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忍術師と魔術師の異世界観光日和  作者: 揚羽常時
ブレインイーター
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ブレインイーターは乙女を喰らう12


 今日のお風呂はジャンヌと入った。


 精神的なケアが必要だと感じたからだ。


「申し訳ありません……は却下だよジャンヌ」


「そう……ですか」


 居心地悪そうなジャンヌさん。


「別段責めてないから。相手方の結界操作が上手だっただけ。ソレについてはカノンも言ってたでしょ? それに今は無事息災で居るんだからこれ以上を望むと天罰たちどころに下るってもんだよ?」


「はい」


「ジャンヌなら此度の魔導災害は殺せる?」


「可能だと思います」


「その如何は?」


「不浄を滅するのが浄火の炎ですので」


「論拠としては足りるね」


「畏れ多いことながら」


「そもそもその不浄の定義は何だろう?」


「魔族や悪人……魔導災害では?」


「魔族はこの際論じないとして。魔導災害は不浄と言えるかもね。でも悪人って? 何を根拠に善人と差別するの?」


「それは……なんでしょう?」


「ここにエゴイズムが入る余地が在るんじゃない?」


「と、言いますと?」


 クネリと首を傾げるジャンヌ。


 水着姿は目に毒だ。


 パイオツを揉んでみたいです……正味な話。


 温かい風呂の湯の中で……僕は憂き世の垢を流して落とし、明日からの活力のために熱を取り入れる。


「ジャンヌの不浄の浄化なら、たしかにブレインイーターは滅ぼせる。けれどもブレインイーターは悪だろうか?」


「悪じゃなくて何ですか?」


「単純に物を食べる点で、人間もブレインイーターも変わらない。相手が家畜か人間かの違いなだけで。そう見ると、あながちブレインイーターは悪とは判じがたい。そもそも物を食べるのは生物の根幹。違うのは植物くらいか。その意味でジャンヌの浄火はあまりにもエゴイスト過ぎる。自分が悪だと断じたモノを一切の区別無く燃やし尽くしてしまう。そんな能力に正義はあるかい?」


「ソレを言われると」


「でしょ?」


 困ったような顔のジャンヌがひたすら可愛い。


「別に責めてるわけじゃ無いんだ。善悪は水物だから、何が正解もないしね。その意味では、むしろ個人の意思に仮託するジャンヌの能力は本質を突いているともとれる。要するに誰にとっての正義かを自分で判断するんだから。誰の情報にも惑わされないで、不浄を決める。それはとても希少な才能だ」


「えへへ」


 褒められた……と受け取ったらしい。


 実際その通りだけども。


「けれどブレインイーターは捕捉出来ません」


「それはこっちの管轄かな? 相手方が僕を狙っている以上、それなりに思案は巡らすでしょうよ。であれば最終的に僕が決着を付けることになる」


「マサムネ様はソレで宜しいので?」


「神在月から給料を貰うなら十分見返りはあるはずだけど?」


「そういう意味では……」


 知ってる。


「ま、別段死にたいわけでも無いし、気もそぞろにやってのけるよ。今のところ他にやることもないしね」


「高認は?」


「そっちも並列で」


「マサムネ様は凄いですね」


「はっはっは」


 笑うほか無い。


 なんにせよ、ブレインイーターに関しては僕だけの責任だ。


 カノンの結界があるからこの屋敷は安全だけど。


「マサムネ様はブレませんね」


「この程度は幾らでもあったしね。僕より不幸な人間なんて数え切れないほどいるし。むしろハーレム造っている以上、コレで不幸だと言えば刺されるよ」


「私のことも憎からず?」


「そりゃジャンヌは魅力的な女の子だし」


「じゃあいたしましょう」


「フォトンとツナデに刺されるよ?」


「それなんですよねぇ」


 ――困った。


 表情でジャンヌはそう述べる。


 そんなジャンヌを抱きしめる。


「ふえ……? マサムネ様?」


「ジャンヌは可愛い。その謙虚な姿勢や、軽挙を排する態度が」


「他に取り柄がありませんもので……」


「だから可愛い」


 ギュッと。


 僕は抱きしめる。


「止めてくださいマサムネ様。変な気分になってきます」


「具体的には?」


「えと……あう……」


「発情する?」


「……………………です」


「ん。良いこと良いこと」


 僕は失笑した。


「マサムネ様は意地悪です」


「それが僕だしね。幻滅するなら幾らでもして良いよ。僕に囚われることこそ、在る意味で可能性の排除に相違ないから」


「無理です」


 そう云うよね。


 わかりきってることだけど。


「こんな役立たずを傍に置いていいんですか?」


「それを決めるのは僕の意思だよ」


「でも結界に取り込まれれば実質的に役立たず」


「だから。それはジャンヌの責任じゃない」


 どうにも惚れた弱みと言う奴か。


「ジャンヌの事は嫌いになれないよ」


「本当に?」


 主人に捨てられる小動物の様な儚い声だった。


「大丈夫。ハーレムは続くから」


 大凡最低とも言える持論で、僕は応えた。


 正に外道。


「マサムネ様はよく卑下しますよね。それも自分のためではなく、乙女たちのために。それが魅力的ではありますれば、私もまた誘蛾のソレなのでしょう。気持ちはありがたく……けれども、それでもマサムネ様の一番になりたいです」


 良い趣味をしておいでで。


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