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忍術師と魔術師の異世界観光日和  作者: 揚羽常時
ブレインイーター
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ブレインイーターは乙女を喰らう10


「……………………」


 結界内。


 僕は薬効煙をくわえて、ライターで火を点けた。


「未成年の喫煙はダメだよ?」


「タバコじゃないから大丈夫」


「脱法ハーブ?」


「合法薬物です」


 そりゃ香草の類も使っているけど。


 生産しているのは僕やツナデを含む忍の家系のお得意様で、法的にも認可を得ている職人技の極みだ。


 煙を吸ってフーッと吐く。


「さて、どうしよう?」


「ちょっと四肢をもぐね」


 ――痛くしないって言ってなかった?


「断ち斬れ風よ」


「フィクシング」


 風の刃が僕を襲う。


 僕は体表面の分子運動を固定して、エネルギーの伝播を防ぐ。


 代わりに動けなくなるのが困りものだけど、大凡の魔術はコレで防げる。


「空間破却」


 空間破壊性結果論転移。


 一瞬で、ブレインイーターの背後を取った。


「超振動超高熱刀」


 超高速で振動し熱波を放つ野太刀が、僕の手に握られる。


 振る。


 寸前で避けられた。


「空間転移? 可能なの?」


 え?


 むしろ可能じゃないの?


 向こうでは結構使ってたけど…………。


 脚から床に衝撃を送り込む。


 反作用が発破した。


 爆発的に加速すると、野太刀を振るう。


 在る意味で質量的には防げない刀だ。


「チャイルド!」


 本棚の間に隠れていたチャイルドがこっちに襲いかかる。


「減点対象だね」


 僕としては。


 本気で襲う気があるのなら、まず連携を想定すべきだった。


 間合いを取るためだけに使い潰すんじゃ、さすがにチャイルドが哀れすぎる。


「――――――――」


 二体のアンデッドは金属でコーティングされていた。


 これはオーラで知覚した通り。


 けれどあまり意味も無いかな。


 野太刀で容易く切り裂く。


 一体目を腰で上下に分割する。


 二体目を捉えたときに、言霊解放が聞こえてきた。


「メタルゴーレム召喚!」


 地面から金属の流体が湧き出てきて、五体の全長二十メートルのメタルゴーレムが現われる。


「市立図書館にはた迷惑な……」


 先にファイヤーボールを撃った僕が言うことでも無いけど。


 煙を吸って興奮を落ち着かせる。


 既に二体目のチャイルドは切り裂かれていた。


 けれど敵の数量としてはむしろ増えた。


 二十メートルの金属塊。


 野太刀で切り裂けるけど、あくまで野太刀の刀身分だけだ。


「しょうがないか。消えろ」


 野太刀を霧散させる。


 こうなると威力が全てだ。


「――――――――」


 人声ではない咆哮を上げてメタルゴーレムが拳を振り下ろす。


 しかし如何せん致命的に遅い。


 躱すのは余裕だ。


 ところでエメスって記号は入ってるんだろうか?


 少し気になった。


「ウォータージェット」


 金属生命を金属塊に変える。


「それがあったね。マサムネには」


「恐悦至極」


「神在月じゃないはずだよね?」


「一応資本元と仰ぐことになるらしいけど、今のところ契約はしてないかな?」


「なんか魔術に小慣れてない?」


 世界同一仮説。


 異界反動アナザーカウンター


 それが基準世界での魔術の根幹なら、たしかに小慣れてはいるよね……異世界そのものズバリに居たわけだし。


 瞬く間にゴーレムの数が減っていく。


 その都度ゴーレムの数が増えていく。


 空間破却は使えない。


 一回で見切られたなら、二回目も相応に対処されるだろう。


「とはいえゴーレム相手に遊んでいても生産性はないしなぁ……。はたしていったいどうしたものか?」


 ウォータージェットを撃ちながら、のんびりと自己分析。


「あー……」


 不毛なのは相手方も一緒なのだろう。


 僕単体でここまで戦えるとは思われなかったらしい。


 たしかに穏便ではあり申しましょうぞ。


 リミッターも外してないしね。


「やめ」


 ゴーレムを相手にしている僕に、そんな観念の言葉が聞こえてきた。


「とりあえず引くよ。マサムネ。君を追い詰めるにはカードが足りない」


「こっちも似たようなもんだけど」


「じゃ消耗戦だね。此処は痛み分けで」


「次回、こうご期待……かな」


「きっとその脳を食べてあげるから。そうして私の一目惚れは成就する。そうなって初めて私の良さにマサムネも気付くよ」


「要熟考」


 神も仏も在るモノか……。


「あまりソフィアの並列化には否定的な立場でして……。ダメとは言いたかないけど、せめてこっちを巻き込まないで欲しいなぁ」


「もうダメ。こっちのソフィアはマサムネを知った」


「恋心は持て余す?」


「だからロマンスは面白い」


「それもまた真なり……か」


 何だかなぁ。


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