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魔の国23

 そして次の日。


 早朝。


 僕はベッドの中で目を覚ました。


 場所はクランゼの宿舎。


 僕はフォトンと一緒に空いたベッドで寝たことを思いだす。


 フォトンはというと僕より先に起きて僕の体をまさぐっていた。


「フォトン……」


「なんでしょうマサムネ様?」


「そんなに僕の体が好きなの?」


「はいな」


 あっさりと言ってくれるね……。


 ま、いいんだけどさ。


「それよりマサムネ様」


「なにさ?」


「お目覚めのチューを」


 はいはい。


 うんざりと吐息をついて、


「……っ」


 僕はフォトンにキスをした。


 唇に唇を重ねた。


 それから口内の凌辱。


 僕の舌とフォトンの舌を絡みあわせる。


 いわゆる一つのディープキス。


「ん……あ……」


 ディープキスに悶えてそんな言葉をフォトンはこぼす。


 ツナデに見られれば即死ものだ。


 まぁもう関係ない関係性だけど。


 ディープキスを終えると、コンコンと寝室の扉がノックされて、


「マサムネ……フォトン様……先生がお呼びです……」


 そんなリリアの声が聞こえてきた。


「どうぞ」


 と僕が言うと同時に、


「マサムネ様ぁ……」


 と熱っぽい声を出してフォトンが僕にキスをしてくる。


 ガチャリと扉を開けてリリアが目にしたのは僕とフォトンのキスの瞬間だった。


「あ……あ……」


 と呆然として、


「失礼……しました……」


 おずおずと扉を閉めようとするリリア。


 僕は跳ね起きると、


「違うから!」


 と言い訳をして右手で閉じられようとしている扉を固定した。


「情事の最中に……申し訳ありませんでした……」


 完全に誤解されている。


「そういうんじゃないって! ただの挨拶代りのキスであってそれ以上じゃないよ!」


「そう……なんですか……?」


「そもそも発情するなら時間を選ぶよ。こんな朝っぱらから下手はうたないって」


「では……リリアにも……挨拶代りの……キスを……してくださいますか……?」


「まぁリリアが望むのなら」


 そう言って僕はリリアに軽いキスをした。


「ふえ……あわ……」


 それだけのことにリリアは顔を真っ赤にするのだった。


 可愛い可愛い。


「それで? 先生が呼んでるって? 先生ってクランゼのこと?」


「はい……。そうです……」


 顔を朱に染めたまま頷くリリア。


 何はともあれクランゼが呼んでいるらしい。


 ならば出向かざるを得ないだろう。


 僕とフォトンはスーツに着替えてクランゼの研究室へと顔を出すのだった。


 僕とフォトンの予定を聞くと、


「では今日には学院を出る……と?」


 研究室で執務に取り組みながらクランゼは確認してきた。


「ま、魔術の構造もわかったし、いろんな魔術も見学できたし……ね」


 僕は頷く。


「では旅立たれるのですね……」


「そういうことになります」


 僕は頷く。


「できることならばマサムネ様とフォトン様にはこの学院で力を発揮できればと思っていたのですが……」


「元来の根無し草故」


「申し訳ありません」


 僕とフォトンは殊勝に頭を下げる。


「リリアの事……よろしくお願いします」


「それは無論……マサムネ様のお願いとあらば遂行しますが……」


「リリアも……マサムネには……残ってほしい……な……」


「ごめんね」


 僕は利休鼠色の瞳を揺らすリリアに謝罪した。


「僕はこの世界の全てを目にしたい。観光旅行が僕の今の素直な気持ちなんだ」


「そう……ですか……」


 寂しそうにリリア。


「それで……」


 とこれはクランゼ。


「次はどこの国に行くつもりですか?」


 答えたのは僕じゃなくてフォトン。


「樹の国……北に向かおうと思っています」


 樹の国……ねぇ。


「では樹の国の国境まで空間破却でお送りしましょうか?」


「いいんですの?」


「構いません。座標は覚えていますし……送るとなれば一瞬ですし……」


「ではお願いします」


 フォトンが頷くと、執務を一旦止めてクランゼは僕とフォトンの手をとった。


 そして想像創造の後の世界宣言。


「我は空間を侵食する者。我は空間を蹂躙する者。我は空間を凌辱する者。その闇において宣言高らかに命ず。空間破却……!」


 次の瞬間、僕とフォトンとクランゼは魔の国と樹の国との国境線まで空間転移をした。

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