樹の国06
そしてまた村を出て僕とフォトンはえっちらおっちら樹の国の山道を登っていた。
その間にもオーラの拡大縮小を繰り返してフォトンにオーラの感覚を教える。
いまだにオーラを見ることは出来ないみたいだけど……まぁ一朝一夕で覚えられてはこっちがたまらないからいいんだけどさ。
「酔いました」
とフォトンが言ったので僕とフォトンは休憩することにした。
すぐ近くからせせらぎが聞こえてきたということは川があるのだろう。
「フォトン」
「何でしょう?」
「近くに川があるからそこで休憩としよう」
「はい。私は構いません」
そんなこんなで山道から少しそれて川べりで休憩する僕とフォトンだった。
「何か果実でも食べる? なんならとるけど?」
僕がそう提案すると、
「いえ、食欲がありませんので……」
緩やかに拒否された。
誰のせいって僕のせいなんだけどさ。
僕はといえば、
「そっか」
とだけ言って川べりの大きな岩の一つに腰を下ろす。
それから想像創造をして、
「木を以て命ず。薬効煙」
と世界宣言をして、また想像創造をすると、
「火を以て命ず。ファイヤー」
と世界宣言をして、薬効煙に火をつける。
煙をプカプカ。
ああ、落ち着く。
「マサムネ様。タバコはおよしください。体に悪いですよ?」
「ああ、これ、タバコじゃないから」
それから薬効煙がいかなるものかを説明すると、
「そんなものが……」
唖然とフォトンは言った。
「うん。まぁ。毒とか薬も忍の道の一つだから」
僕はそう結論付けるのだった。
それからしばし、僕とフォトンは黙って川の歌声を聴いて過ごした。
幾分経ったろう。
オーラ酔いから完全にさめたフォトンが、
「もう大丈夫ですよ」
と言った。
「ん」
と僕は頷く。
煙を吸って吐くと、僕はフォトンにお願いする。
「フォトン……釣り具出して」
「構いませんが……魚でも食べるんですか?」
「たまには味に変化をつけたいしね」
ちなみに宿が無い場合の僕とフォトンの主食はパンと干し肉、それから樹の国の木々になっている果実だけである。
たまには川魚を食べても罰は当たるまい。
フォトンは小さな皮袋からどう考えても入りきらないだろう釣り具を取り出してみせた。
「相も変わらず無茶苦茶な……」
そう言う他ない。
川べりの石の下から虫を捕まえて針に刺して川へと放り込む。
魚が食いついてくるのを待ちながら僕は言った。
「その四次元ポケットだけどさ……」
「四次元ポケット?」
クネリと首を傾げるフォトン。
「その何でも入る皮袋……」
「ああ……!」
「一体全体どういう理屈? いや、まぁ異世界に繋がるだの闇魔術だのは聞いているんだけどさ……」
「言葉の通りですよ。この皮袋自体には何も入ってはいません。ただ異世界に通じているというだけで」
「異世界……ね」
なんじゃらほい。
「それ……フォトンの魔術?」
「いえ、空洞の魔術師が魔術で作ったマジックアイテムです。空洞のが光の国に寄った際に買い取った品でして」
「ふーん。ちなみにいくら?」
「金貨二十枚です」
「高いのか安いのか一概に判断しかねるなぁ……」
僕は煙をプカプカ。
同時に釣竿に手応え。
僕はピッと釣竿を引っ張った。
川魚が一匹釣れるのだった。
あともう一匹釣るべきだろう。
僕は虫をまた釣り針に刺すと川へと放り投げた。
「つまり無制限に何でも入る異世界……異空間とリンクした皮袋というわけか」
「はい。闇魔術です」
「闇魔術が空間を操るものだってのは聞いているけど……なんだかなぁ」
「マサムネ様の世界には魔術が無いんでしたね……そういえば。突拍子もない話に聞こえてしまうのでしょうか?」
「まぁね」
釣竿に手応え。
僕はピッと釣竿を持ち上げる。
これで魚は二匹。
ちょうど二人分だ。
「じゃ、食べよっか」
そう言って周囲から木の枝を拾って魔術で火をつける僕。
それから魚を炎で焼く。
フォトンと二人そろって魚が焼けるのを待っていると、
「……っ!」
僕とフォトンはオーラに取り込まれた。
「何だ……!」
何が起こっている?
僕以外にもオーラを使える人間がいる?
ありえない話ではないけど……遁術の知識もないような世界で一体誰が……!