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樹の国04

 二日かけて僕とフォトンは樹の国の最初の村に着いた。


 既に太陽は西に傾いている。


 今日も野宿かと諦めかけていたところで村が視界に映ったのである。


 銀貨二枚を払って宿に泊まる僕とフォトン。


 こういうところではフォトンの世話になりっぱなしの僕である。


 宿の食事は全て樹の国の木々に成っている果実だった。


 まぁ山岳国家故だろう。


 こうも森林に蹂躙された場所では家畜も育てられまい。


 そんなわけで果実を咀嚼して嚥下する僕とフォトン。


 それから温泉に浸かる。


 フォトンと一緒に。


 当然水着着用である。


 他の大陸はともあれ、この大陸……僕とフォトンが旅をしている大陸はどこでも温泉が湧くらしく風呂に不自由はしないのだとか。


 僕としてはありがたいことだ。


 トレーニングの後に汗を流したいと思うのは必然なのだから。


 フォトンに言わせてみれば、


「度が過ぎている」


 という事らしいけど、僕にしてみれば、


「そんなものかな?」


 と言ってしまえる習慣だ。


 要するに僕とフォトンの認識にズレがあるというだけのことだ。


 そしてフォトンの意見はこの際無視して構わないレベルだろう。


 僕にとってはこれが当然なのだから。


「はふ」


 と吐息をついて、


「極楽極楽」


 と僕は謳ってみせた。


「極楽ですね」


 そう僕に応じるフォトン。


 それからフォトンは水着越しにたわわな胸を僕の腕に押し付ける。


 六根清浄……六根清浄……。


 邪念を追い払って冷静さを保つ僕。


「マサムネ様……」


 とこれはフォトン。


「何さ?」


 問う僕。


「マサムネ様の忍術……でしたっけ? アレは一体なんです?」


「…………」


 そう言えばちゃんとした説明をしていなかった気がする。


「さきの……山賊に襲われた時も使っていましたよね? 雷遁の術とか……あるいは火遁の術とか……」


「正確には忍術の中でも遁術と呼ばれる技術だね」


 僕はそう訂正する。


「遁術?」


「うん。目標から逃げるための術」


「それにしては」


 とフォトンは訝しがる。


「やたら攻撃的だったように思いますけど」


「うん……まぁ……」


 否定はしない。


 というか出来ない。


 つまり、だ。


「遁術にも色々あるんだよ」


 としか言えない。


 フォトンはキョトンとする。


「色々あるんですか?」


「まぁね」


 頷く僕。


「確かに火遁の術や雷遁の術などは攻撃的かもしれない」


 僕は言葉を続ける。


「あるいは刃遁の術なんてものもある」


 それはフォトンも知るところだ。


「斬撃を生み出す忍術……遁術でしたっけ?」


 その通り。


「まぁでも実際は……」


 僕はコホンと吐息をつくと、


「全て幻覚なんだけどね」


 そう結論付ける。


「幻覚……」


 繰り返すフォトンに、


「幻覚」


 しっかと頷いてやる。


「前にも言ったでしょ?」


 僕は捕捉する。


「忍術……遁術は強烈な幻覚だって……」


「それは……そうですけど……」


 フォトンは納得いかないようだった。


 まぁ僕の知ったことではない。


「だから全部幻想なんだよ」


 遁術というモノは。


 そう言い切る僕に、


「でも山賊を焼きましたよね?」


 フォトンは反論する。


 僕はといえばオーラを浴室全体に広げて複雑な印を結び術名を発す。


「火遁の術」


 次の瞬間、浴室全体を幻覚の炎が取り囲んだ。


「……っ!」


 絶句するフォトン。


「これが……幻覚……?」


 信じられないと言うフォトンに、


「そ。幻覚」


 僕は頷いてみせる。

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