068 ボンゴレ
ジャンヌとのデートも終えて、屋敷に帰る。
今日は僕がキッチンに立った。
何やらツナデは最近忙しそうで。
誰のせいって僕らのせいだろうけども。
てなわけで、
「今日はボンゴレを作ってみました。もちろん味に過剰な期待をするとマイナス方面でスパイスが掛かるので注意されたし」
パスタは良い。
大勢分を一度に作れる。
貝類は少々高かったけど。
「マサムネ様の料理!」
フォトンは目をキラキラさせていた。
「そう言えばあんまり機会も無かったね」
別に出来ないわけではない。
もちろん、ツナデにはいまいつつ及ばないし。
「では」
いただきます。
「美味しいです」
「ふわ……」
「美味しい!」
「良く出来てるわね」
「尊敬です」
然程でも。
殆ど詐欺の理論だ。
使ったソースは出来合いだし、しかもぶっちゃけワンコインで買えるレベルで、麺の茹で時間もレシピ通り。
誰にでも再現出来る。
「そこを上手く出来ないから……私は悩んでいるんですけど。やっぱりキッチンの適応度に一日の長が存在しますね」
フォトンは悔しそうだ。
とは言っても箸は止まっていないけど。
「美味しかったんなら良かったよ」
「とても美味しいです」
「そ」
パスタをコクコク。
ボンゴレをあぐり。
日本人だからってワケじゃ無いけど何故かパスタも箸で食べる。
「お姉さんにも教えて貰える? ちょっとこれは負けられないわ。マサムネちゃんより料理が下手なんてお姉さん的にも敗北の砂を噛みしめるようなものよ」
貝の砂抜きは出来てるはずだけど……。
「無理に貢献しなくても良いんだけど」
「ダメ」
「……です……」
リリアまで。
「パスタが……美味しい……」
「ありがとね」
穏やかに笑う。
「あう……」
赤面。
これよ。
これがリリアの愛らしさ。
「まぁ教えるも何も……って感じだけど……基本的に出来合いの物を使ってるだけだからね? ソースは売ってるし、パスタも売ってる。向こうの世界と違って、材料からって考えが既に破綻してるのよ~」
つまりそういうことだ。
「それでも美味しい!」
「どうも。イナフ」
「ウーニャー。ボンゴレ」
美味しいですぞ。
ドラゴンには必要ないだろうけど。
「最近はツナデも忙しそうですし」
「あー、そうだね」
そもそもがカウンターインテリジェンスだ。
国防的にも意味を為す。
今のところ、選挙に於ける異国干渉が目下最大らしいけど。
弱みを握られると選挙では甚だ無理となる。
国民の感情は水物だ。
今日の風は、明日の台風。
オーラで警戒はしているらしい。
時折盗聴器も見つかるとか。
魔窟だ。
政界は。
「まぁツナデなら後れは取らないだろうし。場合によっては遁術もあるしね。その意味での心配はしたくても出来ないレベル」
「魔術が無い今、遁術が更に有益性を増したのでは?」
「それはあるね」
ボンゴレ、アグリ。
実際問題、遁術は日本に於ける忍の技術だ。
漏洩は禁忌。
完全に特秘事項。
もちろんソレは誰に対しても。
特に外国には完全に遮断している。
次いで政治家。
完全に日本限定の技術。
これは単純に生き残りを賭けた戦略だ。
あるいは政略か。
――他者に漏れると忍の仕事が無くなる。
加当も、他の一族も、そこは不足無く理解している。
「ダメじゃん」
とはウーニャー。
「まぁね。それね」
仕方ないじゃん。
こっちに戻ってくるとは思わなかったし。
ボンゴレもぐもぐ。
「ウーニャーなら大陸制覇も出来るよ?」
「知ってるけどさぁ」
さすがにドラゴンはスペックが違う。
おそらく脳機能が人外の領域だ。
五千年以上生きる寿命。
であれば、それだけお機能が脳に備わって間違いない。
「無念」
「何が~?」
「なんでもございません」
彼女の寿命を基準に考えた場合、僕は早めに死ぬんだけど……ウーニャー的にその辺はどうなのか、と。




