046 クレープ
「ところで……この辺りは全て都市なのですか……?」
公園に向かった。
「そうだね。山は近いけど……山岳以外は殆ど市街かな?」
「山賊さんには……住みにくいでしょうね……」
「そもそもいないんだけど」
「盗賊団とかも……?」
「いないね」
治安の良さは突出している。
「すごい……ところですね……」
「まぁね」
例えば銃社会では、『高級バイクに乗っていると銃を突き付けられてバイクを下ろされ、そのまま犯人が当バイクに乗って逃げる』なんて逸話も存在するので、ある種、野盗と言えるかもしれない。
日本では土台無理な話だ。
「じゃあクレープでも食べよ」
そのために広めの公園に来たのだから。
「くれえぷ……?」
「主に女子高生が好むとされる伝説のおやつ」
「女子高生は……知っています……」
ネットで見たらしい。
「クレープ……」
スマホで検索。
「美味しそうですね……」
「そこで買えるから」
とワゴン車を指差す。
そんなわけで買い物練習。
お金をリリアに預けた。
「あう……その……あの……」
なんて具合。
ちょっと萌え。
「チョコバナナと……ミックスベリーを……一つずつ……」
「あいよ」
と店員さん。
合計で八百六十円。
「千円札で……宜しいでしょうか……?」
お釣りは百四十円。
さすがに引き算はリリアも出来る。
そしてクレープを受け取って、僕の元へ帰還。
「偉かったね」
利休鼠をナデナデ。
「えへへ……」
はにかむリリア。
なんだ。
この萌えキャラ……。
懐いている……の意味でなら、イナフやウーニャーも該当するんだけど、リリアの謙遜と謙虚の混じった小動物性は特筆すべき事柄だ。
ぶっちゃけ可愛い。
「チョコバナナ……で良かったんですよね……」
「ありがとう」
ナデナデ。
そして二人でパクつく。
「ふわわ……」
驚きにリリアは目を丸くした。
「甘くて……フワッとして……濃厚で……」
「美味しいでしょ?」
「はい……とっても……」
それは重畳。
「……………………」
夢中でパクつくリリアの愛らしさよ。
それから二人で公園を歩いた。
クレープ片手に散策だ。
「こんな平和な世界は……良いですね……」
「気に入ってくれて良かったよ」
「緊張感も……持たなくて済む……って意味では……」
「平和でしょ?」
「はい……」
其処は我が国の自慢だった。
いくら虚飾に塗れようとも。
「でも……この国で……マサムネの能力は必要ですか?」
たしかに異世界では暴れたけども。
「諜報活動にはちょっと能力が必要でね」
暗殺にも色々ある。
こと身体能力は極限まで突き詰める必要があった。
「おかげで異世界で快適に過ごせたわけだから、何が幸いするのか……人生万事塞翁が馬とでもいうのか……」
ちょっとした懸念。
むしろ能力有りきで呼ばれたのだろうけど。
そもそも僕とツナデが異世界に呼ばれたのは、フォトンの、
「自分にとって都合の良い能力の持ち主を選定」
した結果だ。
何も負い目に持って貰う必要も無いし、結果的に味方が増えたのでオーライだろう。
「マサムネ……優しい……」
「紳士だし」
自分に嘘を吐くのは慣れた物だ。
「そうかもね……」
えー。
肯定しちゃうの?
「だって……普通の男の子なら……性欲に……負けてる……」
「ヘタレだから」
「リリアは……良いよ……?」
「気持ちはありがたいけどさ」
「今日は……一緒に……お風呂に……入ろうね……?」
「大丈夫?」
「自己PR……」
「恋する乙女も大変だ」
そこはまぁ、懸念せざるを得なかった。
「はむ……」
クレープを食べる。
「こっちのも食べてみる?」
「いいの……ですか……」
「別に誰も損しないし」
「では……マサムネも……ミックスベリーを」
では頂きましょ。




