アナザーカウンター06
「それで結局、ブレインイーターについてなんだけど」
「滅ぼします」
まぁね。それね。
否定はしないけどさ。
「とりあえずは……まぁ……其処は置いておき。カノン? あのチャイルドに襲われたときの静謐な空間は何?」
「結界ですねぇ」
「けっかい……」
言葉の意味は分かるけど。
「可能で?」
「魔導災害も神秘ですからぁ」
「なるほどですね」
フィリアは納得した御様子。
「さてそうなると」
「こちらから探すのは無理ですか」
そう相成るわけだ。
「基本的に結界は意図してはるものですしぃ」
「あの……何時もはどうやって……魔導災害へ対処を……?」
「式を竜脈に打って探知……が基本ですねぇ」
「後手後手にならざるを得ないと?」
「そこはまぁアクションとリアクションの問題ですからぁ」
「ウーニャー!」
ウーニャー以外のヒロインは深刻な顔をしている。
「てなわけでぇ、ここで補助して貰えれば、とぉ」
「なにゆえ?」
フォトンの瞳が切れるように細められた。
「どうにも今回の魔導災害はぁ」
チラリと此方を流し見るカノン。
「マサムネを狙っているようでぇ」
「それは確かに」
僕も思っていたところだ。
「お兄様……何かされたのですか?」
「自覚は無いけどなぁ」
「化け物に狙われて自覚が無いんですの?」
ツヅラまで。
「あるいは何かしらの判断材料が向こうにあるのか。こうなると会って意見を聞くのが一番かな?」
「お兄様を狙っているのに?」
「魔術が使えるんだから早々遅れはとらないと思うけど」
まして僕にはリミッターの解除がある。
「つまり釣りをすると?」
「星が僕を狙ってるなら是非もないね」
「危険……です……」
「とはいってもブレインイーターは放っておけないでしょ? どちらにせよ神在月としては排除しなければならない。コレは多分、カノンの方が強く思っているだろうけど。……違う?」
「いえぇ。実質その通りですぅ」
「ならやることは決まったね」
「ウーニャー」
多分ウーニャーは分かっていない。
薬効煙を吸って吐く。
「そうなると、あんまり他の人は外に出ない方がいいのかな?」
「そう相成りますね」
「カノンとしての安全率は?」
「魔術有りきなら幾らでもぉ」
ふむ。
「ちなみにこう言う事って良くあるの?」
「そらまぁ。私が管理しておりますればぁ」
「今まで一人で戦ってきたの?」
「家族と一緒にですねぇ。最近は独り立ちしておりますがぁ」
血統も関係するらしい。
それにしてもあっさりと僕らが魔術を使えたのは不思議だけど。
「放っておけば際限なく被害が広がる……でいいのかな? むしろそうじゃないなら災害なんて呼ばれないだろうけど」
「いえ、さほど被害は広がりませんよぉ?」
「その心は?」
「神秘が崩壊しますから」
「それは確かに」
いきなり数十人単位で失踪すれば大問題に発展するわけだ。
とりわけ日本では。
「そうすると……」
フーッと紫煙を吐く。
「あまり急く必要も無いのかな?」
「えと……でも……脳を食べられちゃう……人が増える……わけで……」
「リリアは優しいね」
「ふえ……ぁや……」
真っ赤になる彼女でした。
うん。可愛い可愛い。
「で、こっちの結界はどれだけ持つの?」
「竜脈の虎穴……竜穴に建てられた屋敷ですから、概ねこの程度の結界維持なら、半永久的に可能ですよぅ」
それはそれは。
先人は風水でも学んでいたのだろうか?
「それにしては……って感じだけど」
「じゃあとりあえずは僕が囮と言うことで」
「お兄様」
「マサムネ様」
ツナデとフォトンがジトーッとした目で僕を睨む。
「神在月はおぜぜをくれるんでしょ?」
「それは間違いありませんぅ」
――魔導災害の質にも因りますがぁ。
とはカノンの言。
「じゃあウーニャーも連れて行こう」
「ウーニャー!」
「結界内でなら幾らでも暴れて良いんだよね?」
「そうですね。味方を巻き添えにしなければぁ」
「ぐっ」
ここでフォトンがクリーンヒット。
はた迷惑な魔術しか使えないので、そこはまぁ運用次第。
「……………………」
僕はスーッと煙を吸った。
「お姉さんのトライデントなら一発ですわよ?」
「まぁそうなんだけどね。この場合のトライデント依存が問題かな? 戦いの駆け引きにフィリアは疎すぎる」
「そんなこと言われても……」
「ま、何かにつけやることがあれば期待してるから」




