070 微睡んで
「くあ……」
欠伸を一つ。
僕はテレビゲームをしていた。
朝の時分。
「こちらがこうで、時間にするなら――」
珍しくツナデが朝から家に居た。
キッチンとダイニングは慌ただしい。
ヒロインたちが右往左往。
僕はウーニャーを頭に乗っけて、イナフとゲームで協力プレイして、モビルスーツでモビルスーツを撃破する。
さて、
「微睡み~」
眠い。
僕だけらしい。
キッチンからは良い匂い。
「ウーニャー」
尻尾ペシペシ。
「……………………」
僕は薬効煙を吸っていた。
ハーブの香りが漂う。
ポチポチ。
コントローラーを操作する。
「お兄ちゃん上手いね?」
「一日の長」
他に無い。
大型モビルアーマーを撃墜する。
「火を止めてください」
ツナデの檄が飛ぶ。
何をしているかと言えば昼食の準備。
春らしい。
ちょっと遅い気もするけど。
けれどイベントはテンション上げないとね。
「くあ」
「眠そう」
「眠い」
それも事実。
「ま、朝食は取ったし」
コーヒーも飲んでるし。
「その内、目を覚ますでしょ」
「お兄ちゃんはソレでよくゲームできるね……」
「神経使わないし」
それも事実だ。
「アクションゲーは苦手でも無いしね。フレーム単位の判断は出来ないけど、まぁそれなりに昔取った杵柄でもあるし」
ゲームは現実を忘れられるので、良いツール。
ある種の接待とも言える。
「ウーニャー……」
ウーニャーも眠そうだ。
けれど尻尾ペシペシは止めない。
そんな感じでゲームは進む。
それからツナデは外出した。
仕事ではない。
買い出しだ。
春爛漫。
「……………………」
コントローラー、ポチポチ。
「うーん。ジャスタウェイ」
「うわお。難易度最高をクリアしちゃったよ」
イナフには驚くことらしい。
別に良いけどね。
暇潰しだし。
「もうちょっとイナフには修行が必要かな?」
「お兄ちゃんのレベル?」
「上には上が居るんだけどね」
「そなの?」
「さいですさいです」
一応付け焼き刃だ。
僕の技術は。
「うう。難しい」
「先に言っておくけど……ゲームが上手くなっても利益は無いよ? いや利益なんて要らないんだけど、もうちょっと生産的なこともできるし」
「ゲーム駄目?」
「いえいえ。楽しむことは良い事です」
ただソレが非生産的なだけで。
「ウーニャー……ウーニャーも?」
「まぁそうだね」
「でも楽しいよ」
「楽しくないと売れないし」
それも事実。
「ゲーム企画も大変だね」
「グダグダとか」
「たしかにゲームだけども」
なんだかなぁ。
「南無八幡大菩薩」
パンと合掌。
そして欠伸。
春に微睡んで。
春眠暁を覚えず。
春は眠りの季節だ。
「で、結局だけど」
僕はキッチン組に尋ねた。
「料理は出来てるの?」
「はい」
フォトンがはにかんで頷いた。
「そ」
ソレなら良いんだけど。
「期待してるよ。プレッシャーになるかもしれないけど……まぁそこは気合いや根性、勇気と知恵で乗り越えて」
「美味しいって言って貰えるように頑張ります」
「期待大」
紛う事なき本音だ。
基礎として、そこに意思の那辺がある。




