067 ジャンヌと喫茶店
「結局何なんなのでしょうね?」
オリジナルブレンドを飲みながら、僕とジャンヌ。
警察から解放された後、帰宅途中で喫茶店を見つけ、これも異世界研修ということで、立ち寄ってみた。
僕はコーヒーのみ。
ジャンヌはコーヒーとケーキ。
最初にとろふわのクリームを食べて、とろふわの顔になり、苺とスポンジケーキの感触に感動を覚え、コーヒーが進んだようで。
で、閑話休題。
「何が?」
とは僕。
「フォトン様は無限復元を失いました」
ソレね。
「けど……」
教鞭の様に、ジャンヌは人差し指を伸ばす。
その指先に火が点いた。
ヒュンと指が円を描くと消える。
「私のパイロキネシスもそうですけど……ウーニャー様のドラゴン魔術……フィリア様のトライデント……どれも魔術には相違ないはずですよね? 何故フォトン様の無限復元のみが対象外なのでしょう?」
「対象外は多分ジャンヌたちの方だと思うけど」
ここでは僕も魔術を使えない。
フォトンもそうだし、ツナデも同様。
想像創造。
世界宣言。
どちらも手段として確立しているのに、発生する事は無かった。
まぁ逆に出来たらソッチが驚くけど。
コーヒーをスルリ。
「美味しいですね」
「こっちの世界の自慢かな?」
グローバルワールドですし。
「恵まれていますね」
「そうでもないけどね」
「つまり私たちがイレギュラーと?」
あ。
話戻すのね。
「そうなんじゃない?」
「理屈は分かります?」
「理屈と言うほど大層なものじゃないけど」
「教えて欲しいです」
ケーキをハムリ。
コーヒーをスルリ。
「常駐型か。完成型か。その違いじゃない?」
「?」
ってなるよね。
分かってる。
「要するに、現象として、独立しているか、していないか…………そこが肝要なんじゃないかな? まぁ物理法則ガン無視な辺りで、結構世界観壊してるところもあるけど」
「独立ですか」
「魔術そのものは神への祈り。コレは知ってる?」
「えと、その、まぁ」
そりゃ「知らん」といわれたら凹むけど。
「僕の世界にはヤルダバオトがいない。これはエヴェレット解釈でしょうがないことではあるんだけど、ともあれ神様のいない世界というわけだ」
「そして向こうの世界にはヤルダバオトがいる……」
「そ。で、こっからが仮説なんだけど」
「……………………」
「例えば魔術で炎を生みだすとする」
「……………………」
ボッと炎が点った。
ジャンヌの指先で。
瞬間で消える。
「その通り。じゃあ聞くけど、その炎は神様によって発現した炎だけど、起動後の『炎』という現象まで神様のプロセスだろうか?」
「えと……」
「例えば山の中で炎の魔術を撃って、山火事を起こす。盛大な災害だ。その全てを神様……ヤルダバオトが管理運営していると思える?」
「さすがにそれは。具現した後は物理現象ですし……」
「そこ」
コーヒーを一口。
美味い。
「つまり魔術の起動のみを管理し、後は物理法則に任せる。そして魔術が使えないのは、ヤルダバオトが居ないせいで、その最初の一押しが無いから。いくら魔術でも、基本的に『物理法則』から離れていても……『物理現象』には相違ない。炎や水、音に雷。空間も此処に起因するのかな?」
「では例外である私とウーニャー様とフィリア様は?」
「既にトリガーは引かれている……と捉えるべきだろうね。つまり最初の一押しが既に行なわれていて、結果そのままの状態である。フィリアの場合が最も分かりやすいかな? 水を司るトライデント。それそのものがシステム的に完成しているから、既に物理現象としてこの世に現界している。炎の魔術に依る山火事と一緒だよ。最初から既に神の管理を離れて、魔術ではなく物理現象として構築されている。ウーニャーとジャンヌの場合は、それが産まれたときから既に獲得した異能であるってだけ」
長々と喋って口が渇いた。
コーヒーをスルリ。
「産まれた時点で魔術を物理現象として昇華された存在。そう捉えれば納得も行く」
「ではフォトン様の無限復元は……」
「常駐型。要するに魔術の維持そのものが、神様の干渉の維持によって為されていた。殺されても死なない。というか傷すら付かない。この常時展開型が、神様の仕事だったんだろうね。仮に完成型なら多分こっちに来ても有用だったはずだから。まず以て一応そんな仮説は立てられた」
「それは……何故……?」
「フォトンの師匠……ブラッディレインことラセンがちょっと気にかかってね」
「?」
「気にしなくて良いよ。それよりケーキのお代わりは?」
「晩ご飯に響くので自重します」
「ん。ソレも良いこと」
コーヒーを飲む。
「食べ過ぎると太るしね」
「太るんですか!?」
やはし乙女としては其処が気になるのね。
「太るよ? 運動しないと」
「運動します!」
「ソレが良かれ」
うんうんと頷いてコーヒーを一口。
美味し。




