074 そりゃね、まぁね
「こんなことに……」
今日はリビングで寝ることになった。
乙女たちの発案だ。
布団を寄せ集めて、夜会。
フィリアは酒を飲んでいた。
どうやら缶ビールが気に入ったらしい。
「あとでちゃんと歯磨きすること」
一応忠告する。
「で、結局何の催し?」
「マサムネ様を独り占めするのは、理屈的に無理筋ですから」
そりゃね。
まぁね。
「マサムネの……共有財産化……」
ああ。
なるほど。
「それで皆一緒に?」
「そう相成るね!」
イナフは元気いっぱい。
「こゆのを悪平等って言うんだっけ?」
「妥協の産物ではありますね」
嘆息。
後にツナデが吐き捨てた。
まぁ気持ちは分からないけど、想像するに、自分だけのお兄様でいられない現状が歯痒いのは、ツナデの因業と言えるだろう。
実際問題、
――僕がツナデを本当に選ぶのか?
それすら定かではない。
「ウーニャー! ウーニャーはパパと寝られて幸せ!」
珍しく人型のウーニャーだった。
虹色の髪を振り乱し、僕に抱きつく。
「いいんだけどさ」
ウーニャーに関しては今更だ。
何をするでもなし。
「ウーニャーちゃんはマサムネちゃんに近寄りすぎよ?」
「フィリアまで」
「ちょっと酔ってるかも」
「程々にね」
僕も薬効煙を吸いたい気分だったけど、寝たばこと一緒で火災の原因になるので、この場では自重を己に課した。
向こうでは幾らでも吸えたんだけど、こっちの世界ではあまり吸う機会も無いというか、確実に回数が減っている。
そりゃね。
まぁね。
合法とはいえ、傍目にはタバコを吸っているようなモノだ。
警察に見つかればしょっ引かれるだろう。
脱法ハーブの関連もあるし、最終的に無罪にはなるけど、面倒はゴメンだ。
要するに責任の問題。
「じゃ、電気消すよ」
ピッとリモコン。
「おお」
とイナフの感動。
まだリモコンの利便性には驚くらしい。
新鮮なのは、良い事だ。
「……………………」
「ウーニャー」
布団に寝っ転がる。
夜目は利いている。
両隣はツナデとイナフ。
フォトンとリリアが良かったんだけど。
一番理性ある乙女だ。
いや、挑発はされ申しましたけども。
善悪の観念がしっかりしてると言いますか。
「お兄様……っ」
ルンと弾む声。
「勝手に入ってこないの」
僕の布団に。
「あん」
「何の嬌声!?」
イナフが驚く。
「場外乱闘」
端的に僕が答えた。
「で、結局パジャマパーティがしたいなら、男の僕は外れるべきでは?」
「でも恋バナしても、お兄様が格好良いとか、お兄様が優しいとか、お兄様とエッチしたいとか……そんな話にしかなりませんし……」
「なんて非生産的な乙女たち……」
「生産的ですよ?」
子どもが出来るからね!
知ってるから踏み出せないのよ。
「避妊すれば良いじゃないですか?」
フォトンの言。
「膣外射精は避妊とは言わない」
コンドームとか知らないでしょ?
「コンドームとか……」
知ってるの!?
「恋愛に関して調べる過程で……」
「あんまり危ないサイトに行かないでね……」
「一応留意はしていますけど」
「ウーニャー? ウーニャー?」
「ウーニャーはまだ知らなくていいこと」
「ウーニャー!」
ギュッと抱きしめられる。
「いい子いい子」
頭を撫でる。
「フィリアとジャンヌは良いの?」
「お姉さんとしても一緒に寝たくはあるわね」
「私もです」
「結局ハーレムですよね」
ツナデは黙らっしゃい。
「でもお兄様に否定できますか?」
「黙秘権を行使します」
肯定したくないんだけど、否定も出来ないわけで。
そりゃね。
まぁね。




