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忍術師と魔術師の異世界観光日和  作者: 揚羽常時
ブレインイーター
481/512

ようこそ神秘の世界へ01


「美味しいですねぇ!」


 カレー。


 カノンはガツガツと食べていた。


「学校は良いの?」


「事情の把握が先決ですぅ」


 カレー食いながら言うことでも無いような気がするけども……とりあえずツナデのカレーが美味しかったなら、それは喜ぶべき事かな?


「どうですか、お兄様?」


「美味しいよ。家庭の味と言いますか。溶けたタマネギも良い味出しているし、向こうの世界ではツナデのカレーが食べられなかったから、その意味でも価値ある物なんじゃない? 事実、述べた様に美味だし」


「光栄です」


 穏やかにツナデの笑う。


 しばらく昼食が続いた。


 それから全員が食べ終わると、


「さて」


 僕は玉露を飲みながら、視線をカノンに振った。


「状況は説明できる?」


「そっちは事情を知らないのでぇ?」


「さすがにね。もっとまともな世界だと思ってたけど……何がどうすればあんな現象が起きるのさ?」


「嘘は吐いていないみたいですねぇ」


 ふんふんとカノン頷く。


「何かあったのですか?」


 フォトンが首を傾げた。


「グールに襲われた」


 端にして要。


「は?」


 まぁそうなるよね。


 僕でさえ半信半疑だ。


 正直なところ、白昼夢の方が、まだ納得も出来る。


「グール?」


「でいいのかな? 要するに死人が動いていて、コッチに襲いかかって……いたのかはわからないけど……首斬っても死なないのはちょっと異常だよね」


 念のため鋼糸を持っていて正解だった。


「死人が襲ってきたって……ゾンビ映画みたいな?」


「ゾンビ映画みたいな」


 コックリ頷く。


 事実その通りだ。


「で、カノンが何か知っているみたいだけど……」


「そうなんですか?」


 ツナデがカノンに問うた。


「えと……その……その件に関しては極秘事項でしてぇ」


 伸ばした両手の人差し指で、ツンツンと双方をつつく。


「そんなファジーが有り得るのですか?」


「ええとぉ……」


「なるほど。あるのですね」


 さっぱりと見抜かれた。


 僕やツナデは表情筋で嘘を見分ける技能を持つ。


 玉露を飲み干すと、僕は薬効煙をくわえて火を点けた。


 ハーブの香りが肺を満たす。


「その前に一つ聞きたいんですけどぉ……」


「何か?」


「そちらのお姉様方は……まさか異世界出身でぇ?」


「言ったっけ?」


「いえ。予測でぇ」


「まぁそうなんだけど」


「やっぱりそうですかぁ」


「把握していたの?」


「こんなカラフルな髪の色はさすがにぃ」


 デスヨネー。


「でも根拠としてはそれだけで? ウィッグや染髪の可能性は考えなかったの? むしろそっちの方が根拠として重いと思うんだけど」


「いやまぁ偶然ならそれで良かったんですけどぉ」


 モジモジ。


「じゃあ話を戻そっか」


 閑話休題。


「ツヅラも観たよね?」


「ゾンビでしたわね」


 ばっちり記憶していたようだ。


「うー、特秘事項なのにぃ」


 特秘事項……ね。


「つまりこっちの世界もファンタジーって事?」


「まぁファジーではありますねぇ」


 そこが根幹だ。


「お兄様?」


「あー」


 言いたいことはわかる。


「もしかして僕らが元いた世界とは違うって事?」


「そう相成りますね」


「それは違いますぅ」


 むしろカノンがサッパリと言った。


 栗色の瞳には確信が乗っている。


「ここは確かに基準世界ですよぉ」


 基準世界……。


「そも別の世界なら別のお姉様とマサムネが居るはずですしぃ」


「それは……」


 そうだね。


「基準世界」


「お姉様方がいた世界は準拠世界と呼ばれていますぅ。基準世界から……エヴェレット解釈で分離した別世界ですねぇ」


「エヴェレット解釈……」


 ここでその話を聞くとは……。


「量子力学についてはぁ?」


「科学雑誌に載っている程度には」


「他世界解釈への理解はぁ?」


「まぁ知ってはいるよ」


「ウーニャー! 二重スリット実験」


 ウーニャーが僕の頭で尻尾ペシペシ。


「ドラゴンですかぁ。つまりお姉様方はぁ」


「異世界に行っておりましたね」


 苦笑……にしては苦い笑いだ。


 殊更、僕らに責任は帰結しないけど、たしかにツナデにとっては有意義な時間ではあったろう。


 僕は薬効煙を吸った。


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