053 ラーメン
「らっしゃい」
との声で出迎えられた。
豚骨の匂いが充満している。
「凄い匂いだね」
「ガチ豚骨だからね」
僕のお気に入りの店。
突き詰めた濃厚豚骨に、背脂とニンニク。
細麺がまたスープに絡む。
お品書きを渡す。
「お兄ちゃんは何にするので?」
「ラーメンとチャーハンのセット。世の中にカロリーの多きこと。健康不全に於ける宵の一番星ですな~」
「らあめん……ちゃあはん……あ、唐揚げもあるんだね」
「とりあえずラーメンを食べるということで」
ここで説明するわけにも行くまい。
百聞は一見にしかず。
論より証拠。
「じゃあそれで」
そんなわけで、二人でラーメンをすする。
「パスタ……とはまた違うんだね」
「僕はこっちが好み」
ズルズル。
うん。
こら豚骨ばい。
というのは置いておき。
「そっちがチャーハン?」
「ですな」
「お米」
「を焼いた奴」
「良い匂い」
「食べてみる?」
「良いんですか?」
「別に誰も損しないし」
「では一口」
レンゲで掬う。
ハムリ。
「ふおお」
感激の御様子で。
「油が使われてるのに……旨味が凝縮されてる。このパラパラ感は何だろう? 味付けも濃いめなのに食欲をそそるというか……」
ナイス解説。
実際美味しい。
ラーメンをズビビ。
「美味しいですね」
「気に入ってくれてよかったよ」
「他の女の子も連れてきたんですか?」
「ツナデを除けばイナフが一番手かな?」
「光栄です」
「こちらこそ」
「にしても豚骨ですか……ニンニクは向こうの世界にもありましたけど……ここまで合致するのも珍しいですね。油だらけだから胃が辟易しそうなモノなのに、本能と食欲に訴えかけるよこれ……」
「実際お気に入りの店だし」
ズビビ。
「こんな食事があるんですね」
「他にもいっぱいあるよ」
懐石料理とか中華料理とか。
欧州圏の料理は異世界にもあったけど。
「また連れてきて」
「相承りました」
ズビビ。
そして完食。
脂っこい口の中をお冷やで満たす。
「この爽快感も店の予定調和ですか?」
「どうだろ?」
そうかもしれないけども。
はて?
そんな感じで昼食をとり、
「ご馳走様でした」
と勘定。
二人で千円ちょっと。
中々にリーズナブルだ。
「凄い体験をしました」
「美味しかったなら良かったよ」
「じゃあ帰ってゲームしましょう」
「その前に」
「?」
「コンビニでケアブレスを買おう」
さすがにニンニクが利きすぎる。
いや。
ソレも混みで件のラーメン屋は美味しいんだけど、やっぱりマナー的には留意すべき点ではありましょうぞ。
「むにゃ?」
とイナフ。
「まぁ息を整えるお菓子だよ」
「お菓子なの?」
「タブレット形式のね」
買ってヒョイと口に含む。
ついでにイナフの口にも。
「ふわ」
こっちもまだついて行けならしい。
「何味?」
「ミント」
「みんと……」
噛み噛み。
「なんだかお口リフレッシュ?」
「そんな感じで間違ってないよ」
「歯磨きとは違うの?」
「一応ね」
歯磨きの習慣は付けている。
特にイナフ。
コーラとポテチの消費は此奴がトップなので。
「ふぅん?」
タブレット噛み噛み。
それにしてもラーメンの美味しゅうございましょうぞ。




