表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忍術師と魔術師の異世界観光日和  作者: 揚羽常時
ブレインイーター
511/512

ブレインイーターは乙女を喰らう14


 ――ホテルの部屋でゴーレムが造れるか?


 超質量を造れば床が抜ける。


 一種の命題だけど、あまり悲観的にもなれない。


「それが何を意味するのか……はまぁこの際自分の問題として、さてツヅラの供養は一体全体どうしたものか?」


 ふむ、と悩む。


 結果だけ語れば滅ぼすんだけど、皆菱の父親にどう説明すべきかも……まるで宿題のようではあった。


 ヒュンと鋼糸が空間を切り裂く。


「さすが」


 あっちもある程度見切っているらしい。


 絡め取ってグイと引っ張る。


「フィクシング」


 こっちの防御を真似された。


「中々に器用な奴ですな」


「パウダーフィールド」


 次の瞬間、ホテル内が爆ぜた。


 あくまで結界の中で。


「さて……」


 灼光に目を細めながら、僕は次なる魔術を繰り出す。


「空間破却」


 ホテル外に出た……それも地面に高度を合わせて。


「あーあ。鋼糸が……。これ高いんだけど……」


 普通なら無敵だけど、相手方が熱を操るのは、まぁ自然。


 金属と言えど細い糸なので、高熱を浴びせれば溶けてしまう。


 そのためのパウダーフィールドなのだろう。


 ――なるほど対策は立ててきたわけだ。


 嘆息。


 ブレインイーターの方も、ホテルを飛び出した。


 パウダーフィールドで破れた窓ガラスから、夜気冷える空中に身を置く。


 これで墜落死してくれれば御の字だけど、流石にソレは楽観論。


「ウィンドブラスト」


 爆風が発生した。


 それが自身……この場合のブレインイーターに向かって爆ぜたモノだから、落下速度は中和され、無事地面に着地する。


「パンツ見えたよ?」


「あら。光栄ですわ」


 ブレインイーターはツヅラのアイデンティティを活用するらしい。


「ま、これでヒフティヒフティか」


「何がですの?」


「一人一般人だったからね。ツヅラは。これで全員揃って人外と言えるわけだ。中々に人外魔境と相成ったね」


「マサムネは自分を人外だと?」


「ちょっとしたコンプレックスでね」


 殊更自慢にもならない弱み……コンプレックスとはそう云う意味だ。


「わたくしと同化しませんこと?」


「却下。レゾンデートルは別にある」


「例えば?」


「此処で教えても意味ないし」


 飄々応えて、想像創造。


「ウィンドブレイド」


「メタルゴーレム召喚」


 金属塊が風の斬撃を差し止める。


「空間破却」


「パウダーフィールド」


 全方位への攻撃。


 たしかに…………この未来対処は厄介だ。


「フォーリンウォーター」


 滝の如き大質量の水を生みだして、叩きつける。


 ここでチェックメイト。


「この――!」


「アイシクルフィールド」


 叩きつけられた水が凍る。


 春には辛い冷気だ。


「超振動超高熱刀」


「わたくしを殺すんですの?」


 下半身が凍り漬けになったブレインイーター……ツヅラが心の悲鳴をあげる。


 それは傾聴に値したけど、やることは変わらない。


「二度も殺されるんですの? そんなにもこの世界は地獄だったんですの? 全ての生存が許されないままに?」


「だから生命は発展してきた」


「マサムネに同情の気持ちはないんですの? たとえこの身がブレインイーターだとしても、今この人格はツヅラなんですのよ?」


「知ってる」


 殊更再確認することでもない。


「別にツヅラを何とも思っていないわけじゃない。ブレインイーターを悪だと断じるほどでもない。殺す理由は……そんなに無いかもね?」


「では何故!」


「僕さえ襲わなければ無事に済んだはずなんだよ。カノンは敵に回したろうけど、少なくとも僕を敵に回すことはなかった」


「神在月がそんなに大切ですの?」


「カノンはね」


 僕は別段なんともはや。


「さて何人の人格を取り込んだのやら。想像も付かないけど、在る意味で人格の保存にはうってつけだよね」


 しかも寿命無き怪物と来る。


「人格保存はお手の物。私はソレだからね」


 こんどは少女の人格になった。


 市立図書館で出会ったままの。


「マサムネは本当にドライだね」


「まさか。僕ほどの人情家はいないよ?」


「そういうところが」


「皮肉にも相当する……か。何か言い残すことは?」


「恋していますわ。マサムネ。コレは本当に」


「だろうね。ツヅラを完全に再現したなら、その気持ちも真なりし」


 パン、と空気が爆ぜた。


 不可避の死刑執行。


 ブレインイーターの首が横一文字に切り裂かれた。


「容赦ないですわね」


「まぁね」


 そして首から落ちた頭部を更に超振動超高熱刀で切り裂く。


 あらゆる異能を獲得しているのだ。


 首だけから再生されても厄介なので、脳も焼き切っておくべきだった。


「これで給料が入る……ね」


 とりあえずは神在月への手土産には為ったわけだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ