ようこそ神秘の世界へ06
「ふい」
「ウーニャー」
僕はウーニャーと二人で風呂に入っていた。
ツナデはカノンと入るそうで。
「むぅ」
とカノンに睨まれ申して。
「ウーニャー」
「なに?」
「パパは魔術を信じるの?」
「昼間見たでしょ?」
「そーだけどー」
「ちなみにウーニャーもドラゴン魔術を使えるし」
「そーだけどー」
パソコンの問題だ。
――世界をパソコンに見立てたら。
それで説明は付くけど、そうなると魔術の秘匿性にも疑念は向くというもので、その辺りをカノン……あるいは魔術師はどう思っているのか?
そこが不思議だ。
「ウーニャー?」
「ま、考えてもしょうがないんだけどね。実際にこっちではあっちの魔術は使えないんだし。呪文を唱えているみたいだったから、世界宣言にも似た何かがあるのは確か……ではあろうけども」
「ウーニャー……」
「可愛い可愛い」
虹色の髪を撫でる。
「うーん。茹だる」
しばらく暖まって、それから湯を上がる。
「お兄様!」
「お姉様ぁ!」
「……………………何?」
「こいつをどうにかしてください!」
「私と一緒に入ってくださいぃ……」
「仲良いんだね」
「冗談!」
「お姉様ぁ!」
やんややんや。
「ちょっと乳房を揉むだけですからぁ」
「ツナデの乳房はお兄様のためにあります!」
いや。
止めて。
ガチで捕まる。
「お兄様以外に揉ませるパイオツはございません! ということで諦めなさいカノン! それからお兄様、揉みますか?」
「気が乗ったらね」
サラリと受け流して、僕はドライヤーを手に取る。
「お姉様ぁ。混浴をぅ!」
「駄目です! 乙女は惚れ込んだ異性に捧げるべきです!」
「男なんて下劣ですぅ! きっとお姉様の身体目当てですよぅ!」
「それは貴方でしょう!」
うん。
たしかにそれはカノンだ。
乙女であることは否定しないけど。
「可愛い子」
「お姉様」
なんてリリアンな関係は少し憧れる。
「ウーニャー?」
「ウーニャーはまだ知らなくていいよ」
「ウーニャー!」
「イナフとゲームでもしていなさい」
「ウーニャー」
パタパタとパジャマ姿でリビングに顔を出すウーニャーでした。
「あら、マサムネちゃん」
ダイニングにはフィリアが居た。
「おや」
少し目を丸く。
フィリアはコーヒーを飲んでいた。
「コーヒーの淹れ方。覚えたんだね」
「ええ。便利ね。この世界は」
科学技術の下地があるからね。
「なんならコーヒー飲む? あれなら淹れるけど?」
「じゃあご相伴に与りましょうか」
「素人だから、あまり期待はしないでね。とまぁセーフティを張るのもちょっと嫌らしくはあるけども」
「僕もあまり得意じゃないし」
ヒラヒラと手を振る。
「淹れてくれるなら大歓迎」
フィリアのコーヒーか。
ちょっと興味はある。
「本当に素人芸よ?」
「いいんじゃない。愛さえ在れば心丈夫。なんなら珈琲屋にでも行ってみたら? スマホで検索すれば結構出るよ?」
「本格的ね」
「ツナデを出し抜く良いチャンスだと思うけど」
「マサムネちゃんはそう言うわよね」
まぁね。
それね。
「お姉さんも少し頑張るべきかしら?」
「今でも十分頑張ってるよ。ペペロンチーノのレシピも覚えたんでしょ? 他にも過去のレシピも。ツナデはアレで器用だから料理教室には向いてると思うんだけど……」
「そうね。お姉さんも色々覚えたわ」
「なら良し」
「ところで働かなくて良いの?」
「依頼があれば働くけど」
「それどころじゃない……と?」
「そう相成るかな」
「お姉さんに出来る事があるなら言ってね? 国を滅ぼすも自由自在だし……きっと役に立つわ」
これが冗談ですまないから、フィリアはタチが悪いんだけど。
超自然兵器。
名をトライデント。
津波も地震も何のそのだ。
「ま、神秘性では確かにね」
「いらないかしら?」
「要件があったら頼らせて貰うよ。フィリアのトライデントにはそれだけの価値が在る。ていうか砂漠化問題に決着付きそうな感じだし……」
結局そこだよね。




