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樹の国05

「それで……」


 とフォトンは問う。


 ちなみに場所は浴室。


 火遁の術は既に解いてある。


 僕とフォトンは風呂場にて水着同士で座りあっていた。


 閑話休題。


「どうすればこんなことが可能なのですか?」


「ぶっちゃければ洗脳だね」


 僕はぶっちゃけた。


「洗脳?」


「洗脳」


 フォトンの疑問に頷いてみせる僕。


「生命にはそれを維持するエネルギーが存在するんだ。それを広げて自身の感覚を延長するのが遁術の基本なんだよ」


「?」


 首を傾げるフォトン。


 いいさ。


 わかってる。


 説明不足なことも突拍子もないことも。


 そして僕は、


「…………」


 イメージを固めて想像創造をし、


「木を以て命ず。薬効煙」


 と薬効煙を魔術で創りだす。


 それから同じく魔術で火をつけて薬効煙を吸う。


 フーッと煙を吐き出すと、


「要するにオーラで相手の五感を狂わせる技術をもって遁術とするのさ」


 そう説明する。


「オーラ?」


「そ。オーラ」


 フォトンの問いに頷く僕。


「生命の根源たるオーラを用いて、そのオーラを広げて相手のオーラに干渉し、幻覚を覚えさせるのが遁術なんだ」


「まるでわからないんですけど」


 クネリと首を傾げるフォトン。


 僕は薬効煙をプカプカと。


 それからフォトンを見据え、


「あー……つまりね。人の意識であるオーラを用いて他者の意識たる感覚にイメージを刷り込むってこと……かな?」


「意識って……」


「自分で言ってて胡散臭いけど事実は否定しようがないね」


 それから僕はオーラを浴室全体に拡張させては収縮し、収縮させては拡張した。


「……っ!」


 それだけでフォトンは気分を悪くした。


「なん……です……!」


 フォトンは呻く。


「この感覚は……!」


「オーラ酔いだよ」


 僕は簡潔に言う。


「オーラ酔い?」


 疑問を呈するフォトンに首肯する僕。


「オーラは生命であれば誰しも持っている能力なんだ。まぁそれを広げたり縮めたりできるのは遁術を使える者だけなんだけどね」


 僕は風呂に浸かったまま肩をすくめる。


「でもオーラは誰もが無意識に感じ取れるモノだ。それを認識の範囲外で知覚しているフォトンはオーラ酔いを起こしたってわけ」


「意味がわかりませんが……」


「誰しも無意識を信じて疑わないのに無意識を根拠としない。故にフォトンは知識はなくとも認識が僕のオーラを覚える。そしてそれを連続して受け続ければオーラ酔いも起こすってわけだね。知覚しなくとも認識する……それがオーラの本質だから。つまりオーラの認識を知覚に変えられれば遁術を修得したも同然だ」


「オーラ……」


「そ」


 頷いてみせる。


「もしもフォトンがオーラに目覚めたなら僕のオーラを見ることが叶うはずだよ」


「そしてそのオーラを用いて他者のオーラに干渉することで濃密な幻覚を見せると……そういうことですか?」


「うん。物わかりが良いじゃないか」


「私にもその忍術……遁術は使えますか?」


「可能だよ~」


 薬効煙を吸う。


「要するにオーラの何たるかを確認できれば誰でも使えるからね」


「そのオーラとやらがわからないんですけど……」


「それは地道な訓練が必要だね。要するにオーラを感じ取れれば誰でも遁術を使えるんだから……」


「出来るのでしょうか?」


「無論。オーラ酔いを起こしたってことはフォトンがオーラに感応したってことだから」


 頷いてみせる。


「一日に一回こうやってオーラ酔いを経験しよう。そうすれば自然に覚えるはずだから」


「了解しました」


 フォトンは首肯する。


「しかしてオーラ酔いだけで忍術を……遁術を覚えられるのでしょうか?」


「さっきも言ったけど可能だとは思うよ?」


 何せこっちの世界でも使えるのだ。


「フォトンならすぐに覚えられるはずだよ。オーラ酔いは感覚の鋭敏な人ほどなりやすいって言うしね」


「ではオーラを使った洗脳術を私も使えると……」


「そういうことだね」


 頷く僕。


「ふぅむ……」


 と訝しげなフォトンに、


「大丈夫だよ。誰しもオーラは持っているから要は勘所を知ればいいだけの話だし」


 僕はフォローしてみせる。


「マサムネ様がそう仰るならその通りなのでしょうけど……」


 不安をない混ぜた声でフォトンが述べる。


「ま、魔術と違って気楽に覚えられる分には大差があるから大丈夫だよ」


 僕はニッコリと笑ってみせる。

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