075 朝風呂
「ふい」
風呂に入っていました。
リリアとフィリアと一緒に。
トライデントでお湯を注ぐ。
一瞬で風呂が張られます。
「やっぱり反応しないのね」
「心は反応してるけどね」
「あら。嬉しい」
ころころとフィリアは笑った。
「あう……」
リリアの方は赤面して純情だ。
とても可愛らしい。
「リリア?」
「なん……でしょう……?」
「高得点」
利休鼠を優しく撫でる。
「あら、控えめなタイプが好み?」
フィリアの視線が奔る。
「そだね」
別に隠してどうなるものでもないし……実際にリリアは純情で、恥じらいを持って、愛らしいし……貪欲な他のヒロインよりも男心をくすぐるのは……まぁ致し方ないと申しますか。
「でもお姉さんのおかげで朝風呂に入れているのよ?」
「そこは感謝」
「じゃあおっぱい揉んで?」
「絶対いや」
「あら」
クスッとフィリアが笑った。
「前回は揉んでくれたじゃない」
「いやまぁ揉めますよ? けれど今度はツナデと揉める」
「あの子は怖いわね」
それは全面的に同意。
「そ……ですか……?」
首を傾げるリリア。
此奴は本当に乙女だ。
羊の皮を被った羊。
純情。
可憐。
処女にして天衣無縫。
「可愛い!」
ヒシッと抱きしめる。
「はぅあ……! あわわ……!」
赤面するリリア。
その愛らしさ限界突破。
「僕と結婚しない?」
「出来るの……?」
「今は無理!」
実際無理だ。
ていうか結婚するにも手続きがいる。
リリアは戸籍を持っていない。
「お姉さんとは?」
「妾で宜しく」
「いいわね」
いいんかい……。
心中ツッコミ。
「お姉さんとしては、フォトンちゃんとツナデちゃんが有力とみてるけど?」
「当たり」
「ふえ……」
「リリアも可愛いけどね!」
ギュッ。
スリスリ。
ほっぺたでほっぺたを擦る。
「あぅあぅあ……っ」
「可愛いなぁ。可愛いなぁ」
水着着用だけども。
正直、性的に興奮する。
シャドーボクシング後で良かった。
ヒュッヒュ!
ツー、ワンツー!
「えへへ……」
リリアは忍ぶ様に笑った。
それがちょっと悔しい。
リリアはコンプレックスの塊だ。
あくまで、
「――リリアの自己評価に限れば」
と注釈は付くけども。
自分を低く見る。
虐げられても自分の責任と割り切る。
いや、自分に押し付ける……が正しいか。
正しさがねじ曲っているのだ。
僕は知っている。
知らざるを得ない。
――あるいはソレを人は共感と呼ぶのか。
自分が矮小で、自分が酷く惨めで、だからある意味で不幸を招き寄せたのは自分で……ソレを人のせいにするのは間違っている。
そこが根幹。
加当の家で僕が学んだことを、リリアは異世界で学んだのだろう。
卑屈。
謙虚。
何と言ってもいいんだけど……それが彼女を苦しめるのなら、分かってあげられるのは僕だけで、その意味でリリアのヒロイン性は高いだろう。
「納得いかないわ」
フィリアのツッコミ。
無論知ったこっちゃござんせん。
「マサムネは……リリアを好きですか……?」
「大好きだよ」
優しい言葉は同情かも知れない。
けれど否定も能わざりし。
「きっと大丈夫。世界が君に優しくなくても、僕が君に優しくする」
「はい……信じます……」
「むぅ」
フィリア不満はスルーの方向で。




