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忍術師と魔術師の異世界観光日和  作者: 揚羽常時
ある意味異世界観光
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096 虹色の煌めき


「どうも。遅れましたか?」


 昼休み。


 ちょっと日当たりの悪い場所。


 予備の校舎の裏手だった。


 オーラ。


 遁術。


 一応警戒はしたけど、問題なし。


「ちょっと不安になりますわね」


 君が言いますか。


 ツヅラのしかめ面は、この際スルーで。


「それで? 要件は?」


 僕は尋ねてみる。


 話を促す……でないと先に進まない。


「マサムネ様……」


 一種の情熱が、女子生徒の瞳孔をトロリと溶けせしめた。


「一目惚れでした。付き合ってください」


「謹んでごめんなさい」


 即破談。


 今更何がどうのでも無いけど、別にこれ以上ヒロインは増えなくてもいい……が僕の率直に思うところ。


「マサムネ様!」


 感極まって抱きつこうとする女子生徒。


 その片手が、制服の懐に伸びる。


 ツヅラからは、フラれた乙女が名残惜しく、僕に抱きつこうとしているように見えているのだろう。


 実は違うけど。


 ナイフが取り出された。


 それが僕の頸動脈を鮮やかに掻き切る。


 一瞬の一瞬。


 それで決着だ。


「は、ははは、ははははは!」


 血のベッタリ付いているナイフを片手に、女子生徒は笑う。


「さて、次は貴方ね。ツヅラお姉様」


「い……や……」


 完全にツヅラは青ざめていた。


 不意打ちによる僕の殺害。


 次いで、ツヅラへの殺害意図。


 そりゃそうなる。


 ――どこぞの誰かが望んだ形だ。


「私を……殺すの……」


「殺しますわ。お姉様。きっと楽になれますわ」


「う……あ……」


 ガクガクと震えて、へたり込む。


 ツヅラは失禁していた。


 血を噴出して倒れ込む僕を見て、青ざめ方がさらに酷くなる。


「貴方まで着いてくるのは予想外だったけど……総じて都合が良いのは事実ね」


 けかか、と女子生徒の笑う。


 喜悦……にしてはちょっと歪んでいる。


 どうやら性格は至極真っ当のようだ。


「なんで……殺すの……?」


「お金のためよ」


 事ほど左様なメリット。


「我が家は今切迫してるの。このままじゃ破産する。そこに仕事が来た。ツヅラお姉様の護衛を殺せば……大金が手に入る。そんな悪魔の誘惑。でもね? この時代にお金は必要なの。生活するにも、生きるにも、政治的に主張するにも、お金は絶対的なファクター。広告や印刷……放送に選挙……こんなにも日本には大金が絡む」


 ソレは納得。


「貴方の護衛を殺すだけで、両親は安穏と暮らせる。私は少年院行きでしょうけど、大金とは釣り合うわ。人生は滅茶苦茶なるかも知れないけど……別に良いよね」


「そんな理由で……」


「ごめんなさい。お姉様。失禁させてしまったわね。でも大丈夫。死んだら括約筋が弛緩するから、小水と言わず色々漏れでるわ」


 クスクス。


 ケケケケ。


 女子生徒はそう笑う。


「死にたく……ない……」


「そう。私だって死にたくないわ。そのためには貴方も殺さないと」


「い……や……」


 こっちを見るツヅラ。


 血を噴出させて、段々と彼女同様青ざめる僕の顔。


「こんなの……こんなの望んでない! 私はただ真っ当な不幸が欲しかっただけ!」


「? 何を言っているの?」


 女子生徒の顔が怪訝になる。


「私を殺すように業者に頼んだのは私なの!」


 …………ぁぁ。


「お姉様が? 自分で?」


「そう! 自分で!」


「じゃあお望み通り殺してあげる」


 結論変わらじ。


 僕の血の付いたナイフを振り上げる。


 へたり込んで座っているツヅラに防御を期待するのは悪手だろう。


「さて、そうなると」


「ウーニャー!」


 虹色の閃光が奔った。


 レインボーブレス。


 少し離れた場所にいるウーニャーのドラゴンブレスだ。


 本当は使って欲しくなかったんだけど、この際どうとでもなり能う。


 出力も抑えてるし、地平線への到達より先に、自然消滅するだろう。


 正確には収束。


「――――――――?」


 ツヅラと女子生徒。


 二人揃って意味不明らしい。


 僕も含めれば三人か。


 たしかにドラゴンブレスではあれど、意味不明なのは僕も同じだ。


「ウーニャー……ですの……?」


「ウーニャー!」


 ドン、と胸を叩くウーニャー。


 うーん。


 頼りになりすぎる。


 ドラゴンブレスは適確に少女のナイフだけを消してしまい……それ以上の破壊を起こさなかった。


 その点を吟味して、今回は此処で終わり。


 ――しかしどうしたものか?


 僕の現状は。


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