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忍術師と魔術師の異世界観光日和  作者: 揚羽常時
ある意味異世界観光
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072 勉強


「ウーニャー」


 市立図書館。


 そのスペースで僕は勉強していた。


 別に高認を受ける必要も無いけど、教養として知っておくべき事は知っておくべきだと思った。


「ウーニャー」


 ウーニャーは人型。


 流れる髪を衣服の下に隠し、帽子を被っている。


 全体的には虹色の髪を隠せてないけど、衆人環視のツッコミを掣肘する……そんな意味合いは存在するのだ。


「こちらがこうで、方程式に当てはめると……」


「ふむふむ。ウーニャー」


 ウーニャーはベニスの商人を呼んでいた。


 シェイクスピアは気に入ったらしい。


 文化的にあっちの世界と少し似通っている。


 その点で、事前知識が要らない……は既に言ったか。


 そんなわけでスラスラと読み干していた。


「ウーニャー。本って楽しいね」


「楽しいなら良かったよ」


 そこは僕も思うところ。


「パパは何してるの?」


「勉強」


「ははぁ。勉強」


 向こうの世界にも学園はあった。


 勉強くらいはするだろう。


 主に魔術とか。


「こっちは科学だけどね」


「かがく……」


 いや、別に気にしなくても構わないんだけど。


「数学だっけ」


「そ」


 世界を数字で表わすに最も適った技術……というと言い過ぎかも知れないけど……アポロ計画でも数学者がロケットに同乗したくらいですし。


「楽しい?」


「楽しいよ。パズルみたいで」


 それも事実だろう。


 既述の如く、別に必要は無いんだけど。


「ふむふむ」


 僕は問題を解いていく。


「ウーニャー。わかんない」


「じゃあ参考書でも探せば? ソレ系の本も揃ってるよ?」


「数学?」


「算数から始めるべきかな?」


「さんすう……」


「四則演算ね」


 此処を分からないと先に行けない。


 小数点もまだ早いだろう。


 女性に関しては一の下は零。


 コンマ幾つなんて物は存在しないんですからな。


 名言だ。


 ちょっとコンプレックス。


「パパも勉強したの?」


「それはまぁ」


 日本の義務教育だ。


 ある意味で、国民の教養は国力に直結する。


 全世界に広がる……まではまだ行かないにしても。


「学校かぁ」


 ウーニャーには通えないけどね。


 戸籍が無い。


 屋敷にいないとどうにも出来ないレベル。


 ま、図書館に連れて行かれる程度は、妥協の範疇だろう。


「ウーニャー……」


「次のオススメの本を探そうか?」


 シャーペンを止めて、そんな提案。


「たとえば?」


「ライトノベルとか?」


「らいとのべる……?」


「このたびドラゴンに転生しました……とか面白いんじゃない?」


「ドラゴン。転生……」


「ウーニャーがドラゴンだし」


「だね」


 しかも全属性持ちの真竜王陛下だ。


「そげなわけで」


 ライトノベルを差し出す。


「これでも読んでいて?」


「ドラゴンってこっちじゃ珍しいの?」


「そもそもいない」


 少なくとも僕の認識範囲内では。


「ウーニャー……」


「やっぱり寂しい?」


「ウーニャー」


 フルフルと首を横に振られる。


「パパが居れば心丈夫」


 さいでっか。


「じゃあ寂しくないね」


「ウーニャー。だね」


 ちょっと萌え。


 元々の精神年齢が幼いのもあるだろう。


 けれど確かにウーニャーは愛らしかった。


「ま、ドラゴンの居る居ないは別にしても……ファンタジー小説は魔法も出てくるし、ウーニャーが楽しむに不足は無いと思うよ?」


「ウーニャー。じゃあ読んでみる」


「ソレも良かれ」


 コクコクと僕は頷く。


「ドラゴン……か……」


「ドラゴン……ね……」


 ここは人の世界で。


 霊長類は人で。


 ドラゴンは哲学を嗜む。


 その意味で、


「ウーニャーか」


 彼女の思考の渦を読むのには骨が折れた。


 あれ?


 計算式間違ってる……。


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