アナザーカウンター07
「はふぅ」
「ウーニャー……」
そげなわけでお風呂に入り。
「漂流タイプ……か」
カノンに聞いた話だ。
なんでも人を襲うタイプの魔導災害にも色々特別はあるらしく、その中でもブレインイーターは「漂流タイプ」というレッテルが貼られているらしい。
要するに地域に根付かず、各地を転々と放浪するタイプ。
さすがに十人も行方不明になれば日本では大事件だ。
そのため超人検閲が掛かる。
だが漂流タイプなら、各地各地で問題を起こすので被害が局所的にならず、また魔術師も追いづらく捕捉しづらいとのこと。
その漂流タイプのブレインイーターが某市に留まっているんだから何だかな。
狙いは僕か。
「けれど何したっけなぁ……」
チャイルドを殺しただけだ。
その戦闘能力が欲しいのだろうか?
「ウーニャー?」
「ウーニャーは無敵だからいいよね」
「パパが言う?」
「一応心臓刺されたら死ぬんだけど……」
さすがの僕も其処まで規格外ではない。
ウーニャー……真竜王のドラゴンスケイルは、あまりにも馬鹿馬鹿しく、あらゆる攻性を弾くジョークの類だ。
虹色の髪を撫でる。
「ウー……ニャー……」
撫でられるのは好きらしい。
あるいは僕だからか。
それにしてもと言ったところ。
「この場合はウーニャーを連れた方が良いのかな?」
「ウーニャー! 何でも来いだよ?」
「恋……」
「ウーニャー?」
「何でも無いんだけどね。その場合は頭に乗っけるわけにもいかないし……人型で普通に連れるしかないか」
「ウーニャー!」
何も考えないことにかけては随一の達者だ。
「可愛いね」
「えへへー。パパ大好き!」
「この歳でパパか~」
それもどうよ。
案外馴染んでいるけども……それも異世界の頃から。
「マサムネ様」
風呂を上がるとジャンヌが待っていた。
赤色の髪と瞳。
ルビーを溶かして染め上げたような紅だった。
「一緒に寝る?」
「お願いできますか?」
「まったく構わないんだけど」
「寝るんです……よね?」
「眠るんです」
そこは違えない。
「むぅ。マサムネ様淡泊です」
「ヘタレなだけだよ」
「興味もないのですか?」
在りまくりに決まってる。
男子の性欲を舐めるなよ。
「ま、ぶっちゃけた話、焦る必要も無いしね」
「私は何時までも待っていますから」
「多分他に見つけた方が有益な気もする」
「マサムネ様は私がお嫌いで?」
「大好き」
「ふぁわぁ」
「なので意識しないなんて事は有り得ない」
「そうですか。えへへ……」
頬を瞳の色に染める。
僕は薬効煙をくわえた。
「火をお点けしましょうか?」
「よろしく」
ジャンヌの指先に、口元を持っていく。
小さな炎が点った。
ジャンヌの魔術……パイロキネシスだ。
炎熱限定で自在に操る御業。
死者を浄化する特性も秘めているため、聖なる属性も介在しているだろう。
「在る意味でチャイルド狩りには一番適応かも……」
「チャイルド……と申しますとブレインイーターの使い魔ですか?」
「だね」
「死者が動くなら確かに私の浄炎は無類の効果を発揮しますが」
「そっか」
「ウーニャー……パパ浮気?」
零歳児に言われても。
さて、そうなると。
「もうちょっと考えるべきか」
「何をでしょう?」
「カードの切り方」
「?」
まぁそうなるよね。
ジャンヌも死者と戦ってきたのだから、それなりに経験は積んでいるだろう。
「それにしてもなぁ」
「私では足手纏いですか?」
「多分今回の件では一番確実な戦力なんだけど」
「では一緒に居ますか?」
「いや、大丈夫」
別にドラゴンを殺せと言われているワケでもない。
カノンに聞くに、「脳を喰う以外は吸血鬼のようなモノ」とのことだった。
その漂流タイプであるブレインイーターが、この場に留まっているのはあくまで僕有りきだろう。
であれば決着を付けるのは僕だ。
「パパ?」
「マサムネ様?」
「ここで思案してもしょうがないね。寝よっか」
「お付き合いいたします」
「ウーニャー!」
ほんに元気な乙女だことで。




