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魔の国20

 それからアンバーに興味を失くした僕とフォトンは国際魔術学院の開かれた研究室を訪ねて回った。


 国際魔術学院は魔の国の領域にあるとはいえ、非常に政治的な空白地帯ということらしく知識と技術の透明性が厳格に定められているらしい。


 フォトンの受け売りだけどね。


 そんなこんなで色んな優秀な魔術を見て回った。


 炎の蛇を操ってみせる魔術師。


 氷の刃を作ってみせる魔術師。


 箒に乗って空を飛んでみせる魔術師。


 雷雲を創りだしてみせる魔術師。


 さまざまな魔術師がいた。


 そのどれもが僕を魅了してやまなかった。


 基本的に忍術は現実的だ。


 無論オーラを使うだけファンタジーな側面はあるけど、それでも自身の感覚を広げるというただそれだけのモノにすぎない。


 対して魔術は幻想的だ。


 脈絡がないと言ってもいい。


 ついでに屈託もない。


 要するにハチャメチャなのだ。


 おしよせてくるのだ。


 人の想像を現実と化す。


 戦いに関しては特性上忍術に分があるけど、魔術にはロマンがある。


 一番僕を魅了したのは箒に乗って空を飛ぶ魔術だろう。


 今まで僕はクナイを作り出す金魔術と、雷撃を与える木魔術と、風の刃をくりだす金魔術と、空間を転移する闇魔術しか使っていない。


 前者の三つは忍術からのイメージの応用で、最後の一つは自分の体験をもとに行われているのである。


 つまり想像できなければ魔術は使えないわけで……空を飛ぶというのはあまりに突飛すぎていくら精神集中しても出来なかった。


 人が飛べないということを固定観念として持ってしまっているのだ。


 飛べたらよかったんだけどねぇ。


 そんなこんなで大変勉強および観光になった国際魔術学院だった。


 そういえば、と僕は隣を歩く深緑の髪の美少女に問いかける。


「フォトンは七属性制覇……セブンゾールなんだよね?」


「そうですけど……」


「実際にはどんな魔術が使えるの?」


「ディバインストライクとファイヤーボールとアースソードとサイクロンとタイダルウェーブと無限復元と召喚術です」


「ファイヤーボールしかわからない……」


「ディバインストライクは木魔術で三百六十度に直径二十キロメートルの広範囲で強力な雷撃を発生させる魔術です。雷撃故に物質の破壊には向かない最も健全な魔術なんですが、その代わり生物にはあまりに効果的です。効果的すぎます。この魔術を喰らって生きていられる生物はいないでしょう」


「…………」


「アースソードは土魔術で私を中心に直径二十キロメートルの範囲の地面から岩の剣を無数に突き上げる魔術です。一番はた迷惑な魔術はこれですね。敵も味方もモズの早贄に変えてしまう魔術ですから」


「…………」


「サイクロンは金魔術で名の通り嵐を作り颶風を巻き起こすことで何もかもを吹っ飛ばす魔術です。一番効果範囲の狭い魔術ですけど……代わりにこの魔術は私のコントロールを離れて好き勝手に動く魔術ですので厄介と言えば厄介な魔術です」


「…………」


「タイダルウェーブは水魔術で津波を起こす魔術です。ただし直径二十キロメートル範囲の全てを水で押し流す魔術で当然使えば私以外の全員を溺死させうる魔術です。私自身も津波に巻き込まれますから結果を気にしないときにしか使えない魔術です」


「…………」


「無限復元は光魔術で正確には私の魔術ではないのですけど……それでも私に触れたモノは私と同じように範囲指定で欠損を復元されることから私の魔術と相成っています。時間逆行の、その実力ですね」


「…………」


「召喚術は闇魔術で、つまるところ空間に干渉する魔術ですね。マサムネ様を異世界から召喚したのがこの魔術です。ブラッディレインが私に植え付けた記録に異世界のことがあったので、その事実をもとにマサムネ様を召喚しました。もっとも異世界召喚はエホバリミッターがかかりますから専用のウィッチステッキを創り上げるのに一カ月かかりましたけど……」


「…………」


「こんなところでいいでしょうか?」


 あー。


 どこから突っ込めばいいのやら。


「聞いていい?」


「何でしょう?」


「なんでそんな規模の大きい魔術ばかり覚えたの?」


「言ってしまえば好き好んではありません。ただ……」


「ただ?」


「生まれつきそういう風にしか魔術を使えない出生だったというべきですね」


「いや、でも……手加減とか覚えないの?」


「覚えようとしましたが不可能でした」


「でもイメージが魔術を形作るんだよね? 手加減をイメージに組み込めばいいだけじゃない?」


「実を言うと手加減のイメージを加えてこのザマなんです。どういう理屈が働いているのかはわかりませんが謙虚な効果をイメージしても全力の魔術として顕現してしまうんですよ……」


「不器用にもほどがあるよ」


「申し訳ありません」


「いや、責めてるわけじゃないけどね」


 一応フォローする僕。


「それじゃ手加減できるようになるまで継続的に魔術を使うことは……」


 とそこまで言って僕は無意味さを悟った。


 なんにせよフォトンの魔術は強力すぎるのだ。


 魔術の練習と言って何度も魔術を使えば災害と変わりない。


 つまり気楽に使えないのだ。


「ま、フォトンにしがみついていれば僕に危険はないからいいかぁ」


「はい。私が必要となればそう言ってください。何にもましてマサムネ様のために魔術を行使しますから」


 そう言って深緑の瞳に喜色をのせるフォトン。


 国際魔術学院の見学を終えた僕とフォトンはクランゼの研究室に帰るのだった。


 そこでリリアが待っている……はずだから。

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