてツナデはその手にコルトガバメントを創りだすのだった。


「……っ!」


 僕は絶句した。


 せざるをえないだろう。


 拳銃をこちらの世界に生み出したのだから……!


 それがどれほどのことか理解していないツナデは、


「ふーん。本当に想像と宣言だけで突拍子もない現象を起こせるんですか。光の国の要塞都市の四分の一がフォトンによって吹っ飛ばされたというのもあながち誇張と云うわけでもなさそうですね」


 そんな風に呟く。


 僕は釣り針に魚が引っ掛かっているのも忘れてツナデの創りだした拳銃……コルトガバメントを凝視する。

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