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忍術師と魔術師の異世界観光日和  作者: 揚羽常時
ブレインイーター
485/512

ようこそ神秘の世界へ05


「で、匿うと?」


 ひくひくとツナデの口の端が引きつっていた。


「お姉様ぁ!」


 ヒシッとカノンがツナデに抱きついた。


「お姉様ぁ。良い匂いぃ……」


「離れなさい」


 グイと押し遣る。


「あぁんぅ」


「で、何故にカノンが?」


「どうも僕が……ええと……」


「ブレインイーター」


「ソレに狙われているらしくて」


「殺せば宜しいのでは?」


 まぁそなんだけどね。


「殺せますかぁ?」


 思案気味な、カノンの言。


「まさか不死身とは申しますまい」


「そですけどぉ」


「他に特徴とか在るの?」


「ブレインイーターは食べた人間の能力を獲得できますぅ。魔術師の界隈でも返り討ちに遭っているほどの魔導災害ですよぉ? 一般人……とはお姉様方は違うらしいですけど、それにしても頼って欲しいですぅ」


「そう言われてもね」


 僕はやずの刺身をレジ袋から取り出す。


「わお」


 ツナデがほころんだ。


「で、その護衛としてカノンが?」


「そう相成りますぅ」


「他に狙いは?」


「お姉様方と仲良くなりたいですぅ」


「その率直さは高得点だけど」


「お兄様~……」


 うんざりな視線を御苦労だけど、基本的に僕にとってカノンの性癖嗜好は別段嫌悪を招く類のものでもなかったりして。


「なのでよろしく御願いしますぅ」


 ギュッとツナデを抱きしめるカノンでした。


 で、


「今日の御飯は?」


「ペペロンチーノのつもりでしたけど、宜しいですか?」


「好物」


 グッとサムズアップ。


 ツナデの料理はどれも美味しい。


 じゃあやずでも食べますか。


 刺身醤油とわさび。


 うん。


 美味し。


「お兄ちゃん!」


「これはイナフ……何か?」


「良い匂い」


「刺身だよ。食べる?」


「食べる!」


 うまうまと食べるイナフ。


 ヒロインたちはツナデの指導を受けていた。


 ソースを造るのはツナデだけど、麺を湯がくのは異世界ヒロインズに任せている模様らしいですね、はい。


「で、ソースなんですけど」


 ほとんどお料理教室だ。


「ふむふむ」


「ほうほう」


 フォトン。


 リリア。


 フィリア。


 ジャンヌ。


 彼女らは着実に女子力を上げていた。


 ツナデ曰く、


「吸収率は類を見ない」


 とのことで、本気で家事全般を任せるにたる逸材らしく、技術として完成すればツナデの居場所を奪ってしまうかも……らしい。


 それならそれでいいんだけど。


「お兄様はツナデ以外の奉仕でも良いんですか?」


 と聞かれれば頷きがたいけどさ。


「く!」


「この!」


 ちなみにカノンは食客扱いのようで、やずの刺身を堪能した後は、イナフとテレビゲームに夢中だった。


 いやぁ。


 毒のないヒロインは久方ぶりだ。


「結局魔術って何でしょうね?」


「さて」


 薬効煙をくわえる。


「火を以て命ず。ファイヤー」


 されども火は訪れず。


 しょうがないのでライターで点ける。


「魔術……ね」


 神秘の秘匿。


 遁術とはまた別の原理での隠密性らしいけど、その意義はよく分からない。


 とにかくそんなファンタジーに巻き込まれたのは実感できているっていうか……実感していないと脳を食われる。


 ブレインイーター……ね。


 ニンニクの良い香りがする。


 ツナデのペペロンチーノは絶品だ。


「こうして芯を残して、ソースと和えるときに芯がなくなるよう計算しえ湯がくのがパスタの基礎で……」


 料理教室も問題なし。


 さてそれにしても、


「ブレインイーターは何を思っているのやら……?」


 食った脳を再現する……で、良いのだろう。


 その点を加味すれば、


「もしかして」


 嫌な予感も、それは感じる。


「ていうかこの場合はたしかにカノンの勢力圏か。そうでもなければ甚だ不味いことになりかねないね」


 ある種の脅威だ。


 さすがに遁術を化け物が覚えれば、災害どころの話では無くなる。


 戦略級の脅威だ。


 無無明。


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