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忍術師と魔術師の異世界観光日和  作者: 揚羽常時
ブレインイーター
493/512

アナザーカウンター03


「それで?」


 薬効煙を吸いながら、話を進める。


「異界反動って?」


「文字通りぃ」


「異世界の反動かな?」


 フォトンが問う。


「他に無いでしょぅ?」


 カノンも頷いた。


 神を観測することで分かたれた世界。


 その世界。


 基準世界に対する準拠世界。


「そもそもそちらでは魔術を使えたんですよねぇ?」


「ですね」


 フォトンなんかその筆頭だ。


「ウーニャーとフィリアお姉様ぁ……ジャンヌお姉様は此方でもぉ……」


「ウーニャー」


「よね」


「です」


 規格外三人組。


 フーッと煙を吐く。


「つまりお姉様方が居た世界では魔術が至極当然のように使われていたとぉ……そう仰るのですねぇ?」


「何の確認?」


「均衡の保ち方ですぅ」


 ……均衡ね。


「まず真っ先に覚えるべき事にぃ……世界のエネルギー保存の法則を上げられますぅ。コレは知っていますねぇ?」


「まぁ熱力学の基礎だし」


「では魔術はぁ?」


「あ」


 あー……。


「熱力学無視ですね」


 軽やかにツナデが結論づける。


「ここに世界同一仮説が加わるんですよぉ」


「せかいどういつかせつ~?」


 ウーニャーもよく分かっていないらしい。


 いや僕もだけど。


 それは他の乙女たちも同じだろう。


「要するに、基準世界も……ゴッドゲイザーを観測することで分かたれた準拠世界も、本質的には同じ世界率である……という仮説ですぅ」


「それで?」


 フィリアが尋ねた。


「…………」


 ジャンヌも似た感情を発露する。


 ちなみに僕は大体を察していた。


「要するに、『あらゆるエネルギー運用は、あらゆる世界で等価で無ければならない』という仮説ですねぇ」


「にゃむ」


 イナフが頷くけど、多分分かってない。


「つまり……」


「基準世界は物理法則で凝り固まっていますぅ」


 ソレは知っている。


「けど不条理の意味では、こちら……基準世界の方がどうかしているように思えるのですけど……如何に?」


「あくまで科学技術の延長線上ですからぁ」


 ソレも事実。


「で、エネルギー運用なんですけどぉ」


「はあ」


「ゴッドゲイザーによって観測された『超常存在が観測されたエヴェレットの多世界解釈での異世界』では、普通に魔術が敷衍し、エネルギー保存則が滅茶苦茶になってしまいもうしますぅ」


 仕方ないことだ。


「なので世界同一仮説では、基準世界と準拠世界での総エネルギー量は相違を示し……結果として矛盾の補正に世界が歪むんですよ」


「ん?」


「ウーニャー?」


 イナフとウーニャーには分からなかった模様。


「つまり魔術を使った分だけ、異世界のエネルギー運用は熱力学第一法則を無視し続けて、結果として基準世界との間に総エネルギー量の差異が生まれると?」


 ツナデの言葉が正解。


「ですぅ」


 カノンもコックリ。


「で、このエネルギーの差異を保管するために反動が起きますぅ。これを基準世界では異界反動と呼ぶんですぅ」


「アナザーカウンター……」


「ですねぇ」


 つまりそういうことか。


「異界で使われるエネルギー量を、こちらでも消費せねばならず……」


「結果として仕事の反動が生まれ……」


「あう……無駄なエネルギーが……」


「此方の世界で魔術として消費されるワケね」


「それで正解ですぅ」


 サラリとカノン。


「でぇ、アナザーカウンターの話に戻るんですけどぉ……つまり準拠世界で矛盾しているエネルギー運用を此方の世界でも適応させるために、過足分のエネルギーをどうにかして消費せねばならずぅ」


「結果その余剰エネルギーが魔術と相成ると」


 ツナデの言だ。


 そして正解でもある。


「しかも人類の文明に肯定されては不味いのでぇ」


「神秘。神性の秘匿。つまり熱力学の認識の裏で、世に潜んだエネルギー運用が求められる。結果、魔術や魔導災害は文明の表舞台には出ない……と」


 聡いね。


 我が家の妹は。


「そーゆーことですぅ」


「じゃあ異界反動で魔術は成り立つと」


「実際かなり面倒ですけどねぇ」


「ふむ」


 吸った煙をフーッと吐く。


「けどそれなら何も問題ないんじゃない?」


「そう言えれば良いんですけどぉ」


「あー……」


「フィジカルネメシス?」


 そうなるよね。


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