アナザーカウンター01
「まず私は『神在月』と呼ばれる機関に所属しておりますぅ」
「神在月」
「別名ゴッズコンプリート。超常検閲機関とも呼ばれますぅ」
「ちょうじょう……けんえつ……?」
「文明の裏側に根ざす国際機関で、神秘の独占を標榜している組織ですねぇ」
「ああ、それで」
超常検閲機関。
超常……魔を検閲するための機関ということでっか。
「神秘の独占は文明的にどうなんですか?」
ツナデが眉をひそめた。
そりゃ確かに。
競合がいないというのは不思議で為らない。
「いえぇ。居ないわけではないんですけどぉ。こちらにも都合がございましてぇ」
「ウーニャー?」
僕の頭上のウーニャーもよく分かっていないようだ。
基本ポンコツだけど。
「フィジカルネメシスを回避するためですぅ」
「フィジカルネメシス……」
そりゃまた大仰な。
「で、こっちの希望なんですけどぉ」
「はあ……」
リリアもついていけていないようで。
「皆様方には神在月に所属して貰いたいんですぅ」
「なにゆえ?」
フィリアも首を傾げる。
「まず経済的事情が上げられますねぇ」
経済。
事情。
いやまぁ確かに……仕事の引き継ぎも終わったし、散発的には公調や情報本部から仕事の依頼も来るだろうけど、たしかに表向き無職には違いない。
こんなに女の子が大勢いれば、それだけエンゲル係数も指数関数的に伸び上がること常ではあろうぞ。
「魔導災害の解決はお金になりますよぉ?」
「ソレこそ何ゆえ?」
ジャンヌにしても、よく分からないようだ。
実際、僕もよく想像は出来ない。
「魔導災害。ここではブレインイーターに焦点を絞りましょうかぁ」
少し話のスケールが小さくなる。
「脳を喰らう化け物……だっけ?」
「ついでに喰らった脳を我が物に出来ると」
ツナデも復習する。
「で、チャイルドのオマケ付き」
イナフも理解しているようで。
「まずお姉様がブレインイーターを退治するとしますぅ」
「殺すって事ですか?」
「ですねぇ」
あえて言葉を濁さなかったのだろう。
「封印刑もありますけどぉ」
…………封印。
「基礎として対人魔導災害程度は殺して終わりですねぇ」
「ブレインイーターはその範疇だと?」
「ええぇ」
コックリ首肯。
「要するにヴァンパイアの上位互換ですから」
「は」
言われてみれば。
「で、そのブレインイーターを殺すと、『魔導災害を弑した』という名誉を魔術師が受ける事に相成りますぅ」
「名誉ですか」
「そこはまぁ」
コクリ。
「出来る人間が限られますしねぇ」
たしかに一般人ではチャイルドにすら勝てないだろう。
「マサムネは普通に渡り合っていましたねぇ?」
「それなりにね」
「お兄様は最強ですから」
ツナデ。
ややこしくなるから止めて。
「なわけで協力願いたいとぉ」
「検閲は?」
「既に関わってるでしょぅ?」
まぁね。
それね。
「それに異世界のお姉様方が居る時点で、多分不可避の現象ではございましょうともぉ。まこと遺憾ながらぁ」
単純にこっちの都合なんだけどなぁ。
「で?」
「その魔導災害を討伐した名誉を神在月に売ることで、私たち魔術師は生活の糧を得ておりますぅ」
「要するに派遣会社?」
「嫌な例えですけど正鵠ですねぇ」
正鵠なんだ。
それもどうよ。
「なわけで、ブレインイーターを倒して、神在月に倒した名誉を売れば、神在月の魔術界での発言力は高まり、その所属している魔術師の懐は潤う……というわけですぅ」
「すごい阿漕な商売で……」
「な、わけで、是非ともお姉様方には神在月に所属して欲しいのですけどぉ?」
「お兄様はどう思います?」
「面白そうかなって」
「ふむ」
ツナデは視線を天井にやった。
「マサムネ様次第ですね」
「あう……」
「イナフは構わないよ?」
「ウーニャー」
「お姉さんは役に立てるわ」
「不肖私めも」
「魔術結社……でいいの? 神在月は」
「まぁ俗っぽく言えばその通りではありますけどぉ……一応地球の危機から守る側なので、魔術結社という程、研究機関的な色合いは薄いですねぇ」
なるほどね。
「ちなみにブレインイーターを討伐した場合の金銭は?」
「会議を通して決められるので、確約は出来ませんけどぉ……経験則で語るなら、まぁ千万を下ることは無いかと。日本円で」
ほう。




