ブレインイーターは乙女を喰らう01
「くあ」
欠伸をしながら鍛錬の時間。
朝もはよから御苦労なことだ……自分が。
それからシャワーで汗を流し、着替えて朝食の席に着く。
今日は白米と塩鮭、冷奴とワカメの味噌汁だ。
昨今、システムキッチンをヒロインたちが使いこなしている件について。
「それでは私は学校へ~ぇ」
「そういえばカノンは学生だっけ」
今は平日バリバリだ。
「マサムネとお姉様も復学しませんかぁ?」
「必要ないかな?」
「ですね」
「高認受けるんですかぁ?」
「考え中」
これは本当。
「そういうカノンは、手職を持っているのに何故学校へ?」
「友達が欲しいからですねぇ」
おお。
何とも健全な精神。
眩く映る。
「もっとも今はブレインイーターの退治が最優先ではありますけど……ソッチはソッチで心配の必要も無いみたいですしねぇ」
信頼されていると取るべきか。
「では行ってきますぅ」
さっさーい。
「お兄ちゃん!」
「へぇへ」
「ゲームしよ!」
「構わないけど、元気な家っ子だねイナフは」
戦闘訓練も普通にこなしているので、ゲーム程度は幾らでもして構わない。
「じゃあ適当にアクションゲームでも……」
「うん!」
溌剌の笑顔だった。
そんなわけでピコピコ。
「それにしてもお兄ちゃん強いよね。この安穏とした世界で……」
「必要事項でしたので」
おほほ、と笑う。
「お姉ちゃんもだけど」
「ツナデはね。本家の直系だから」
今や唯一の。
「ところで巻き込んで何だけど、ブレインイーターはどうするの?」
「どうしよっか」
「釣るんだよね?」
「一応そのつもり」
僕を狙うなら、僕が出れば済む話だ。
「お兄ちゃんのオーラで探せないの?」
「顔も形も分からないのに?」
「あー……」
その気になれば市を満遍なく探れる。
ただ相手を知らないと、誰が何処のドイツかイタリアかも分からないのが現状……そう言える。
「ブレインイーター自体は姿を見せてない……か」
「ま、使い魔が横行してるよね」
ピコピコ。
「お兄様?」
「はいはい?」
コントローラーを動かす。
「食後の茶は?」
「コーヒーでお願い」
「承りました」
そしてコーヒーメーカーがプシューと音を立てる。
「イナフも~」
「分かってますよ」
苦笑を浮かべるツナデ。
「ミルクと蜂蜜は要りますか?」
「いる!」
元気の良いこって。
「お兄様はブラックで宜しいでしょうか?」
「さすが愛妹」
ピコピコ。
「愛している妹で愛妹ですよね」
「曖昧模糊で曖昧だね」
「お兄様はSっケが有り過ぎます」
「そんなつもりもないんだけども。ていうかツナデもソッチの趣味はないでしょ? いまさら僕の性癖を気にするの?」
「愛おしいお兄様のためなら」
「そこら辺がヒロインの悩みか」
「でしょうぞ」
コーヒーカップがテーブルに置かれた。
一口。
「美味い」
「光栄です」
「甘くて美味しい~」
「イナフのゲーム適応率は目を見張るモノが在りますね」
「えへへ。面白いよ?」
「見事にこっちの文明に取り込まれましたか」
アクションゲームを見ながらのツナデの感想。
「ダメだった?」
「いえいえ。むしろ安心したほどです。異世界人でも現代文明は通用すると」
「スマホのゲームも面白いしね」
きっちり楽しんでいらっしゃる。
「さて」
ピコピコ。
「コレからのことなんだけど」
「はあ」
「食材の買い出しは僕が担当するよ」
「危険です」
「むしろだからこそかな?」
「それは……そうですけど……」
愛妹としては「座視できぬ」……か。
「護衛はジャンヌに頼るよ」
「私では役者不足ですか?」
「単純に魔術の発動時間に違い」
「あー……」
そこは分かってくれるのね。
皆陣列れて前に在り。




