099 いい加減収集がつかなくなってまいりました
「というわけでツヅラと申します」
「なにが、というわけで?」
異世界ヒロインズ……揃って口をへの字に歪め申しまして……。
そりゃ怒るよね。
うんざりするよね。
妬み嫉みのルサンチマン。
で、
「一緒に暮らすことになったから」
僕は明後日を向いて吐く。
とても目を合わせては、言えない言葉だ。
色々と寿命が縮む……この場合は、残存生命としてではなく、突発的な乙女の感傷によって……である。
無念。
「カノンはどうするのかな?」
フィリアが尋ねた。
「あっちはツナデストーカーだから、まぁ合算は出来ないよ」
そ~ゆ~問題でもなかろ~けども。
「マサムネ?」
「何か?」
今度はツヅラだ。
「ハーレムの皆様方。髪の色がカラフルですね」
深緑。
利休鼠。
金髪。
虹色。
水色。
赤色。
まぁ多種多様だ。
「異世界人だからね」
「ジョークなら外してますよ」
「信じられないのも無理ないか」
別に説得するつもりも無い。
「ウーニャー。パパの頭に乗っていい?」
「構わないよ」
そんな感じでウーニャーがドラゴンに変じて、僕の頭までパタパタと飛び、ポスッと収まって、尻尾ペシペシ。
僕は、何時もの如く、薬効煙を加えて火を点ける。
「えぇえ?」
さすがにドラゴンは見たことないだろう。
しかも人から変身。
この場合は変態かな?
かくあれかし。
「どういう理屈?」
「ドラゴン魔術。異世界では普通なんだけど、何故かコッチの世界でも使える。理屈は……仮説ならあるけど、別段興味もないかな」
「本気で?」
「正気を疑うなら精神神経科へどうぞ」
皆菱財閥なら懇意にしている病院もありましょうぞ。
「ドラゴンって……」
「ま、そんなわけで、現代文明に慣れさせている最中」
「お兄様?」
「仕事は終わった?」
「ええ。滞りなく」
「良い良い」
「で、なんで護衛の対象を?」
「惚れられたんだからしょうがないでしょ」
「惚れたわけでは?」
「ないね」
「マサムネは意地悪ですわ」
「好きに見限ってくれて構わないから」
そこは然る者追わず。
パンと一拍。
仕切り直し。
「で、今日の昼食は?」
「カレーです」
まぁ大勢での食事なら安パイか。
「皆菱会長は何と仰って?」
えー。
その話引っ張るの?
「頑張れと」
「ツヅラ?」
「頑張りますわ」
「はぁ……」
ツナデの溜め息。
さて、じゃあ今度こそで。
「材料は? 散歩がてら買ってくるけど?」
「ではお願いします。ツナデも一緒に行きましょうか?」
「監督責任」
「でした」
分かってて言ってるでしょ……ツナデ……。
「さてそうなると……」
乙女たちに視線をやる。
「一緒について行きたい人」
「「「「「はい!」」」」」
全員挙手で。
「中々難儀な御機嫌で」
「お兄様のせいですよ?」
「ソレ言わないで。胸に来る」
「ツナデは何処までも味方ですから」
「ありがとね」
謝辞。
「ところでツヅラは学校は良いので?」
お嬢様学校とは少し離れている。
決して通えない距離じゃ無いけど。
「車の送迎ですから問題ありませんわ。むしろマンション地帯より、此方の方がのどかで車も安心して走らせられるとドライバーが」
ならいいけど。
「にしても皆菱ツヅラ……ね」
「資金と権力には一応のバックアップは期待しても宜しいので?」
「そこはまぁ。他に取り柄もありませんし」
「じゃ、そゆことで」
此度の議論はお終いでお願いします。
本当に心臓に悪い。
不貞不貞しさは失っていないけど、ヒロインの存在圧は、時に不機嫌の低下と共に台風を発生させる。
南無。




