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忍術師と魔術師の異世界観光日和  作者: 揚羽常時
ブレインイーター
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ブレインイーターは乙女を喰らう11


「ツヅラが帰ってこない?」


 夕餉のこと。


 僕はそんな連絡を聞いた。


 なんでもツナデにラインでコメントを残したらしい。


『今日は帰って来られません』


 なんて事情を。


 実際にツヅラは皆菱の御令嬢だ。


 都合の合わない日もあるのだろう。


「それならそれでいいんだけど、なんだからしくないのも事実かなぁ。ていうかなんでツナデに? 僕じゃなくて……」


「さて。どうでしょう?」


 ツナデは電気鍋で湯豆腐の準備をしていた。


「ウーニャー! 良い香り」


「だよねぇ」


 幼女コンビは昆布だしの香りにご執心のよう。


 他のヒロインは調理のためにキッチンへ。


「あの……マサムネ様……」


 ジャンヌは後ろめたさを持っていた。


「気にしなくて良いよ。むしろ付き合いが良い分なだけ感謝の気持ちが強いし。こっちについては僕も素人だ。ジャンヌが咎められることはないよ」


「そう仰っていただけると」


 何のことかと問えば、昼の市立図書館で、僕だけ結界に取り込まれてブレインイーターに襲われたことだ。


 ジャンヌは護衛として僕の傍に居て、なお無力だった。


 けれどソレを責めるのはお門違いで、話としてはブレインイーターに責任は帰結するものでもある……というか他に無い。


 ジャンヌは「フォローできなかった」と嘆くけど、そもそもブレインイーターが襲ってこなければ余計な苦労もせずに済んだはずで……その点を鑑みて、ジャンヌが「まず僕を護衛しなければならない」という状況こそがおかしいのだ。


「だから気にしないで。別に後れを取ることも無いし」


「それは……そうでしょうけど……」


 結界の探知も出来ないしね。


「ちっ」


 と舌打ちしたのはカノンだ。


 栗色の髪が揺れる。


「何か異論でも? あるなら聞くよ?」


「マサムネがお隠れになったら、お姉様を慰めて差し上げますのにぃ……ってなことを考えておりますればぁ」


「率直で良い意見だね」


「そんなわけありませんでしょう」


 半眼でツナデが疎んじた。


「あう……マサムネ……大丈夫……?」


「リリアが居る限り大丈夫だよ」


「戦おっか……?」


「リリアじゃ無理」


「お姉さんは?」


「フィリアなら心丈夫だけど、釣りにならないしなぁ」


 そこら辺がややこしい。


「マサムネ様はおモテになりますものね」


 フォトンがケラケラと笑った。


 こっちもこっちでどうかしている……というと自分が正常のように聞こえるけど、人外魔境は僕も同様だ。


 フォトンの破滅性には及ぶべくもないけど。


「カノンとしてはどう思う?」


「そうですねぇ。チャイルドを増やして物量作戦とかですかぁ?」


「けどブレインイーターも派手な動きは出来ないんですよね?」


「多分保有しているチャイルドは目減りしているはずですよぉ。局所で大量に行方不明者が出れば神秘は神秘足り得ませんしぃ」


「問題はブレインイーターの変態能力だよね」


 あれからオーラで周りを警戒したけど、少女の顔のブレインイーターは捕捉出来なかったのでした。


 無念。


「そうすると」


 夕餉が始まる。


 温豆腐はふはふ。


 要するに何処にブレインイーターが隠れ潜んでいるのかも分からず……なおオーラの展開ですら意味を為さない……つまりこっちとしてどうしても後手後手に回ってしまう……そう云うことなのだろう。


「南無三」


 えのきをモシャリ。


「ウーニャー! ウーニャーが殺そうか?」


「相手方の結界の構築性から考えてちょっと無理臭いけどね。僕個人を狙って隔離できるなら多分あらゆる意味で護衛は無力だよ。ウーニャーの威力は疑っていないけど……こっちのアナザーカウンターを考慮すると、僕らはまだ初心者も同然だ」


「ウーニャー……」


「実際にそうですねぇ」


 シイタケを食べながらカノンが独りごちる。


「さてそうなると」


 この際の防御に関して……あるいは自衛に関して。


「一目惚れで襲われてもなあぁ」


「群集心理があります由」


「ブレインイーター……ね」


 事ほど左様に厄介だ。


「惚れられたって言われてもなぁ。脳味噌囓られるのも趣味じゃないし、自己同一性は持っていたいんだけど、果たしてソレも何処まで……」


「お兄様はお兄様で完結して欲しいです」


 結局それだよね。


 僕も全面的に同意する。


「其処を吟味すると、次なる絡め手は……不意打ちでしょうか? 例えば別人を装ってマサムネ様に襲撃するなり何なり」


「そうかもね。そうなると取り込んだ無数のソフィアが……ここで活きて……くる……わ……け……ど……」


 最悪の想像が、思考を過ぎった。


「どうかしましたか?」


 青ざめた僕の顔をフォトンが覗き込む。


「いや、何でも無いんだけど」


 まず以て、この状況が示唆している。


「とても……そうは……見えない……」


「お姉さんに話してご覧なさい」


「マサムネ様。私も聞きとうございます」


 リリア、フィリア、ジャンヌも心配してくれる。


「有り難いけど却下で」


「ウーニャー? パパ心配事?」


 ウーニャーに関することじゃない。


 そもそも心配せずとも一国と渡り合える戦力だ。


「ウーニャー!」


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