065 図書の意義
「大きい施設ですね」
まず図書館の外観にジャンヌは驚いていた。
たしかに向こうの世界では公共施設でこんな大きな建物は無いだろう。
薬効煙は……禁止か。
タバコじゃ無いけど、ハーブにも敏感なこの頃。
薬効煙は完全に合法だけど、図書館ではさすがに。
「じゃ入ろっか」
「はい」
そして僕とジャンヌは図書館に入った。
「おお。自動ドア」
知識としては知っているようだ。
キョロキョロ。
「本がいっぱいです……」
まぁ図書館だし。
「何から手をつけた物か」
「料理の本もあるよ?」
「レシピですか?」
「あとは食と健康の関係性とか? 一般に美味しいとは別に、食事は生命の営みだからね。相応の知識をエッセイにしている本もあるし、医学的な療法で食事について考察している本もあるよ。ま、好きに探して」
「探すといっても……」
「分からないことは職員さんに聞けばいいから」
「職員さん……」
僕は科学雑誌を手にとって、考察を始める。
今月の雑誌は相対性理論が主役の様だ。
中々に面白い。
「マサムネ様は……その……何を読んでいらっしゃるので?」
「科学雑誌」
「科学。こちらの技術でしたね」
「そ」
「属性が無いというか」
「無いけどね」
四つの力は……また別問題だろう。
「私は……」
「これも社会勉強」
日本語は使えるので、後は慣れの問題だ。
「えと」
怖ず怖ずと職員さんに話しかけるジャンヌ。
ちょっと萌え。
困っている女の子は、愛で甲斐がある……というとドSに思われるかも知れないけど、僕の本心でもあった。
さて。
「マサムネ様」
職員に導かれて、本を取ってくるジャンヌ。
レシピ本だ。
おおかた、新しいメニューに挑戦したい……レパートリーを増やしたい……との気持ちのこもった本の選出だったのだろう。
「作ったら食べてくれますか?」
「ソレは喜んで」
慇懃に一礼。
しばらく読書の時間。
パラリパラリとページを捲る。
「こゆときスマホは便利ですね」
レシピ本で料理を見て、スマホで検索。
何だ。
現代社会に適応しているじゃないか。
図書の意義はあったわけだ。
「えへへ…………大好きな人に料理を作るのは興奮しますね。まるで告白して答えを待っているみたいでドキドキします」
「否やは無いけどさ」
乙女理論は難しい。
「マサムネ様はツナデ様の料理が一番ですか?」
「そう相成りますか」
「むー」
「そこで不機嫌になられても」
クシャクシャ。
「ツナデも言ったでしょ? 同じレシピでも他者の勘所によって料理は千変万化するって。ジャンヌはジャンヌなりの答えを探せばいいんだよ」
「ナデナデされるとポーッとします」
「乙女心ね」
「大好きです」
「知ってる」
どこまでも残酷な僕だった。
「けどこんないっぱい本があるのにコンプリートできるんですか? 多分寿命が先に来そうな感じですけど……」
「しようとしている人間はいないと思うな」
たくさんの本の中から、自分に合った本を選ぶ。
それが図書館だ。
「そんなものなんですね」
「そんなものなんですの」
コックリ頷く。
「じゃあマサムネ様は」
「科学雑誌を読める点で有用かな?」
小説も読むけどね。
「本って素晴らしいですね」
「否定はしない」
むしろ出来ない。
ぶっちゃけ焚書坑儒が証明している。
「本を軽んじる物は政治的に報復を受ける」
これも事実だ。
聖書は…………まぁ別だけど。
「これ持って帰れないんですか?」
「借りれば大丈夫」
あ。
戸籍が無いんだった。
まぁ僕の図書カードで良いだろう。
まさか責任追及をされるような本の扱い方を……ジャンヌがするとは思えない、と……そう思えるから。
ガオー!




