ブレインイーターは乙女を喰らう04
「ああ、やはりぃ」
カノンにとっての放課後。
こっちで夕餉を取っていた。
ちなみに焼きうどん。
「何で僕を狙うのかは分かる?」
「恨みでも買ったのではぁ?」
どうやってだろう?
まず以て対面もしていないんだけど。
「チャイルドの無力化……とか?」
「アレは大変でしたねぇ」
鋼糸術ね。
「あー、もしかしてそっちですか? 鋼糸の技術を手に入れたいと? そのためにお兄様の脳を欲していると?」
「それは聞かないと分かりませんねぇ」
焼きうどんを手繰る。
「結局の様子、ジャンヌと一緒に居るのが無難かな?」
「カノン様は?」
「学校あるし」
「ソレなんですよねぇ」
サラリと述べられる。
おかげで昼間の警戒は僕自身が務めなければならない。
別に愚痴ってわけでもなく、異世界からの因果の延長線上とでも思えば……別段苦慮にも値しないしね。
「お兄様は宜しいので?」
「今更論じても始まらないと申しますか……」
「それは……そうですけど……」
不満げな妹。
でもチャイルドには脳が無いから遁術も通じないだろう。
銃撃も点攻撃なので死者には効果的でない。
オーラの警戒は僕一人で足りるし、そうなるとツナデに出来る事は料理を作ることだけだ。
「美味しいんだから文句はないんだけど」
「お兄様の御力になりたいんです!」
「もう力になってる」
「うぅ……」
「力量不足は別に気にしなくても。誰にでも得手不得手はあるよ?」
「ジャンヌが好きだったりは……」
「好きだけど」
「はぅあ!」
ズキューンとハートを射貫かれるジャンヌ。
「本当にマサムネはジゴロですねぃ」
「いやぁ」
「褒めてませんよぉ?」
うん、知ってる。
「こんなお姉様方を独占して心に傷は持たないんですかぁ!」
「別段好きになれって強要したわけじゃないし。そうなると、向けられる愛情には有り難みこそ感じるよね」
「抱いてください!」
フォトンが瞳をキラキラさせました。
「気が向いたらね~」
「多分に不本意です!」
「フォトンお姉様ぁ! なんなら私が代役をぉ!」
「そっちのケはあり申さじ」
「なんでですかぁ! 乙女は乙女だけで完結するのが世の常ですぅ。男なんて抱かせてくれるなら誰でもいい程度の認識ですよぉ?」
「マサムネ様は違いますけどね」
まぁ抱いてないし。
一種のヘタレ。
だってそうでもないとやってけないし。
「お兄ちゃんは誠実だしね」
「ウーニャー」
「あう……リリアは……愛人で……いいのですけど……」
「お姉さんは営みさえ共有してくれるのなら」
「私はどうでしょう?」
そりゃヒロインズはそう言うほか無いけども。
「う……」
ツヅラが一人ついていけてなかった。
「ツヅラは此処に居て良いの?」
「ダメですの?」
「いや、他の乙女に呑まれてるでしょ?」
「そーですけどー」
半眼で睨まれました。
「わたくしはキャラが弱いですわ」
「そう言ったでしょ?」
「う~……」
一人、在る意味で役立たず。
「別段乙女に求めるところもないけどね」
何が出来るとか何が出来ないとかで女の子を選り好みする立場に……僕は立ってはいないのだ。
「魔術くらい教えてくださいませ」
「んな事言われても」
カノンが一番良く理解しているだろう。
あくまで僕らの魔術は遺産だ。
「超常存在……だっけ?」
「ですねぇ」
コックリとカノンが頷く。
「想像創造がこの際のネックですねぇ。アレは精神を律し、思考を壊し、常識感を破綻させねば成り立ちませんしぃ」
「手っ取り早く覚えられないんですの?」
「麻薬でも使ったらどうですぅ?」
「ふむ」
「ジョークですぅ」
真剣に考察するツヅラに、危ういモノを感じた様で、ちょっと焦りながらフォローするカノンでした。
ちょっと萌え。
「さてそうなると……」
オーラを広げる。
相も変わらず分からないわけで。
「マサムネぇ?」
カノンが呼ぶ。
「今日の夜付き合ってくれる?」
「セックス?」
「絶対無理」
でっか。
それで乙女たちの殺気は収まった。




