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忍術師と魔術師の異世界観光日和  作者: 揚羽常時
ある意味異世界観光
446/512

066 チンピラさんの報復


「よう」


 チンピラさんに絡まれた。


 図書館の帰り。


「…………」


 ジャンヌは目が据わっている。


「この前は世話になったな」


「誰?」


 本気で覚えが無い。


「忘れたのか!」


「だから誰」


 名前を言われても、思い出せなかった。


 で、


「何の用?」


 突き詰めると其処に行き着く。


「お前のせいでこっちは人生滅茶苦茶だ!」


「何かしまして? いや申し訳ない。補填の効くことですかね?」


「ぐ……」


 どうやらこちらに非は無いらしい。


「じゃあそゆことで」


 サラリと去ろうとすると、


「…………」


 チャキッと光り物。


 ナイフだ。


「警察に連絡しますよ?」


「どっちにしろ舐められるならそれもいいだろうよ。一生癒えない傷を背負いたいならそうしろ。こっちとしてはどうでもいい」


 過去の僕。


 何をした?


 少し勘案にも値する。


 そう思っていると、


「――――――――っ!?」


 グニャリとナイフが折れ曲がった。


 まるで強い熱で叩かれたように。


「ジャンヌ?」


「はい?」


「ジャンヌの仕業?」


「まぁ」


 炎と熱を操るジャンヌの異能……ファイヤースターター……あるいはパイロキネシスト……要するに炎を自在に操る魔術だ。


 何故か現代社会でも使える神秘の一つ。


 これだけでもジャンヌは特筆できる。


「いっつ……!」


 今度はチンピラさんが痛みを覚えた。


 ジャンヌの干渉だろう。


 足下を焼いたらしい。


 後刻そう聞いた。


 人格崩壊する熱量を浴びさせられるらしいけど、今回の場合……コッチに関しては自重を自分に課した……とのこと。


「熱い。痒い。何をした?」


「僕は何も」


 ハンズアップ。


 ――むしろ何をされているので?


 そう思える。


「舐めてんのか!」


 ナイフを振りかぶる。


「――――――――」


 意識が収斂する。


 意識。


 刹那。


 行動。


 能動。


 タンと音がした。


 僕が地面を踏みしめる音だ。


 一瞬でチンピラさんの懐に潜り込むと、そのナイフの射程を無意味化せしめ、勁を練って一打を放つ。


「が――――!」


 どうやらチンピラさんには苦悶のようだ。


 別に興味もないんだけども。


 さらにジャンヌが炎を繰る。


 あちこちが火傷してかゆみを覚える。


 その気になれば焼死体に出来るのだろう。


 あえてそうしなかった理由が……僕の思考には手に取れるように認識……あるいは把握か……出来るのだった。


「痒い! 痒い! お前! 何をした!」


「何も」


 事実だ。


 僕は何もしていない。


 灼熱の御子。


 ジャンヌだからこそ出来る御業だ。


 さすがにそこには……僕の申すべき事柄と言いますか……あるいは事情説明の義務と言いますか……その点で安易な講釈は必要ないんでしょうけども。


「ジャンヌ。やり過ぎはダメだよ?」


「承って」


 一礼するジャンヌ。


「痒い! 痒い! 痒い!」


 僕はねじ曲ったナイフを手に持っているチンピラさんを速写した。


 そして警察に電話をかける。


 さすがにナイフで脅すのは社会通念として犯罪だ。


 その点で、法律は僕を味方する。


「さて、後は警察に任せましょうか」


 一応事情説明にいる必要はある。


 けれども付き合いがいい加減でも無い。


「つまりナイフで此方の少年が脅したと?」


「報復みたいですね」


 爽やかに笑う。


「それで僕の安全は保証できるのでしょうか?」


「さすがにナイフを出されると」


「ねじ曲ってますけどね」


 ジャンヌの仕業だ。


 其処の説明は、しないことにした。


 当たり前だ。


 魔術と呼ばれる領域。


 むしろ信じられたら、そっちの方がややこしい。


「事情は分かりました」


 分かられたらしい。


「後は警察の領分です。お気を付けて」


 無関係を強調するなら否やはありませんけども。


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