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忍術師と魔術師の異世界観光日和  作者: 揚羽常時
ある意味異世界観光
467/512

087 御庭番の依頼


「護衛?」


 僕はツナデからそう聞かされた。


 屋敷でのこと。


 珍しく居るなと思いつつ、そろそろ選挙の時期ではある。


 キーパーソンの政治家が海外から諜報やトラップを仕掛けられ、足下を掬われるのも、まぁ良く在る行為。


 実際フィクサーの機嫌を損ねれば、まず政治家として浮かばれない。


 閑話休題。


「えーと……」


 しばし考える。


 対象の護衛。


 それはツナデの領分ではなかったか?


「まず。僕が?」


「お兄様が、です」


 聞き違えでは無いようだ。


「誰を?」


「皆菱ツヅラ」


「誰よ?」


 そりゃそうなる。


 そして嫌な予感は的中する。


 こういうときに限って。


「皆菱財閥の令嬢です」


「皆菱……ね」


 日本でもトップクラスの財閥だ。


 元々日本の戦後は財閥解体で衰退したのだけど、そこから技術立国として社会的に復帰し、自然と財閥の力……俗な言い方をするなら資金力もある一定の水準にはなっている。


 ここら辺は魔窟なので、あまり首を突っ込みたくない。


 問題はそこでは無いし。


「で、なんでコッチに話が?」


 それはさすがに確認も取る。


 一応のところ、僕は仕事に関わっていない。


 ブランドのロゴが入らないイノセントカラーだ。


 ここら辺は、メンツの問題で、理論より優先すべき事柄でもある。


 別に働けないことを不満に思った試しも無いけど、逆に指名されるとなれば、さすがに裏を勘ぐるぐらいは僕もする。


「何やら狙われているそうで」


「とは言われても」


 財閥令嬢ならその程度は範疇だろう。


 護衛も揃って当然だ。


 なお江戸には御庭番が居る。


 こっちの出る幕はない……と思いきや、


「その御庭番の依頼でして」


「そっちに不都合が?」


「公安と情報本部に忙殺されているようで」


 たしかに。


 忍は諜報機関を持たない日本の民営的諜報機関と言える。


 その人数は決して多くなく、少数精鋭を旨とする。


 第一に、遁術は知られない方がカードとしての有益性を持つ。


 そこから第二、第三、と条件付けをすれば、忍の数は限定され……つまるところ、要するに手が足りないのだ。


 慢性的な人員不足は、忍者業界の常と言えるだろう。


「で、僕?」


「お兄様に」


 コックリ頷かれました。


 さいですか。


「相手方は納得しているので?」


「それはまぁ」


「いや。御庭番」


「懐疑の声も無いではありませんが、どちらにせよ財閥令嬢の護衛に半端物を任せるのは業界的に有り得ませんし」


「別に忍の家系に狙われてるわけでも無いんでしょ?」


 こっちに話が回ってくると言うことは。


「それはそうですね」


 奇妙な話と思われるかも知れないが、我が家や伊賀甲賀、風魔に御庭番に霧隠……他多数の忍の一族は『互いに争わない』を不文律としている。


 先述の如く、忍の人員は少ないので、無用のトラブルで財産を摩滅させないこともあるけど、それ以上に、日本という国家の括りに於いて、互いに有益である方が最終的に帳尻が合うことを、言われなくても悟っているのだ。


 忍の仕事の一つに暗殺は確かにあるけど、それでさえも邪魔が入らないことを前提に行なわれる。


 ある忍の暗殺に、忍の護衛を付けて対抗する……というのは無いとは言わないけども、現実的ではない。


「つまり」


 僕も忍である以上、財閥令嬢は何かしら別の要因に狙われているわけだ。


「受けないのなら白紙に戻しますよ?」


「いや、受けよう」


 軽く僕は言った。


「いいので?」


 ツナデはむしろ驚いていた。


「ツナデがこっちに話を持って来たのは貴重だ。なら尊重したい」


 仮にツナデがくだらないと思えば、僕に話を通さず握りつぶすだろう。


 妹が頼ってくれるのは、ある意味で嬉しいことだった。


「いいのですか? 異世界組の監督役をしなくても」


「そこはまぁ大丈夫なんじゃない?」


 スマホの使い方は教えた。


 レシピの確認も。


 スーパーでの買い物も。


 飢え死にすることは無いだろうし、ツナデも仕事の合間に帰るのだ。


「全員栄養失調で死にました」


 は青写真も描けない。


「で、期間は? 一生とか言われるとさすがに却下なんだけど」


「とりあえずは選挙まで。ツナデと同じですね」


「うーん。たしか皆菱は……」


「……ですね」


 とある政党の後ろ盾だ。


 ある意味で、間接的なツナデのスポンサーでもある。


 で、こっちに話が回ってくると。


「じゃ、受けますか」


「ウーニャー!」


 僕の頭に乗ってるウーニャーも元気よく尻尾ペシペシをしていた。


「あの、流石にドラゴンは……」


「大丈夫じゃない?」


 世間体はあるけど、僕が手綱を握らない方が、ウーニャーの場合は空恐ろしい。


 マジで戦略レベルだ。


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